「今夜、ロマンス劇場で」坂口健太郎が感じた“お姫様”綾瀬はるかの愛しさ
2018年2月11日 08:00
[映画.com ニュース]構想から9年、映画文化への愛がたっぷりと注がれたクラシカルな劇場が開館する――プロデューサー・稲葉直人氏がオリジナル企画として長年温め続けてきた「今夜、ロマンス劇場で」は“映画が娯楽の王様”だった頃の古き良き時代を背景に、ロマンティックな恋が描かれる。初共演を果たした綾瀬はるかと坂口健太郎のテンポの良い掛け合いに笑い、せつない運命に揺さぶられる2人の姿に、思わず涙があふれる。小説や漫画の実写化が相次ぐなか、誰も“見たことがない”上質なラブストーリーが完成した。(取材・文/編集部、写真/間庭裕基)
「信長協奏曲(ノブナガコンツェルト)」を手がけた小説家・宇山佳佑のオリジナル脚本を、「のだめカンタービレ」「テルマエ・ロマエ」シリーズの武内英樹監督が映画化。映画監督を夢見る青年・健司(坂口)の前に、モノクロ映画のなかのお姫様・美雪(綾瀬)が、スクリーンの中から現れる。2人は次第にひかれ合っていくが、やがてさまざまな障壁が立ちはだかる。「ニュー・シネマ・パラダイス」や「忍術キートン」(邦題:「キートンの探偵学入門」)「カイロの紫のバラ」「オズの魔法使」、果ては「狸御殿」「銀座旋風児」(ギンザマイトガイ)シリーズなど、古今東西の名作へのオマージュがちりばめられており、元ネタを知っている映画ファンであれば思わずニヤリとしてしまうはずだ。
「海街diary」「高台家の人々」に出演しているが共演シーンはなかったため、本作が初の顔合わせとなった綾瀬と坂口。撮影で築き上げた絶妙なコンビネーションは、月日が経っても健在だった。互いの印象に関する質問に対して「『海街diary』で少しお見かけした時はクールな印象だったんですけど、今回はすごく優しくて…」と綾瀬が思案に暮れると、坂口は間髪入れず「頼りがいがあった?」と投げかけて場を和ます。一方「柔軟、柔らかい感じの方」という言葉を受けた坂口が「テレビで拝見している時のイメージが強くて。ふわっとしている。勿論ポジティブな感じは強かったんですけど…」と語ると、綾瀬は「実はしっかりしている?」と乗っかってみせる。思わず笑いを抑えきれなかった坂口だったが、その発言には異論はなかったようだ。
坂口「そう、しっかりしています! 女性としても役者さんとしても、しっかりとした芯があるんです。クランクインしてすぐに、それは感じましたし、一緒にお芝居をさせていただいている時にも。よく“天然”と表現されていることがあるのですが、どちらかといえば、チャーミングな方なんだなと思いました」
思い出に残る撮影現場を問うと、口を揃えて挙げたのは「ロマンス劇場」。99年に閉館した栃木の映画館・足利東映プラザを撮影用に改修した同劇場は、美雪が初めて色の素晴らしさを知る場所だ。室内は思わずため息が漏れるほど彩色豊か。綾瀬は「すっごく可愛かった!」というダイヤマークのパターンをあしらった廊下や、本作のスタッフをモデルにした多種多様のポスターに心奪われ、坂口は現存していた映写室での芝居を思い返し「(映写機に)フィルムをセットしているのは、僕なんです。昔の技術をそのままやるということにこだわっていたので、練習もしていました」と告白した。
さらに、坂口は蛍が飛び交う小川での芝居を述懐した。同シーンでは、前半のコミカルなテイストから一転、美雪の「人に触れると消えてしまう」という悲しい事実が発覚し、物語がシリアスな方向へ舵を切る。健司として生き抜いた撮影当時は「悲しくてネガティブな感情が優先していた」ようだが、完成した作品を目の当たりすると、美雪の純粋な思いに胸を打たれた。「前半パートの美雪は、触れられないからこそ、あえて健司を拒絶していたんですよね。2人でずっと一緒にいるための距離感だったんだと知った時、それまでの行動を含めて、全てが愛しいと感じたんです」
「今夜、ロマンス劇場で」は、美雪と健司の恋に焦点を当てつつ、時代の流れとともに忘れ去られていった“映画たち”のドラマでもある。「子どもの頃、映画館は特別な場所でした。大きなスクリーンがある場所へ行けるというワクワク感がありました」と綾瀬が映画愛を吐露すると、坂口は「この作品は映画館へ家族で見にきてほしいですね。お父さん、お母さん、そしてお子さんも全員楽しめるはず」と思いの丈を述べた。「映画館で見てほしい」という情熱がほとばしる本作は、美しい世界観に没入できるスクリーンで見てこそ、その思いをしっかりと実感できるだろう。
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