Wの悲劇

劇場公開日:

解説

女優をめざす若い劇団の研究生が、ある事件に巻き込まれて主役を演じ、本当の女優になっていく姿を描く。夏樹静子原作の同名小説を、本篇の中の舞台劇におりこみ、「湯殿山麓呪い村」の荒井晴彦と「野菊の墓」の澤井信一郎が共同で脚本を執筆。監督は澤井信一郎、撮影は「愛情物語」の仙元誠三がそれぞれ担当。

1984年製作/108分/日本
原題:The Tragedy of "W"
配給:東映

ストーリー

劇団「海」の研究生・三田静香は、女優としての幅を広げるため、先輩の五代淳と一晩過ごした。翌朝彼女は、不動産屋に勤める森口昭夫という青年と知り合う。「海」の次回作公演が、本格的なミステリーに加え、女性であるがゆえの悲劇を描いた『Wの悲劇』と決定した。キャストに、羽鳥翔、五代淳と劇団の二枚看板を揃え、演出は鬼才で知られる安部幸雄である。そして、事件全体の鍵を握る女子大生・和辻摩子役は、劇団の研究生の中からオーディションによって選ぶことになった。オーディション当日、静香の親友・宮下君子は、芝居の最中に流産しかかり病院にかつぎ込まれた。子供を産むと決心した彼女を見て、静香は自分の生き方は違うと思う。摩子役は、菊地かおりに決定した。静香には、セリフが一言しかない女中役と、プロンプターの役割が与えられた。意気消沈して帰宅した彼女のもとに花束を抱えて昭夫がやって来た。静香がオーディションに受かるものと信じて祝福に来たのだ。彼の楽観さにヒステリーを起こす静香だったが、結局、二人は飲みに行き、その晩、静香は昭夫の部屋に泊まった。翌朝から、彼女は気分を切り変え、全員の台詞を頭に入れ、かおりの稽古を手伝うなど積極的に動く。一方、昭夫は静香に結婚を申し込むが、静香は女優への夢を捨てる気になれなかった。大阪公演の初日の幕があがった。舞台がはねた後、一人舞台に立つ静香を見た翔は、声をかけ小遣いを渡す。彼女にも静香と同じ時期があったのだ。その夜、お礼に翔の部屋を訪ねた静香は、ショッキングな事件に巻きこまれる。翔の十数年来のパトロン・堂原良造が、彼女の部屋で突然死んでしまったというのである。このスキャンダルで自分の女優生命も終わりかと絶望的になっていた翔は、静香に自分の身代りになってくれ、もし引き受けてくれたら摩子の役をあげると言い出す。最初は首を横に振っていた静香だったが、「舞台に立ちたくないの!」という一言で、引き受けてしまった。執拗なマスコミの追求も、静香はパトロンを失った劇団研究生という役を演じて乗り切った。翔は、かおりとの芝居の呼吸が合わない、と強引に彼女を降ろし、東京公演から静香に摩子役を与えた。静香の前に、事件のことを知った昭夫が現われた。「説明しろ」と詰めよる彼に静香は一言もなかった。東京公演。舞台袖で震えていた静香に、翔の叱咤が飛ぶ。静香の初舞台は、大成功をおさめた。幕が降りた後も鳴りやまぬ拍手と、何度も繰り返されるカーテン・コールが女優誕生を祝していた。客席の最後列では、精一杯拍手を送る昭夫の姿もあった。劇場を出た静香は、レポーターに囲まれるが、昭夫の姿を見つけ駆けよろうとする。そこに、事件の真相を知ったかおりがナイフを手に現われ、静香めがけて飛びこんできた。静香をかばい刺された昭夫は、救急車で運ばれた。数日後、引越しをするためアパートを出た静香は、昭夫に連れられてきた空家に立ち寄る。そこには昭夫がいた。もう一度二人でやり直そうという彼に、静香は、そうしたいけど今のボロボロの私よりもっと駄目になってしまうと言う。そして、芝居を続け、ちゃんと自分の人生を生きていくために一人でやり直すからと、涙をこぼしながら微笑んで去って行った。

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スタッフ・キャスト

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受賞歴

第9回 日本アカデミー賞(1986年)

受賞

監督賞 澤井信一郎
助演女優賞 三田佳子

ノミネート

作品賞  
脚本賞 荒井晴彦
脚本賞 澤井信一郎
主演女優賞 薬師丸ひろ子

第8回 日本アカデミー賞(1985年)

ノミネート

話題賞 作品部門/俳優部門  
話題賞 作品部門/俳優部門 薬師丸ひろ子
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映画レビュー

4.0これが映画だ。

2022年7月7日
iPhoneアプリから投稿

何度見たか。
劇中劇の娘、を演る劇団練習生、を演る薬師丸、という三重構造を毎度楽しむ。
大女優を地で行き図太くか細く演る三田佳子(邦画史上の事件級の激演)、
濃密な脚本と演出、
これら全てが人気絶頂で未だ伸び代ある薬師丸を魅せる一点に注がれた映画的幸福。
これが映画だ。

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きねまっきい

2.0悪くはない

aaaaaaaaさん
2022年3月31日
PCから投稿

もう少し驚きのある展開があれば嬉しかった。

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aaaaaaaa

4.0演じる者の悲劇

因果さん
2022年3月4日
iPhoneアプリから投稿

劇団「海」研究生の静香はある不安を抱えている。現実世界でどれだけ衝撃的なできごとがあっても、それを反射的に悲しんだり怒ったりするより先に、そこにおいてありうべき振る舞いを冷徹に判断する「もうひとりの自分」が現出する、という不安だ。

たとえば飼っていた犬が死んだとして、涙を流すことより先に「ここで涙を流せたら素晴らしいだろうな」という打算が頭をよぎってしまう感じ。フィクションに多少なり携わったことのある人だったらこの感覚はすごくわかるんじゃないか。

しかしここでの「素晴らしい」の主語は観客、つまり他者に他ならない。何をやっても常に他者存在というノイズに邪魔をされ、自分ごとを自分ごととして純粋に引き受けられないのだ。このような自分自身の審級より他者の審級が優先される状態が続けば、当然ながら自分の言葉や行為からは重みが抜けていく。

何かを真に迫って演じる、という演劇の世界で生きる静香にとってそれは絶望そのものだろう。何を演じても重みが生まれないのだから。

静香は公演『Wの悲劇』で一介の女中役を務めていたのだが、先輩女優の不倫スキャンダルを肩代わりしたことで主演女優の座を譲ってもらう。

記者会見の折、静香は先輩女優の不倫相手である大物経営者との関係をマスコミに問い詰められる。しかし静香は物怖じせず、大物経営者との存在しない思い出を情感豊かに語ってみせる。底意地の悪いマスコミの面々も、彼女の鬼気迫る語りに圧倒されてしまう。

後日、彼女を主演に据えた『Wの悲劇』が上演され、公演は大喝采の中に幕を閉じた。しかし直後、先輩女優の思惑によって主演を罷免された女がマスコミの前で全ての真相を暴露してしまう。静香はやっとのことでしがみついたスターダムから再び転げ落ちてしまう。

それでも静香は演劇をやめなかった。ラストシーンで彼女は自分に好意を寄せる男のことを潔くフった。「男の庇護下に入る」という退路を自ら絶ってみせた。

演じることによってかえって演技にリアリティがなくなるという不安。それを静香は「逃避」ではなく「包摂」によって解決しようとした。つまり自分の演技にはリアリティがないことを引き受けたうえで、なおも演劇の世界で生きていくことを決断したのだ。

正直言ってこれはかなり見込みのない選択だ。絶望と手を取りながら前に進んでいくというのはどう考えたって辛く苦しいし、演劇の世界もまたそのような個人的事情を鑑みてくれるほど甘くはない。終盤で静香が天井に貼り付けた『Wの悲劇』のポスターを剥がそうと何度も何度もジャンプするシーンは、芸能界の厳しさを暗示している。

しかしその一方で、静香が嘘の愛人を演じることでマスコミに一泡吹かせたり、『Wの悲劇』の主演を務めて拍手喝采を浴びたりしたことは紛れもない事実だ。「もうひとりの自分」を抱えながら演技に生きることは、必ずしも辛く苦しいばかりではない。

華々しい世界の舞台裏的リアリズムを鬱々と描き出しつつも、同時に一縷の希望を敷設する脚本の優しさに感動した。

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因果

4.0中毒性のある人

2021年11月20日
iPhoneアプリから投稿

ドラマチックで意外性があってこの裏切りはとても好きな感じで、ほんと楽しめました。

薬師丸ひろ子さん可愛い。そ、あの喋り方が声が癖になるゎ〜

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大粒 まろん
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