2023年公開の映画から、個人的な「今年の10本」をご紹介【映画.com編集長コラム】
2023年12月30日 20:00
2023年も残りわずか。1年をふり返ってみれば、今年は久しぶりに海外の映画祭にもいくつか参加できました。コロナ禍も一段落し、いよいよ映画業界も完全復活かと思いきや、ハリウッドのストライキという新たな障害に直面したのも事実です。そんな紆余曲折の1年、ギリギリのタイミングではありますが、あくまで個人的な、今年見て心に残った10本をご紹介したいと思います。
●「グランツーリスモ」
当初、完全なノーマーク作品で鑑賞予定はなかったのですが、監督が「第9地区」のニール・ブロムカンプだと聞いて急遽試写に参戦。ブロムカンプ監督お得意のSF案件ではまったくなく、事実をもとにしたカーアクションなのですが、「どうやって撮ったんだ? まさかCGか?」というシークエンスの連続に衝撃を受けました。YouTubeでメイキング映像を探しまくった結果、かなりイノベーティブな撮影方法を駆使していたことが分かって大興奮。ゲームおたくが、リアルな世界で成功をつかむというストーリーラインも胸熱でしたよね。
●「翔んで埼玉 琵琶湖より愛をこめて」
そもそも、1作目の構成が秀逸でした。この「琵琶湖より愛をこめて」でも、その構成がテンプレとなって大活躍。実際に物語を進行させるドラマ班と、軽自動車でFMを聞きながら共感しまくる家族班に加え、綱引きなどを行うイベント班も追加されて、映画が立体的に立ち上がっていきます。極め付けは、ロケット発射のシークエンス。しかも2発打ち上がりました。爆笑するのを忘れ、ただただ感動です。続編、あと2〜3本作って欲しいです。
●「ゴジラ−1.0」
山崎貴監督と白組が作る「ゴジラ」。これは見ないわけには行かないと映画館に出かけてみたら、もう圧倒的でした。特に、海上におけるシークエンスの数々は眩暈がするほどのクオリティ。そして映画の終盤には、「ゴジラ」と「ALWAYS 三丁目の夕日」と「永遠の0」を3本同時に見ているような気分になりました。全米でも大ヒットしましたね。嬉しい限りです。オスカーにも絡めたら最高ですね。
●「バービー」
これはグレタ・ガーウィグ監督と脚本家チームの大勝利です。単なる子ども用の玩具から、あれだけのストーリーをでっち上げるなんて素敵すぎます。世界中の働く女子たちが大喜びするストーリーを。あと、色彩感覚が派手だったのも印象的ですね。バービーランドの入り口はベニスビーチだし、西海岸の若者たちには一種のドラッグムービーとしても受け入れられたんじゃないかと勘ぐっています。
●「バビロン」
2022年末に完成披露試写で鑑賞したときに、「次のオスカーはこれで決まりじゃん!」って確信したのですが、オスカーレースでは早々に圏外に放り出され、興行でもまったく振るいませんでした。しかし、個人的には監督賞はデイミアン・チャゼルだし、主演女優賞はマーゴット・ロビーだし、助演男優賞はトビー・マグワイアだし、美術賞はフローレンシア・マーティンです。賞レースに残るためには、何が足りなかったんでしょうね。
●「ドミノ」
ロバート・ロドリゲス監督は、ローバジェットの映画でも、知恵と工夫を駆使して観客を楽しませる、言わば「永遠のインディーズ監督の鑑」です。そのロドリゲス監督が、元気に活躍していることを確認できたのが、この「ドミノ」。見終わって嬉しくなりました。別の原稿でも書きましたが、「ちゃぶ台を2回ひっくり返すような大技」を堪能できます。そして、ベン・アフレックの「死んだ目」演技(笑)がまたハマっていましたよね。
●「AIR エア」
ベン・アフレック出演作、もう1本ありました。「AIR エア」です。盟友マット・デイモンと組んだ案件で、ベン・アフレックは監督も務めています。こちらも、「ドミノ」同様なかなかのローバジェット映画だと思われますが、ナイキの大ヒットシューズ「エアジョーダンの誕生秘話」ってだけで、もう勝利が約束されているような案件でした。マイケル・ジョーダン役の出演シーンはなかなか微妙でしたけど。
●「プレジデント」
次はドキュメンタリーです。アフリカのジンバブエにおける大統領選挙を扱った「プレジデント」はかなり胸熱ながら、複雑な後味を残す1本でした。腐敗した現政権を打倒すべく立ち上がり、奮闘を繰り広げる野党の若手候補者に密着した案件です。昨年「チーム・ジンバブエのソムリエたち」というドキュメンタリーを紹介しましたが、それと併せて見ると、ジンバブエの国情が否応なしに迫ってくる。この映画で描かれた大統領選の、次の選挙は今年(2023年)でした。その結果もまた複雑な後味を残しています。
●「ブリング・ミンヨー・バック」
日本のドキュメンタリーも1本。この映画で描かれる「民謡クルセイダーズ」の存在は初めて知りましたが、相当ハイコンセプトなバンドであるなあと。日本の民謡をベースに、ラテンやアフロのリズムをかけ合わせて「世界で通用するミンヨー・エンターテインメント」を構築しています。映画は、この民謡クルセイダーズのワールドツアーに密着していますが、そのクライマックス、ソーラン節でヨーロッパのオーディエンスが縦ノリしている映像に大興奮。「こんな世界があったのか!」ってグッと来ました。このバンド、私もヨーロッパで生鑑賞してみたい。
●「ミッション:インポッシブル デッドレコニング PART ONE」(AI案件)
2022年の「トップガン マーヴェリック」ほどの大ヒットとはなりませんでしたが、トム・クルーズは今年も元気な姿を見せてくれました。今年はChatGPTの登場もあって、「AIイヤー」とも言うべき年でもありましたが、その「AIが支配する世界」というテーマを映画にいち早く取り入れているところに、トム・クルーズのアーリーアダプター精神を感じます。トム・クルーズ、次は宇宙で撮影ですよね。イーロン・マスクと一緒にいる姿を、スクリーンで見てみたいと切に思います。
以上、あくまで個人的なセレクションです。我ながら、かなり偏った10本だと思います。映画館で見逃した作品は、配信などで見られる物も多いので、是非ご覧になってみてください。
2024年も、たくさんの素晴らしい映画に出合えることを期待しています。まずはヨルゴス・ランティモス監督の「哀れなるものたち」、そしてクリストファー・ノーラン監督「オッペンハイマー」あたりですかね。
フォトギャラリー
関連ニュース
映画.com注目特集をチェック
犯罪が起きない町で、殺人事件が起きた――
【衝撃のAIサスペンス】映画ファンに熱烈にオススメ…睡眠時間を削ってでも、観てほしい
提供:hulu
映画料金が500円になる“裏ワザ”
【知らないと損】「映画は富裕層の娯楽」と思う、あなただけに教えます…期間限定の最強キャンペーン中!
提供:KDDI
グラディエーターII 英雄を呼ぶ声
【史上最高と激賞】人生ベストを更新し得る異次元の一作 “究極・極限・極上”の映画体験
提供:東和ピクチャーズ
予想以上に面白い!スルー厳禁!
【“新傑作”爆誕!】観た人みんな楽しめる…映画ファンへの、ちょっと早いプレゼント的な超良作!
提供:ワーナー・ブラザース映画
関連コンテンツをチェック
シネマ映画.comで今すぐ見る
父親と2人で過ごした夏休みを、20年後、その時の父親と同じ年齢になった娘の視点からつづり、当時は知らなかった父親の新たな一面を見いだしていく姿を描いたヒューマンドラマ。 11歳の夏休み、思春期のソフィは、離れて暮らす31歳の父親カラムとともにトルコのひなびたリゾート地にやってきた。まぶしい太陽の下、カラムが入手したビデオカメラを互いに向け合い、2人は親密な時間を過ごす。20年後、当時のカラムと同じ年齢になったソフィは、その時に撮影した懐かしい映像を振り返り、大好きだった父との記憶をよみがえらてゆく。 テレビドラマ「ノーマル・ピープル」でブレイクしたポール・メスカルが愛情深くも繊細な父親カラムを演じ、第95回アカデミー主演男優賞にノミネート。ソフィ役はオーディションで選ばれた新人フランキー・コリオ。監督・脚本はこれが長編デビューとなる、スコットランド出身の新星シャーロット・ウェルズ。
ギリシャ・クレタ島のリゾート地を舞台に、10代の少女たちの友情や恋愛やセックスが絡み合う夏休みをいきいきと描いた青春ドラマ。 タラ、スカイ、エムの親友3人組は卒業旅行の締めくくりとして、パーティが盛んなクレタ島のリゾート地マリアへやって来る。3人の中で自分だけがバージンのタラはこの地で初体験を果たすべく焦りを募らせるが、スカイとエムはお節介な混乱を招いてばかり。バーやナイトクラブが立ち並ぶ雑踏を、酒に酔ってひとりさまようタラ。やがて彼女はホテルの隣室の青年たちと出会い、思い出に残る夏の日々への期待を抱くが……。 主人公タラ役に、ドラマ「ヴァンパイア・アカデミー」のミア・マッケンナ=ブルース。「SCRAPPER スクラッパー」などの作品で撮影監督として活躍してきたモリー・マニング・ウォーカーが長編初監督・脚本を手がけ、2023年・第76回カンヌ国際映画祭「ある視点」部門グランプリをはじめ世界各地の映画祭で高く評価された。
「苦役列車」「まなみ100%」の脚本や「れいこいるか」などの監督作で知られるいまおかしんじ監督が、突然体が入れ替わってしまった男女を主人公に、セックスもジェンダーも超えた恋の形をユーモラスにつづった奇想天外なラブストーリー。 39歳の小説家・辺見たかしと24歳の美容師・横澤サトミは、街で衝突して一緒に階段から転げ落ちたことをきっかけに、体が入れ替わってしまう。お互いになりきってそれぞれの生活を送り始める2人だったが、たかしの妻・由莉奈には別の男の影があり、レズビアンのサトミは同棲中の真紀から男の恋人ができたことを理由に別れを告げられる。たかしとサトミはお互いの人生を好転させるため、周囲の人々を巻き込みながら奮闘を続けるが……。 小説家たかしを小出恵介、たかしと体が入れ替わってしまう美容師サトミをグラビアアイドルの風吹ケイ、たかしの妻・由莉奈を新藤まなみ、たかしとサトミを見守るゲイのバー店主を田中幸太朗が演じた。
文豪・谷崎潤一郎が同性愛や不倫に溺れる男女の破滅的な情愛を赤裸々につづった長編小説「卍」を、現代に舞台を置き換えて登場人物の性別を逆にするなど大胆なアレンジを加えて映画化。 画家になる夢を諦めきれず、サラリーマンを辞めて美術学校に通う園田。家庭では弁護士の妻・弥生が生計を支えていた。そんな中、園田は学校で見かけた美しい青年・光を目で追うようになり、デッサンのモデルとして自宅に招く。園田と光は自然に体を重ね、その後も逢瀬を繰り返していく。弥生からの誘いを断って光との情事に溺れる園田だったが、光には香織という婚約者がいることが発覚し……。 「クロガラス0」の中﨑絵梨奈が弥生役を体当たりで演じ、「ヘタな二人の恋の話」の鈴木志遠、「モダンかアナーキー」の門間航が共演。監督・脚本は「家政夫のミタゾノ」「孤独のグルメ」などテレビドラマの演出を中心に手がけてきた宝来忠昭。
奔放な美少女に翻弄される男の姿をつづった谷崎潤一郎の長編小説「痴人の愛」を、現代に舞台を置き換えて主人公ふたりの性別を逆転させるなど大胆なアレンジを加えて映画化。 教師のなおみは、捨て猫のように道端に座り込んでいた青年ゆずるを放っておくことができず、広い家に引っ越して一緒に暮らし始める。ゆずるとの間に体の関係はなく、なおみは彼の成長を見守るだけのはずだった。しかし、ゆずるの自由奔放な行動に振り回されるうちに、その蠱惑的な魅力の虜になっていき……。 2022年の映画「鍵」でも谷崎作品のヒロインを務めた桝田幸希が主人公なおみ、「ロストサマー」「ブルーイマジン」の林裕太がゆずるを演じ、「青春ジャック 止められるか、俺たちを2」の碧木愛莉、「きのう生まれたわけじゃない」の守屋文雄が共演。「家政夫のミタゾノ」などテレビドラマの演出を中心に手がけてきた宝来忠昭が監督・脚本を担当。
内容のあまりの過激さに世界各国で上映の際に多くのシーンがカット、ないしは上映そのものが禁止されるなど物議をかもしたセルビア製ゴアスリラー。元ポルノ男優のミロシュは、怪しげな大作ポルノ映画への出演を依頼され、高額なギャラにひかれて話を引き受ける。ある豪邸につれていかれ、そこに現れたビクミルと名乗る謎の男から「大金持ちのクライアントの嗜好を満たす芸術的なポルノ映画が撮りたい」と諭されたミロシュは、具体的な内容の説明も聞かぬうちに契約書にサインしてしまうが……。日本では2012年にノーカット版で劇場公開。2022年には4Kデジタルリマスター化&無修正の「4Kリマスター完全版」で公開。※本作品はHD画質での配信となります。予め、ご了承くださいませ。