井口昇監督が明かす「ライヴ」映画化の苦労とは?
2014年5月3日 09:30

[映画.com ニュース] 人気作家・山田悠介の「ライヴ」が角川文庫創刊65周年記念作品として映画化。監督・脚本を務めた「片腕マシンガール」「電人ザボーガー」の鬼才・井口昇監督が、映画化の苦労と「角川映画」への思いを明かした。
「『リアル鬼ごっこ』などで若い世代に人気の山田さんと自分では、“水と油”だと思っていました」と言う井口監督。「(オファーがあった時に)何本か映画化候補の作品があって、その1本が『ライヴ』でした」と振り返る。「デスマラソンと聞くと、『デス・レース2000年』や『バトルランナー』を思い出して面白そうじゃないですか」と、監督は原作を読み進めていくが、やがて大きな問題にぶち当たる。100人を超えるランナーがひた走るデスマラソンはお台場からスタートし、その模様はテレビで生放送されて全国が大騒ぎとなる。ヘリが何10台と飛び交い、無数のパトカーが走り回る展開に、「これは、映画にするにはお金が掛かりすぎる」と頭を抱えたという。
「そこで、『角川映画』というものに立ち返ったときに、出版社が作っている映画でありながら“原作を解体している”ということに気づいたんです」と監督は言う。「『Wの悲劇』ですと、原作の話は映画の中の舞台作として登場しました。『金田一耕助の冒険』は、未完の原作の結末を映画で描こうとしました。それに『野生の証明』は、ずっと原作通りの人間群像が続くのですが、終盤では主人公たちが戦車に囲まれるという、アメリカでロケしたスケールの大きな映像に変わっていくんです」。
この点に気づいたことが、監督が「角川らしい」と称するメタフィクション構造、つまり「ライヴ」という原作をそのまま映画にするのではなく、“家族を拉致されてデスマラソンに挑む出場者たちがレース攻略に活用するキーアイテムとして、『ライヴ』の文庫本そのものが登場する”という出色のアイデアへと結実するのだ。
主人公の名前と家族を救うためのデスレースという設定は踏襲しながらも、映画は「海賊戦隊ゴーカイジャー」の山田裕貴、「あまちゃん」の大野いと、「カノジョは嘘を愛しすぎてる」の森永悠希が演じる3人の若者を中心とした群像劇。アクション、お色気、スプラッターという、井口作品ならではのテイストも満載だ。なかでも、入来茉里扮する少女が武器を手に取ったことで狂気にかられ、殺りくを繰り返すアクションシーンは見どころのひとつ。「ひょう変していくものは、映画のカタルシスだと思っています」と監督も胸を張る。監督による約300人のオーディションから選ばれた森田涼花、佐々木心音ら若手女優、村杉蝉之介、津田寛治、諏訪太朗、生稲晃子、志垣太郎といったキャスティングにも注目だ。
「先が読めない面白さ、大人が面白がれる“山田悠介”映画として、ベストを尽くせたと思います。映画館に行って映画を見るという体験の楽しさを教えてくれた角川映画へのオマージュも入れていますから、いくつ見つけられるかも楽しんでほしいです」
「ライヴ」は、5月10日から全国公開。
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