もっと自分の気持ちを伝えてもいい――映画「好きでも嫌いなあまのじゃく」柴山智隆監督が込めたメッセージ
2024年5月24日 14:00
「ペンギン・ハイウェイ」「泣きたい私は猫をかぶる」のスタジオコロリドが手がけるオリジナル長編アニメ最新作・映画「好きでも嫌いなあまのじゃく」が、5月24日から劇場公開と同時にNetflixで配信される。「隠した思い」「本当の気持ち」をテーマに、人間の少年と鬼の少女の交流を描いた青春ファンタジー。柴山智隆監督に、完成までの道のりを聞いた。
山形県に暮らす高校1年生の八ツ瀬柊(CV:小野賢章)は、みんなに嫌われたくないという思いのあまり、気づけば頼まれごとを断れない性格になっていた。しかし、自ら進んで他人のために何かをやってもうまくいかず、親友と呼べる友だちもいない。そんな柊が、いつものように頼まれごとを引き受けて、なんだかうまくいかなかったある夏の日。柊は、人間の世界に母親を探しに来たという鬼の少女ツムギ(CV:富田美憂)と出会う。
ツムギは自分勝手な性格で、柊とは何もかもが正反対だったが……。柊はツムギの「お母さん探しを手伝って欲しい」という頼みを断り切れず、一緒に旅に出ることに。時を同じくして、ツムギの故郷・鬼が暮らす隠の郷(なばりのさと)でも事件が起きていた。
柴山監督は、スタジオジブリに仕上げとして入社し、「千と千尋の神隠し」などに参加したのち作画に転向。確かな技術と豊かな表現力を武器に、コロリドを牽引するメインクリエイターの一人として活躍。2020年公開の「泣きたい私は猫をかぶる」で監督デビューを果たした(佐藤順一と共同監督)。なお、実弟は「パーフェクトワールド 君といる奇跡」を手掛けた柴山健次監督。
Netflixさんと「泣きたい私は猫をかぶる」でお仕事をさせていただいた後、同じように10代をターゲットにした作品を作ってほしいというお話をいただきました。企画書を4案書いて、そのうちの1案が今回の話です。企画書の時点では、鬼の少女がいて、柊の方が鬼のお面をかぶって若返っていくっていう設定にしていたのですが、早々になくなってしまって……(笑)。
そういう流れもあり、お面を使ってほしいというオーダーもいただいたので、だったら“鬼のお面”にしようという発想でした。ちょうど、鬼を題材にした有名作品が話題になっていた頃だったと思いますが、今までの鬼とは違った解釈で描きたいと考えていました。
ティーンに向けて伝えたいことをスタッフみんなで話し合いました。10代の子たちはどんなことで悩んでいるんだろうって話したときに、ネットを日常で見ている子たちが、学校や家庭では周りの人たちの顔色を見ていて、いろいろなことを先読みして、自分の気持ちを伝えないことが当たり前になってる――そのことに気付いていない子たちが多いんじゃないかって話し合いました。自分が10代だった当時もいろいろうまくいかなかったので、それを思い出しながら重ねるところもありました。
鬼という言葉の語源は“隠”で、目に見えないものを隠(おぬ)と呼んで恐れていた時代があり、それが転じて鬼になったという説があるそうです。気持ちを隠している主人公と、今の子たちの気持ちを“隠す”という部分とつながって、ストーリーが出来上がっていきました。
自分の気持ちを隠してしまうような人たちの背中を押したいというか、“もっと自分の気持ちを伝えてもいいんじゃないのかな”っていうことは、作品に込めたいと話していました。
シナリオがまだ完成していないときから、こんな存在が欲しいと思ってユキノカミのデザインを進めていました。シナリオには、気持ちを隠すと出てくる小鬼と、柊とツムギを追いかける何かって書いておきましょうって作っていったのですが、当時はこんなに映画に出てくるとは思っていなかったです。
ユキノカミの登場シーンは、いかにもな悪役に追いかけられるとか、そういうシーンではないだろうとは思っていました。デザインとしては笑顔の目にしたり、作り笑いのイメージにしています。何を考えているかわらかない怖さをイメージして進めていました。動きはタコ、ヘビ、食べるときはクジラなどを参考に、鳴き声は海洋生物で作っていて、リアルに受け入れてもらえそうなアプローチで作っています。
初めて一人で監督を経験したのですが、スタッフの皆さんの意見を聞きながらみんなで作ったり、才能に触れるのはすごく楽しいです。僕の中から出てくるものだけで作ると面白くないと思うので、いろんな人の刺激に触れることができるのは、監督をやっていて良かったと思う瞬間です。
今回もそう思う瞬間はいっぱいありました。スケジュールの都合でシナリオが決まっていない段階で絵コンテを描き始めたのですが、中国出身のソフィーさんという方の才能がすごかったです。鬼の世界はこんな風になると思うんですよって話しながら描いてもらって。オリジナル作品かつファンタジーだとなかなかイメージの情報共有が難しいのですが、ソフィーさんはそれを常に具現化するのを手伝ってくれました。
今回の挑戦の一つに、作品のテーマを浮き彫りにするための舞台としてファンタジー世界を描きたいというのがありました。自分の気持ちを隠す人間にツノが生えて、鬼になっていったコミュニティの表現だったり、そういうのをビジュアルでもわかってもらえるように早い段階から探っていたのですが、この作業は本当に楽しかったです。
初めから監督になりたかったタイプではないので、実はそんなに映画を観てこなかったんです。絵を描くのが好きで、大学でアニメの授業を受けてみたら面白いなと思って。当時はジブリしか知らなかったので、ジブリに入りました。ジブリ作品でいうと、中学の時は毎日「風の谷のナウシカ」を観ていました。毎日帰ったら1回「ナウシカ」を観るみたいな。
受験のストレスがあったのかもしれないです(笑)。さすがにちゃんと勉強しないとって気付いて、いつの間にか毎日観るのはやめました。なんで「風の谷のナウシカ」だったのかはわかっていないです。「耳をすませば」も受験シーズンにはまって見て、「魔女の宅急便」もその他の最近の作品も、宮崎(駿)さんがどんな作品を作るのか興味があるので、ずっとジブリの作品は好きで、自分の根っこにあります。
そのほかのアニメだと、渡辺歩監督の「海獣の子供」とか「漁港の肉子ちゃん」が好きです。わかりやすく説明するよりは、観た人に何かを感じて持って帰ってもらおうという作り方をしている作品が好きなので、邦画だと内田けんじ監督(「アフタースクール」「鍵泥棒のメソッド」)も作り方が好きでよく観ています。
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ギリシャ・クレタ島のリゾート地を舞台に、10代の少女たちの友情や恋愛やセックスが絡み合う夏休みをいきいきと描いた青春ドラマ。 タラ、スカイ、エムの親友3人組は卒業旅行の締めくくりとして、パーティが盛んなクレタ島のリゾート地マリアへやって来る。3人の中で自分だけがバージンのタラはこの地で初体験を果たすべく焦りを募らせるが、スカイとエムはお節介な混乱を招いてばかり。バーやナイトクラブが立ち並ぶ雑踏を、酒に酔ってひとりさまようタラ。やがて彼女はホテルの隣室の青年たちと出会い、思い出に残る夏の日々への期待を抱くが……。 主人公タラ役に、ドラマ「ヴァンパイア・アカデミー」のミア・マッケンナ=ブルース。「SCRAPPER スクラッパー」などの作品で撮影監督として活躍してきたモリー・マニング・ウォーカーが長編初監督・脚本を手がけ、2023年・第76回カンヌ国際映画祭「ある視点」部門グランプリをはじめ世界各地の映画祭で高く評価された。
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