金ロー「アナと雪の女王2」放送記念 女性たちが手を取り合って突き進む「シスターフッド映画」5選 【映画.comシネマStyle】
2021年11月19日 20:00
毎週テーマにそったおすすめ映画をご紹介する【映画.comシネマStyle】。
日本テレビ系「金曜ロードショー」では、先週放送された「アナと雪の女王」に続き、本日11月19日に地上波で初めて「アナと雪の女王2」が放送されます。世界中で社会現象を巻き起こし、日本でも歴代3位となる興行収入255億円を記録した前作に続き、本作はさらなる盛り上がりをみせ、全世界興行収入でアニメーション映画史上1位の記録を塗り替えました。
姉妹がともに手を取り合い、未知の世界のなかで数々の試練に立ち向かう姿は、多くの人の心に残っているのではないでしょうか? そこで今週は、姉妹やまるで家族のような関係の女性たちが、手を取り合って突き進む「シスターフッド映画」をご紹介します。
▽ふたりだったらどこまでも行ける。女ふたりの逃亡劇ロードムービー
「テルマ&ルイーズ」(1991年製作/128分/リドリー・スコット監督)
「ブレードランナー」「オデッセイ」のリドリー・スコット監督が、犯罪者となった女ふたりの冒険と友情を描いたロードムービー。アカデミー賞では6部門でノミネートされ、脚本賞を獲得しました。若かりし日のブラッド・ピットが出演しているのも注目ポイントです。
若い頃に結婚をし、やや世間知らずの主婦テルマ(ジーナ・デイビス)と、恋人との関係に悩みつつも淡々と日々をこなすウェイトレスのルイーズ(スーザン・サランドン)。ふたりは週末に、そんな退屈な日々から少し息抜きをしようとドライブ旅行に出かける。しかしその途中で寄ったバーで、テルマが男に襲われる。助けに入ったルイーズであったが、男とトラブルになり思わず拳銃で射殺してしまう。警察から逃れるため、ふたりの逃避行が始まる。
はじめ、テルマとルイーズがなぜ仲がいいのか不思議なくらい、ふたりの性格は違います。ややだらしなく荷物も大量のテルマと、部屋に無駄なものがなく荷物も最低限のルイーズ。友だちというよりはしっかり者の姉と、ちょっとだらしない妹のような関係です。しかし、事件をきっかけに少しずつふたりの関係性が変わっていきます。
段々と大胆に自信を持てるようになるテルマ、繊細で傷つきやすい面が見えてくるルイーズ。ふたりの女性が、犯罪・逃走という非現実な面に遭遇した際に、いままで演じなければいけなかった自分というものから解き放たれ、本来押し込めていた自分に触れることができた、そんなことを感じさせてくれます。
一見自由になったふたりですが、警察に追われどうすればいいかわからない状況で、内心に広がる不安は濃いはずです。しかし、それもふたりだからこそ乗り越えることができる、ふたりでいれば大丈夫というテルマとルイーズの姿は、こちらにも勇気を与えてくれます。
30年近く前の作品ですが、いまを生きる全ての人に見てほしいメッセージが込められている映画です。女性が立ち上がるということ、その大変さや強さを改めて考えさせてくれる作品です。
▽双子の姉妹が両親の恋のキューピッドに! 笑いと冒険、幸せが詰まったファミリー映画
「ファミリー・ゲーム 双子の天使」(1998年製作/127分/ナンシー・マイヤーズ監督)
児童文学「ふたりのロッテ」を題材にした1961年製作の映画「罠にかかったパパとママ」のリメイク作品。幼い頃に両親が離婚し、お互いの存在を知らずに育った双子の姉妹が、両親を再婚させようと奮闘する姿を描いています。本作で映画デビューを果たしたリンジー・ローハンが、一人二役で双子役を演じています。監督は、「ホリデイ」「マイ・インターン」のナンシー・マイヤーズ。
サマーキャンプで偶然出会ったハリー(ローハン)とアニー(ローハン)は、あることがきっかけで自分たちが生き別れになっていた双子の姉妹だと知る。もうひとりの親に会ってみたい、そしてもう一度両親を結び付けたいと願うふたりは、キャンプが終わると入れ替わり、相手の家へと向かうのだった。カリフォルニアで11年ぶりに父親に再会したアニーだが、家には父親の新しい恋人が。予想外の事態に慌てたアニーはハリーに連絡し、父親の財産を狙う恋人を撃退すべく行動を開始する。
リンジー・ローハンといえば、かつてティーンに大人気だったスーパーアイドル。お騒がせ女優として名を馳せた時期もありますが、先ごろ女優業を再開し、再び注目を集めています。本作は、そんな彼女の映画デビュー作。当時12歳だったリンジーが一人二役を務め、チャーミングな笑顔を振りまきます。
双子だけに出会った瞬間に意気投合するのかと思えば、同じ顔でも正反対な性格のふたりはお互いを毛嫌い。嫌がらせの応酬を経てようやく距離を縮めたふたりは、身の上話から自分たちが双子の姉妹だと気づきます。
そこからの結束力がすごい! たった数週間の間に、家庭環境やクセを教え合い、互いを完全コピー。相手に成りすましたふたりは、親や執事(父親も母親も大金持ち!)にバレることなく、幼くして生き別れた方の家族に溶け込みます。
しかし、ふたりで力を合わせて両親の仲を取り持つはずが、父親の新たな恋人という邪魔モノが……。家族をもう一度ひとつにするために奮闘する双子の姿は、ちょっぴり(?)イタズラの度が過ぎるところもありますが、なんとも健気で胸を打ちます。
双子ならではの入れ替わり作戦、“クルエラ”のような悪女とのバトルが楽しく、姉妹愛・家族愛にほっこりする作品ですが、実はロマンスも見どころのひとつ。デニス・クエイドと、リーアム・ニーソンの亡き妻ナターシャ・リチャードソンが演じる元夫婦の不器用な恋模様はもちろん、もうひとつの思わぬロマンスにも注目です!
▽予想外に切ない展開に感情がぐちゃぐちゃ ストリッパーが金融マンを“釣った”衝撃の実話
「ハスラーズ」(2019年製作/110分/PG12/ローリーン・スカファリア監督)
2008年の金融恐慌(いわゆるリーマン・ショック)のさなか、ウォール街で衝撃の事件が起きていた。高い学歴と明晰な頭脳も持つエリート金融マンたちが、ストリップクラブで働く“学もステータスもない”女性たちに、人生が崩壊するほどの大金を巻き上げられたのだ。
当時、実際にウォール街で発生し問題化していた驚くべき事件を映画化し、アメリカでは興行収入100億円超の大ヒットを記録した良作。なんといっても物語の質が段違いである。
年老いた祖母を養うためストリップクラブで働き始めたデスティニー(コンスタンス・ウー)は、そこでひときわ輝くストリッパーのラモーナ(ジェニファー・ロペス)と出会う。彼女から稼ぎ方を学び、一気にセレブのような暮らしが送れるようになったデスティニーだったが、リーマンショックによって生活が一変する。デスティニーはストリップクラブを辞めざるを得ず、さらにシングルマザーとなった。再就職しようにも採用枠がほとんどないうえに、子連れなので状況は厳しい。常連だった男性客に連絡を取り援助を頼むが、相手は幸福な家庭があるため無下に断られたりする。ラモーナも豪華な生活は続けられず、GAPで販売員として働くことに。家計も体力も苦しい日々。一方で、経済危機を起こした張本人(ウォール街のエリートたち)の裕福な暮らしは変わっていない……。彼女はこの現実に不満を抱いた。「私たちが、あいつらから奪う」。デスティニーやクラブの仲間を誘い、ウォール街の裕福な男たちから、大金をだましとる計画を企てる。
クライムエンタテインメントとしても優れた作品だが、最大の見どころはデスティニーら女性たちの友情だ。女性たちは疑似家族のような絆を育むが、計画がうまくいき大金を手にするに従い、関係性に変化が現れる。デスティニーが幸福だった過去を思い返す場面があるが、そこで最大の見せ場がやってくる。
「それまでの思い出の数々が、ブワーッとすごい速度で映し出される」演出が! この演出が狂おしいほど好きなので、見た瞬間、ダメだった。それまでの物語展開で蓄積された切ない感情がバコーンと弾け飛び、涙がとめどもなく溢れ出てきた。
鑑賞前には、まさか泣かされるとは思っていなかったので、驚きもあって感情がぐちゃぐちゃになりながらエンドロールを眺める羽目になった。いい映画なのでこの機会にぜひ。ただちょっと、ゴージャスなストリップシーンが多々あるので、家族やパートナーとの鑑賞は慎重に。
▽立ち上がる時、それは変化の時。差別に立ち向かう女子高生たちの奮闘劇
「モキシー 私たちのムーブメント」(2021年製作/111分/エイミー・ポーラー監督)
学校での性差別に立ち向かう女子高生たちの奮闘を描いたNetflixオリジナルの青春ドラマ映画。人気コメディアンのエイミー・ポーラーが監督を努めています。
内向的な女子高生ヴィヴィアン(ハドリー・ロビンソン)は、校内にはびこる性差別や不公平にうんざりしながらも、親友クラウディア(ローレン・サイ)とともに目立たないよう過ごしていた。そんななか、男子生徒からの嫌がらせに負けない転校生ルーシー(アリシア・パスクアル=ペーニャ)の存在や、かつて反骨精神旺盛だった母リサ(ポーラー)に触発され、ヴィヴィアンは校内の性差別を告発する冊子「モキシー」を匿名で発行。冊子は反響を呼び、やがて学校に大きな変化を巻き起こす。
ちょうど多感な時期である高校時代。母親に写真なんて撮らせたくないし、学校では目立たず過ごす、ちょっと内向的なヴィヴィアンは、同じく内向的なクラウディアと高校生活を送っています。ただし、軽口を叩いてすぐ女子をからかう“人気者だけどおバカな男子”にはムカついているし、誰が作っているのか“女子の格付けランキング”にだって、ヘドが出るくらい嫌な思いをしています。けれど、とりあえずそんなもの無視していれば、いつか終わる……彼女たちは、そう考えて過ごしていました。
そこに現れたのが、転校生のルーシー。軽口を叩いてきた男子には反抗し、ランキングについて教師に直談判します。そんな彼女にヴィヴィアンは「気にしないほうがいい」と助言しますが、「なぜ? 彼が改心すべき」と返され、戸惑います。そこから、彼女の変化が始まります。
母の話やフェミニズム運動の映像から刺激を受け、匿名で「モキシー」という告発文を校内にばらまきます。少しずつ「モキシー」に共感してくれる人々がいるなかで、ヴィヴィアンとルーシーの仲は深まる一方、幼なじみで親友のクラウディアとは距離ができてしまいます。ヴィヴィアンとクラウディアの間にできた溝は見ていて切なさも感じてしまいます。女性たちが立ち上がるさまはもちろん、この親友ふたりの関係性にも心動かされる作品です。
▽自分らしく生きていこうと新たな人生を歩みだす姿が胸を打つ
「ステージ・マザー」(2020年/93分/トム・フィッツジェラルド監督)
ごく普通の主婦が息子の死をきっかけに、ドラァグクイーンと瀕死のゲイバーを再建する姿を描いた、新たなる希望と友情のハートウォーミングなドラマ。主人公の主婦メイベリン役を「世界にひとつのプレイブック」のジャッキー・ウィーバーが演じ、「キル・ビル」のルーシー・リュー、ドラマ「アントラージュ★オレたちのハリウッド」のエイドリアン・グレニアー、トランスジェンダーの女優マイア・テイラーらが共演しています。(執筆:和田隆)
テキサスの田舎町に住む主婦メイベリン(ウィーバー)は、長い間疎遠だった息子リッキーの訃報を受け、リッキーの暮らしていたサンフランシスコへ向かう。そこで彼女は、リッキーのパートナーであるネイサン(グレニアー)から、息子がドラァグクイーンでゲイバーを経営していたことを知らされる。リッキーは遺言もなく亡くなってしまったため、バーの経営権が母親であるメイベリンにあり、そのバーが破綻寸前の危機にあることが発覚。突然の展開に困惑するメイベリンは、息子が遺したゲイバーを再建するために立ち上がるが……。
「世界にひとつのプレイブック」でロバート・デ・ニーロ相手にキュートなお母さん(妻)を演じていたジャッキー・ウィーバー。本作でも小柄で可愛らしく、個性的な声の初老の主婦メイベリンを好演しています。
はじめは突然の息子の死を嘆き悲しみ、しかもその息子がドラァグクイーンでゲイバーを経営していたことを知って戸惑うばかりでしたが、次第に経営とエンタメショーの才覚、“マザー”としての頼り甲斐のある優しさを発揮。息子のパートナーやドラァグクイーンたちと協力してゲイバーを立て直そうとする“彼女たち”を応援したくなるでしょう。
さらに、生きている時に息子とわかり合えなかった後悔から、生きるとは何かを見つめ直すメイベリンと、偏見を乗り越えて自分らしく生きていこうとするドラァグクイーンたちのそれぞれの葛藤と歌う姿が心をあたたかくします。自分らしく生きるとはどういうことか思い悩んでいる方におススメの作品。シングルマザーを演じるルーシー・リューも見どころです。
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