リトル・ダンサー
劇場公開日 2001年1月27日
解説
イギリスの炭坑町に住む少年ビリーは、偶然目にしたバレエ教室に惹かれ、女の子たちに混じって練習するうち夢中になっていく。めきめき上達する彼に自分の夢を重ね、熱心に指導するウィルキンソン先生。しかし大事なお金をバレエに使うことを知った父は激怒し、教室通いを禁じる。先生はビリーにロイヤル・バレエ学校のオーディションを受けさせたい一心で無料の個人レッスンを行うが、オーディションの朝、炭鉱夫の兄トニーがスト中に逮捕される。
2000年製作/111分/イギリス
原題:Billy Elliot
配給:日本ヘラルド映画
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最初は体が硬いけど、踊りだすと何もかも忘れて、すべてが消えます。何もかも。自分が変わって、体の中に炎が……。宙を飛んでる気分になります。鳥のように。電気のように。
ダンスを踊っている時の気持ちを聞かれたビリーの言葉が、本当に美しい。ロンドンで鑑賞したミュージカル版が素晴らしく、映画版は舞台を超えられないだろうという偏見があった。今となっては、今日まで本作を見ずに生きてきたことを後悔している。
舞台は、イギリスの炭鉱町。母を亡くし、炭鉱で働く父と兄はストライキの真っ最中。全く好きになれないボクシングのレッスンに通うビリーは、近くで女の子たちが練習していたバレエに惹かれ、たちまち夢中になっていく。
暗く沈んだ家庭、父や兄との関係、ストライキにより緊張状態の街、バレエを女の子のものだと決めつける世間の目……まだ11歳のビリーは悩み、迷い、立ち止まる。しかし、踊り出すと全てが消え、自由になる。様々な苦難を超え、人々の思いをのせ、躍動するビリーの姿が胸に焼きついて離れない。心が動かされるダンスというのは、こういうものなのだろう。
ベッドの上で跳ねたり、チュチュを着た女の子の中で踊ったり。母が遺した手紙を何度も読んだのか、ウィルキンソン先生の声に合わせて暗唱したり、父と草の上を転がりながら抱き合ったり。心にそっとしまっておきたくなるような、愛おしいシーンが満載だ。そして、好きなダンスシーンが多過ぎて、ひとつに絞れない。ビリーの夢見る気持ちに照らし出された人々の表情が、心に炎を灯してくれる。厳しく、ままならない現実に押しつぶされそうになっても、ビリーのことを思い出せば、たちまちその炎は燃え上がる。
2022年7月7日
PCから投稿
鑑賞方法:DVD/BD
何回観ても感動は新たです。
2000年(イギリス)監督:スティーブン・ダルドリー。
1986年のイギリスの斜陽の炭鉱町を舞台に、
バレエとおよそ接点のない11歳の少年が、ロイヤルバレエ・スクールを受験するまでの
軌跡です。
主演のビリー少年(ジェイミー・ベル)が成人した姿を、世界的バレエ・ダンサーの
アダム・クーパーが演じています。
この映画のファーストシーンは、ビリー少年の《跳躍》
そしてラストは、アダム・クーパーの《跳躍》で終わる。
そんな粋な演出がニクイ。
監督のスティーブン・ダルドリーは映画監督としてより、演劇やミュージカルでの活躍が
めざましく、エミー賞とトニー賞に輝く演劇人でもあります。
映画監督としての本数は少ないが、
「リトル・ダンサー」
「めぐりあう時間たち」
「愛を読むひと」
「ものすごくうるさくて、ありえないほど近い」
名作揃いで、強烈に印象に残っています。
炭鉱労働者の父親と兄を持つビリーは、父のススメで習っていたボクシング・リングのすぐ横で、バレエのレッスンする女の子たちに興味を惹かれます。
飛び入りで習ったら、あらっ、筋が良い!!
ビリーは男の子だけど、ボクシングよりバレエが合うみたい。
お母さんとお婆ちゃんの影響かな?
(お母さんはフレッド・アスティアのファンだったし、お婆ちゃんはダンサーになりたかったそうですよ)
お婆ちゃんはちょっとボケてるけれど、とても可愛らしい!
炭鉱の偉いさんを夫に持つサンドラ先生はおよそ芸術家には見えないし、
ポジションのお手本ひとつ見せない。
ちょこっとステップを踏む程度。
「フラガール」の方が、よっぽどダンスとひたむきに向き合う映画、に思える。
(日本人はやはり何事にも真摯で真面目)
(イギリス映画はユーモアとペーソスで、敢えて努力の部分を見せない?)
そして問題のバレエです。
ビリーがオーディションで、踊るシーン。
これは間違ってもクラシック・バレエではありませんね。
タップやとんぼ返りと、なんとも無手勝流ですが、本当に楽しそう。
間違ってもバレエを見る映画ではない・・です(笑)
オーディションでビリーが踊るダンス。
前のダンス同様に、お腹を抱えて笑いました。
審査員の表情も、実に微妙で、笑いを噛み殺しています。
男がバレエなんか・・と大反対だったお父さん(ゲイリー・ルイス)の変わり身の早さにも、
将来の見えない石炭産業の自分に較べて、ビリーの夢を後押ししたくなる気持ち。
親心ですね。お父さんも渋くて素敵。
息子のためにプライドを捨てて《スト破り』まで。
さて、アダム・クーパーですが、
成人したビリーはバレエ・ダンサーとして成功。
父親、兄のトニー、幼馴染のマイケルとそのパートナーが舞台を見にきています。
アダム・クーパーの出演シーンはほんの数秒。
黒鳥のメイクで跳躍します。
ひとっ飛び!!その跳躍が、高い!!
(アダムの背中がやけにデカいです)
余談ですが、私はアダム・クーパーが踊るのを札幌で見ました。
「熊川哲也のバレエ公演」に賛助出演したのです。
ガタイが良かった。
白いシャツにブルージーンズで踊ってくれたのですが、
労働者のように逞しかった。
札幌の2月。
雪まつりの夜のことです。
マイナス15度だったけれど興奮冷めやらない私の身体はポカポカでした。
そんな事も思い出してしまう映画でした。
演劇界も“コロナ明け”で、光が見えてきたのだろうか!
第7波が小さい事を、切に願います。
2022年6月23日
スマートフォンから投稿
鑑賞方法:CS/BS/ケーブル
私はこの作品も3回も観てしまいました
何というか、若さ溢れ希望と夢の実現
に向けて無垢な心で挑む姿が胸を打つのです。少年時代にバレエに出会い、心の寂しさと身体の成長過程が一致する
幸せな時間とラストの飛躍。
バレエに憧れた数十年前を思い出しましたね。男のバレエもカッコ良いです。
作品の完成度も高く、主役の少年も、
他の役者さんも演技が上手でした。
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男の子なのにバレエを踊りたいビリー、オマセな女の子、女装に興味がある男の子。
ビリーに熱心にバレエを教える先生、炭坑ストで失業中の漢らしい父、父と同じ道を辿る兄、ボケ気味のお婆ちゃん。
色んな人がいる中で幼いながらに葛藤し、どこか諦めつつも、周りの人に支えられることで立派なバレエダンサーとなったビリー。
序盤は厳格な父親にビビりますが、未来のあるビリーのために出稼ぎし、息子を励まし、涙する父親の姿に大号泣でした。
面接でウロウロしたり、合格して走ったり、通知が来た時の家族のシーン、ビリーを送り出すシーンどれもクスッと笑えて、泣けて、嬉しくなる。
父親が協力的になったことでバレエを教えてくれた先生とは徐々に距離が開いていくのがまた切ない。先生もきっと我が子のようにビリーを信じ、育て、心配してくれていたに違いない。
終盤で原っぱ(?)で父親と戯れるシーンが大好き。
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