【父の日特集】最強無敵パパのアクションものから、感情を揺さぶる名作まで! 父と子の親子愛を描いた映画5選 【映画.comシネマStyle】
2021年6月20日 07:00
毎週テーマにそったおすすめ映画をご紹介する【映画.comシネマStyle】。
本日6月20日は「父の日」です。皆さんはどうやって過ごされますか? お父さんと一緒に、“父”が主役の作品を鑑賞してみるというのはどうでしょう? 映画では様々な父のストーリーがあります。今回は父と子の親子愛を描いた映画の中から5作品選んでみました。あなたの心に響く作品はありますか?(文:蛯谷朋実、ドーナッツかじり)
スティーブン・スピルバーグが監督、ジョージ・ルーカスが製作総指揮を担い、ハリソン・フォードが主演したアドベンチャー映画の金字塔「インディ・ジョーンズ」シリーズ第3弾。
1938年、考古学者インディ(フォード)は富豪ドノヴァン(ジュリアン・グローバー)から、キリストの血を受けた聖杯の捜索を依頼される。最初は渋っていたインディだったが、行方不明になった前任者が父ヘンリー(ショーン・コネリー)だと知り、引き受けることに。ベネチアで父の同僚シュナイダー博士(アリソン・ドゥーディ)と合流したインディは、父から託された聖杯日誌を頼りに、調査を進める。
筆者が映画好きになるきっかけともなった本シリーズ。「最後の聖戦」ではフォード、コネリー、そして少年時代のインディを演じたリバー・フェニックスと、夢の共演が実現しました。父ヘンリーが初登場し、シリーズのなかでも「父と息子の物語」の印象が強い作品です。
インディと同じく優れた考古学者であり、一方でインディと違い武闘派ではなく、血を見るのが苦手なヘンリー。威厳のある父親ではありますが、意外とおっちょこちょい&マイペースなのです。ヘンリーのミスで、ふたりが幽閉されていた部屋が火事になるという大ピンチに、いつも笑ってしまいます。そして、縛られた椅子ごと壁が回転し、炎上する部屋と、敵の監視員たちが過ごす部屋をぐるぐると行き来するシーン。ディズニーシーのアトラクションに「最後の聖戦」編ができたら、是非ライドに取り入れてほしいポイントです。
インディがヘンリーに振り回され、困り顔を浮かべる姿に多いに笑ったあと(「ジュニア」と呼ばれて嫌がる……という、お決まりの件も最高です)、クライマックスには、親子の絆を感じられるシーンが待ち受けているのでご安心を。長い間会っていなかったふたりですが、深いところでしっかりとつながっていることが伝わってきます。初期3作品(それから約19年後の2008年に「クリスタル・スカルの王国」が製作されますが)を締めくくる、夕日に向かって馬で駆けていく美しいラストシーンにも注目してください。
リュック・ベッソン製作、リーアム・ニーソン主演で描くサスペンス・アクションシリーズの第1作目。
元秘密工作員のブライアン(ニーソン)は、家族との時間を取り戻すために仕事を辞めるも、別れた妻と娘とはすれ違う日々。そんななか、娘のキム(マギー・グレイス)が友人とパリに旅行中、人身売買組織に誘拐されてしまう。96時間後には、その行方を追うことは不可能となる。娘を救うため、ブライアンは元秘密工作員の知識・人脈・行動力で単身パリへと乗り込む。
子を思う時、父は強くなる。それが元々強い父の場合は無敵になる!というのがこの映画。我が子が心配で鬼電するパパ、そんなどこにでもいるパパが、子どもの誘拐犯に遭遇すると豹変。襲われる直前の娘に、お仕事モードで冷戦沈着に指示を出します。「お前は今から捕まる」。
子どもが誘拐されるのに「なぜそんなに冷静なんだよ!」と思いましたが、その後の行動は怒れる父親! なりふり構わず娘のために、殺して殺して殺しまくる! 街中を壊しまくる! 娘のために突き進む姿に、なんだか全て許してしまいそうになります(殺し、絶対ダメ)。
また、このシリーズは「96時間 リベンジ」「96時間 レクイエム」と続いていくんですが、怒れる父親とともに見てほしいのが、娘キムの成長ぶり!
「リベンジ」では、前作でキムを誘拐し、ブライアンにキツい殺され方をした犯人の父親が、復讐のために再びブライアンの家族に襲いかかるのですが、一度誘拐を経験しているキムの落ち着き方と対処がものすごい! 免許を取る前なのに、そのドライビングテクはお父さん顔負けのド迫力です!
さらに「レクイエム」での父との共闘には、この親にしてこの子あり……という思いがこみ上げてきます。父の日は、親子で3作連続鑑賞なんていうのもおすすめです。
2005年に発表され、「9・11文学の金字塔」と評されたジョナサン・サフラン・フォアのベストセラー小説を、「リトル・ダンサー」「めぐりあう時間たち」のスティーブン・ダルドリー監督が映画化。
アメリカの9・11同時多発テロで、最愛の父トーマス(トム・ハンクス)を亡くした少年オスカー(トーマス・ホーン)は、クローゼットで1本の鍵を見つける。その鍵の謎を解くことで、父が残したメッセージを得られるのではないかと考えた彼は、鍵穴を探してニューヨークの街へ飛び出していく。第2次世界大戦で運命が変わった祖父母、9・11で命を落とした父、そしてオスカーへ――歴史の悲劇に見舞われた3世代の物語が紡がれ、最愛の者を失った人々の再生と希望が描き出される。
劇中には、オスカーのこんなモノローグがあります。「太陽が爆発しても、僕らは8分間何も知らない。(中略)8分間世界は変わらずに明るく、太陽の熱を感じる。パパが死んで1年。僕はパパとの8分間が消えていく気がした」。父の死を受け入れられず(受け入れられるわけがありません)、父とのつながりを感じられる唯一の手段として、オスカーは鍵にぴったりと合う鍵穴を探し、調査探検に熱中します。その8分間を引きのばすために。
オスカーは“最悪の日”と呼ぶ9.11の記憶に苛まれ、「飛行機」「高いビル」「出られなくなる場所」「叫び声」など苦手なものが増えていきます。それは、ぼんやりする時間が増えた母リンダ(サンドラ・ブロック)も同様。遺された母子は、いまだに父の喪失を乗り越えられないのです。圧倒的な悲劇に見舞われながらも、生きていかなければならない人々の痛みに満ちた、出口のない日々が、まざまざと描かれます。なぜ飛行機はビルに突っ込んだのか、なぜ父は、夫は死んだのか――分からないこと、答えがないことが、例えようもなく辛いのです。
だからこそオスカーは、何らかの答えを求め、鍵穴を探します。空っぽの棺を埋葬したことで、父の死に“ひとつの区切り”をつけられるはずもなく、納得するまでニューヨーク中を駆け回る姿に、心をかきむしられるような思いになります。
その旅路で、何かを失った人々に会い、苦手なものを克服していくオスカー。やがて彼は、ずっと隠していた本当の苦悩とも向き合うことに。旅が終わりを迎え、喪失感とともに生きることを決意したオスカーの世界は大きく変わり、そして両親の想像を超える愛に包まれていることに気付くのです。強い覚悟をもって見なければなりませんが、劇中で描かれる様々な「父子の関係」が心奮わせる名作です。
ニューヨークに30年ぶりのオーロラが現れた日、父との思い出となった古い無線機が時空を越えて親子をつなぐファンタジーサスペンスドラマ。
刑事のジョン(ジム・カビーゼル)は恋人との別れなどで鬱屈としていた。偶然、30年前に殉職した消防士の父フランク(デニス・クエイド)の形見の無線機を発見する。ニューヨークの異常気象で空にオーロラが輝いた夜、無線機が動き出す。交信したその相手は、30年前、殉職する前日の父だった。ジョンは父を救うため、彼が殉職した事故の詳細を伝え、フランクは殉職を免れるが、彼が生き残ったことにより未来が変わってしまい、全く予想もしなかった大事件へと発展してしまう……。
「あんなことが起こらなければ」。恐らく誰もが一度は考えたことがある問いだと思います。では実際に起きなければ全てが解決するのか? いえ、やはりひとつ「起きてほしくないこと」がなかったとしても、また新たな「起きてほしくないこと」に遭遇してしまうのです。
ただ、そんな大変なときでも支えてくれる人がいれば乗り切ることができる。この映画では、ジョンにとって「最も起きてほしくなかったこと=父の早すぎる死」を、奇跡的な出来事により回避することができますが、それによって未来が大きく変わってしまい、ある人が連続殺人犯に殺されるという新たな悲劇が起こってしまいます。
そこから、時空を越えて父と息子が手を取り合って連続殺人犯を止めるために奔走します。未来の証拠から過去の事実を掴み、過去の事柄から新たな痕跡を発見する。しかし過去のちょっとした出来事でまた未来が思わぬ方向にも動き出してしまう……。その全てに見ているこちらも一喜一憂、ハラハラドキドキが止まらないのです。
ラストでは、過去・未来での決死の戦いはものすごい緊迫感があり、呼吸を忘れるほど。そして、そのあとに待ち受ける素晴らしい結末に、泣きながら笑っていました。見終わったあと、父に連絡したくなる作品です。
是枝裕和監督が福山雅治を主演に迎え、息子が出生時に病院で取り違えられたと知らされた父親の苦悩や葛藤を描いたドラマ。第66回カンヌ国際映画祭コンペティション部門の審査員を受賞した。
大手建設会社に勤務し、都心の高級マンションで妻と息子と暮らす野々宮良多(福山)は、人生の勝ち組で、誰もがうらやむエリート街道を歩んできた。そんなある日、病院からの電話で、6歳になる息子・慶多(二宮慶多)が出生時に取り違えられた他人の子どもだと判明する。妻・みどり(尾野真千子)や、取り違えの起こった相手方の斎木夫妻(リリー・フランキー、真木よう子)は、それぞれ育てた子どもを手放すことに苦しむが、「どうせなら早い方がいい」という良多の意見で、互いの子どもを“交換”することになる。
筆者は、野々宮夫妻と斎木夫妻が対面するシーンで、「こういう(子どもの取り違えが起こった)ケースは、最終的には100%、ご両親は“交換”という選択肢を選びます」という言葉に衝撃を受けました。また、“交換”という言葉の冷たい響きにも。これまで我が子として愛情を注ぎ、6年間をともに過ごしてきた子どもか、血のつながった実の子どもか。答えが出せるはずもない選択肢の狭間で、2つの家族は揺れ動きます。
また、2つの家族の価値観や生活環境の違いを示す演出にも注目です。ストロー、食卓、記念撮影で2つ並んだカメラ。それぞれの家族の形があり、「良い父親とは何か」という考え方も違うのです。
「誰も知らない」など、ほかの是枝監督作品同様、子どもたちの自然体の演技が素晴らしく、また両親役は名優ぞろいとあって、揺れる思いを繊細に表現した熱演が、見ている側にも切実な選択を迫ってくるようです。遺伝子の検査で、正式に息子が他人の子であると証明され、「やっぱり、そういうことか」と呟いた良多。常に上から目線で、息子への愛情もどこか乏しいような印象を与える彼が、終盤になるにつれ、葛藤に満ちた内面や複雑な家庭環境をさらけ出していく過程が秀逸です。彼の姿を見ていると、「そして、父になる」というタイトルがいかに素晴らしいものであるか、分かると思います。
また、みどりが斎木家の子・琉晴(黄升げん)と過ごし、思わぬ感情が芽生える場面も忘れられません。父性や母性は、体の内から湧き上がってくる本能に近いもの。彼女もまた、ふたりの子どもの間で引き裂かれ、苦悩します。
そして筆者が最も感銘を受けたのは、やはり子どもたちの描写です。大人になると、なぜか自分が子どもだった頃のことをすっかり忘れてしまいます。子どもは大人が思っている以上に繊細で、愛情深いということを。野々宮家の慶多は、父に褒められ、ピアノの練習に励みます。そして、過酷な現実から逃避しようと、「ふたりでどこか行っちゃおうか、遠いところ」と呟くみどりに、「パパは?」と聞くのです。そんな慶多が自分に向ける思いを、良多が知る“あるシーン”は、涙なしには見られないでしょう。
今年の「父の日」には親子で一緒に映画を見て、普段なかなか言えない感謝や思いを伝えてみるのも素敵ですね。
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