篠原涼子が忘れられない思い出の弁当とは?
2019年6月30日 08:00
[映画.com ニュース] 女優の篠原涼子が主演した「今日も嫌がらせ弁当」(塚本連平監督、6月28日公開)は、高校3年間、反抗期の高校生の娘(芳根京子)のためにキャラ弁を作り続けた母と娘の物語だ。自身の代表作となったシリアスサスペンス「人魚の眠る家」(2018)から一転、本音で明るく生きるシングルマザーを好演した篠原が、最近続いている母親役、弁当の思い出や自身の“反抗期”について語ってくれた。(取材・文/平辻哲也、写真/サイトウムネヒロ)
「今日も嫌がらせ弁当」はシリーズ累計20万部を超えるブログ発の同名エッセーが原作。八丈島を舞台に、わざととっぴなキャラ弁を作り、反抗期の娘・双葉とコミュニケーションを取ろうとする母・かおりの奮闘を描く。「(台本は)テンポよく読めました。本だけでもすごく楽しかったのですが、CGになる部分やキャラクター弁当などもあるので、映像になったら、もっと面白いんだろうなと想像をかきたてられました。実際、そういうものが映像でいきていると思います」と話す。
劇中ではスギちゃん、小島よしお、日本エレキテル連合、ダンディ坂野など多彩なキャラ弁が登場するが、お気に入りはホラー映画の貞子だ。「指の1本1本がウインナーになっていて、しかも、血(ケチャップで表現)が付いていて、面白いアイデアだなと思いました。その“指”の1本1本を、芳根ちゃんが食べるというのも、かわいかった。インパクトが強いですね。ホンモノは実際には見ていなかったんで、芳根ちゃんがちょっと、うらやましかったです」と笑う。
その芳根とは、フジテレビ系「ラスト シンデレラ」(13)以来の共演となった。「大人になったな、というのが第1印象でした。でも、謙虚ですごくかわいらしく、お芝居もすごくしっかりした女優さんになられているなと思いました。安心して、お互いに役に集中して、演技ができたなと思います。大人同士で一緒に仕事をしている感じがしました」と後輩の成長に目を細める。
撮影は2018年3月、原作者のKaoriさんが実際に暮らす東京の離島・八丈島で約1カ月行った。「八丈島はすごく素敵でした。空気も澄んでいて緑が多くて……。台風が突然、来たりするんですけども、晴れた時は大きなクジラが背中から潮を出すところも見られたし、ホテルの目の前にはジャージー牛がいて、その牛乳も飲めるんです。撮影も順調で、ほとんど夕方5時くらいには終わったので、夜は幸せな時間を過ごせました。八丈島で撮っている時のスタッフたちはすごく健康的な感じで、幸せそうでした」と充実の撮影を振り返る。
原作者のKaoriさんも、弁当作りのヘルプなどで現場に顔を出してくれた。「Kaoriさんは飲食店をされているので、そこでご飯を頂いたりもしました。弁当にも入っているから揚げがすごく美味しかったです。でも、本物のキャラ弁は食べる機会がなかったんですよ。食べたかったなあ。Kaoriさんは仕事もしながら、寝る時間を削って、3年間キャラ弁を作ったわけですが、すごい熱意だと思います。そのおかげで、今では絆がすごく深まっているんです。実際の娘さんも『お母さんにキャラ弁を作ってもらったことは、自分の一生の一部だ』とおっしゃるんです。娘さんにとっても、大きなドラマになったんだな、と思います」。
実生活では小学校に通う2人の男児の母。弁当を作ることはあるが、「上の子は小5なので、キャラ弁は嫌がるんですよ。みんな男っぽくって、ちょっと恥ずかしいなという感じになっちゃって……。幼稚園の頃は、丸いおにぎりにパンダが鉢巻きしているようなものを海苔で作りましたけど、Kaoriさんのような(凝った)キャラ弁はできないです。時間と労力、技術の問題なので。1回作って、『またやってね』とリクエストされたら、怖いですしね」と笑ってみせる。
自身では、故郷・群馬県桐生市での小学生の時、3つ上の姉が作ってくれた弁当が思い出深いという。「週1でお弁当の日があったので、中学生だった姉がよく作ってくれました。そんなに手がこんだものではないですけども、ウインナー、海苔入りの卵焼き、ちくわにチーズやキュウリが入っているもの、とか。嬉しかったですね。お弁当って、一生懸命思いを込めて作ってくれたんだと思うと、離れていても、作ってくれた人のことを思い出しますよね」。
ここ数年は母親役が続いている。虐待を加える母と、虐待を受けて成長した娘の一人二役を演じた日テレ系ドラマ「愛を乞うひと」(17)をはじめ、吉永小百合と共演した「北の桜守」、代表作にもなった主演映画「人魚の眠る家」「SUNNY 強い気持ち・強い愛」(18)だ。「ホント、お母さんづいていますね。しかも2年間ずっと親、親、親、家に帰っても、親だし……(笑)。自分自身がこんなにに母親役を立て続けにやらせていただく日が来るとは思ってもみませんでした。でも、全部が全部キャラクターが違うので、それぞれやりがいがあったし、楽しかったし、やり飽きた感は全くないです」。
本作もお気に入りの作品になった。「こういうポップな作品は久しぶりだったので、すごく楽しみでした。そういう意味ではタイミングもちょうどよかったと思います。少し暗めの役が続くと、高いテンションで振り切れないみたいなことがあるんです。でも、だんだんやっていくうちに調子が出てきたんですが、振り切れないくらいがちょうどいいのかなって、思いましたね。あんまり、やりすぎちゃうと、わざとらしいし、作品自体も、“どコメディ”というわけでもないので。心情も大切にしながら、計算じみてやるのではなく、そのとき、自分が感じたことを素直に演じていきました」。
劇中では、反抗期を迎えた娘とのバトルが見どころだ。終始笑わせてくれるが、最後には思いがけず、ホロリとさせられる。「それは嬉しい褒め言葉ですね。ずっと聞いていたいです(笑)。私も2回見て、2回ともウルッときました(笑)。自分の作品で分かっているのに、でき上がりを見ると、やられちゃったな、という感じになっているので、すごく嬉しかったです。結構、みなさんに『グッときた』と言われたので、そう思ってくださった人が多いんだろうなって思っています」と手応えを感じている。
ところで、篠原自身には反抗期はなかったのか? 「私は(世間で言う)反抗期真っただ中の15歳の終わりくらいに上京したので、まったく反抗期はなくて、むしろ、親には感謝していました。『ありがとう』とか、『ごめん』とか、常日頃、言っていなかったなと思って。言わなきゃダメなんだなと、すごく気づかされたのが16歳の時だったんです。離れていたので、親のことを客観視できたんです。田舎の温かみとか、親の有り難みがすごく分かってきたんです」と明かす。
また、高校生の娘を持つという役も新鮮だったという。「親の役だけども、親、満載感がないから、よかったかな。(終盤の)病室でのくだりも好きです。本当に心を割って、話せる感じがしていたんです。女同士は友達みたいな感じになるんだなと思いましたね。男の子を持つ母親は、親という感じがすごくするけども、女同士だと、一緒に買い物したり、ランチしたり、映画を見に行ったり……女友達と行動しているのと変わらないところがありますよね。今は息子たちが小さいから一緒に出かけますけども、中学生、高校生ぐらいになったら、嫌がるんじゃないかな。手とか繋ぎながら歩いている親子もいるじゃないですか、うらやましいなと思いますね」。
そして最後に、「女優として仕事をすると、たった短い時間ですけども、その人に成り切っていろんな経験できます。そういう意味では人生を倍生きているような感覚になります。それにしても、違う作品で、いろんな親の役がこんなにもできるんだな、と思いました。もちろん、どんな役でも、やらせていただきたいんですけれども、そろそろ『独身の役をやってみたいな!』という気持ちはなくもないかな」と茶目っ気たっぷりに語ってくれた。
関連ニュース
映画.com注目特集をチェック
関連コンテンツをチェック
シネマ映画.comで今すぐ見る
父親と2人で過ごした夏休みを、20年後、その時の父親と同じ年齢になった娘の視点からつづり、当時は知らなかった父親の新たな一面を見いだしていく姿を描いたヒューマンドラマ。 11歳の夏休み、思春期のソフィは、離れて暮らす31歳の父親カラムとともにトルコのひなびたリゾート地にやってきた。まぶしい太陽の下、カラムが入手したビデオカメラを互いに向け合い、2人は親密な時間を過ごす。20年後、当時のカラムと同じ年齢になったソフィは、その時に撮影した懐かしい映像を振り返り、大好きだった父との記憶をよみがえらてゆく。 テレビドラマ「ノーマル・ピープル」でブレイクしたポール・メスカルが愛情深くも繊細な父親カラムを演じ、第95回アカデミー主演男優賞にノミネート。ソフィ役はオーディションで選ばれた新人フランキー・コリオ。監督・脚本はこれが長編デビューとなる、スコットランド出身の新星シャーロット・ウェルズ。
「苦役列車」「まなみ100%」の脚本や「れいこいるか」などの監督作で知られるいまおかしんじ監督が、突然体が入れ替わってしまった男女を主人公に、セックスもジェンダーも超えた恋の形をユーモラスにつづった奇想天外なラブストーリー。 39歳の小説家・辺見たかしと24歳の美容師・横澤サトミは、街で衝突して一緒に階段から転げ落ちたことをきっかけに、体が入れ替わってしまう。お互いになりきってそれぞれの生活を送り始める2人だったが、たかしの妻・由莉奈には別の男の影があり、レズビアンのサトミは同棲中の真紀から男の恋人ができたことを理由に別れを告げられる。たかしとサトミはお互いの人生を好転させるため、周囲の人々を巻き込みながら奮闘を続けるが……。 小説家たかしを小出恵介、たかしと体が入れ替わってしまう美容師サトミをグラビアアイドルの風吹ケイ、たかしの妻・由莉奈を新藤まなみ、たかしとサトミを見守るゲイのバー店主を田中幸太朗が演じた。
ギリシャ・クレタ島のリゾート地を舞台に、10代の少女たちの友情や恋愛やセックスが絡み合う夏休みをいきいきと描いた青春ドラマ。 タラ、スカイ、エムの親友3人組は卒業旅行の締めくくりとして、パーティが盛んなクレタ島のリゾート地マリアへやって来る。3人の中で自分だけがバージンのタラはこの地で初体験を果たすべく焦りを募らせるが、スカイとエムはお節介な混乱を招いてばかり。バーやナイトクラブが立ち並ぶ雑踏を、酒に酔ってひとりさまようタラ。やがて彼女はホテルの隣室の青年たちと出会い、思い出に残る夏の日々への期待を抱くが……。 主人公タラ役に、ドラマ「ヴァンパイア・アカデミー」のミア・マッケンナ=ブルース。「SCRAPPER スクラッパー」などの作品で撮影監督として活躍してきたモリー・マニング・ウォーカーが長編初監督・脚本を手がけ、2023年・第76回カンヌ国際映画祭「ある視点」部門グランプリをはじめ世界各地の映画祭で高く評価された。
文豪・谷崎潤一郎が同性愛や不倫に溺れる男女の破滅的な情愛を赤裸々につづった長編小説「卍」を、現代に舞台を置き換えて登場人物の性別を逆にするなど大胆なアレンジを加えて映画化。 画家になる夢を諦めきれず、サラリーマンを辞めて美術学校に通う園田。家庭では弁護士の妻・弥生が生計を支えていた。そんな中、園田は学校で見かけた美しい青年・光を目で追うようになり、デッサンのモデルとして自宅に招く。園田と光は自然に体を重ね、その後も逢瀬を繰り返していく。弥生からの誘いを断って光との情事に溺れる園田だったが、光には香織という婚約者がいることが発覚し……。 「クロガラス0」の中﨑絵梨奈が弥生役を体当たりで演じ、「ヘタな二人の恋の話」の鈴木志遠、「モダンかアナーキー」の門間航が共演。監督・脚本は「家政夫のミタゾノ」「孤独のグルメ」などテレビドラマの演出を中心に手がけてきた宝来忠昭。
奔放な美少女に翻弄される男の姿をつづった谷崎潤一郎の長編小説「痴人の愛」を、現代に舞台を置き換えて主人公ふたりの性別を逆転させるなど大胆なアレンジを加えて映画化。 教師のなおみは、捨て猫のように道端に座り込んでいた青年ゆずるを放っておくことができず、広い家に引っ越して一緒に暮らし始める。ゆずるとの間に体の関係はなく、なおみは彼の成長を見守るだけのはずだった。しかし、ゆずるの自由奔放な行動に振り回されるうちに、その蠱惑的な魅力の虜になっていき……。 2022年の映画「鍵」でも谷崎作品のヒロインを務めた桝田幸希が主人公なおみ、「ロストサマー」「ブルーイマジン」の林裕太がゆずるを演じ、「青春ジャック 止められるか、俺たちを2」の碧木愛莉、「きのう生まれたわけじゃない」の守屋文雄が共演。「家政夫のミタゾノ」などテレビドラマの演出を中心に手がけてきた宝来忠昭が監督・脚本を担当。
内容のあまりの過激さに世界各国で上映の際に多くのシーンがカット、ないしは上映そのものが禁止されるなど物議をかもしたセルビア製ゴアスリラー。元ポルノ男優のミロシュは、怪しげな大作ポルノ映画への出演を依頼され、高額なギャラにひかれて話を引き受ける。ある豪邸につれていかれ、そこに現れたビクミルと名乗る謎の男から「大金持ちのクライアントの嗜好を満たす芸術的なポルノ映画が撮りたい」と諭されたミロシュは、具体的な内容の説明も聞かぬうちに契約書にサインしてしまうが……。日本では2012年にノーカット版で劇場公開。2022年には4Kデジタルリマスター化&無修正の「4Kリマスター完全版」で公開。※本作品はHD画質での配信となります。予め、ご了承くださいませ。