アイダよ、何処へ?

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劇場公開日:

アイダよ、何処へ?

解説

「サラエボの花」でベルリン国際映画祭金熊賞を受賞したヤスミラ・ジュバニッチ監督が、1995年、ボスニア・ヘルツェゴビナ紛争の中で起きた大量虐殺事件「スレブレニツァの虐殺」の全貌と、その中で家族を守ろうとした一人の女性の姿を描いたヒューマンドラマ。国連平和維持軍の通訳として働く女性を主人公に、家族を守るため奔走する彼女の姿を通して、事件当時に何が起こっていたのか、虐殺事件の真相を描き出す。1995年、夏。ボスニア・ヘルツェゴビナの町、スレブレニツァがセルビア人勢力によって占拠され、2万5000人に及ぶ町の住人たちが保護を求めて国連基地に集まってくる。一方、国連平和維持軍で通訳として働くアイダは、交渉の中である重要な情報を得る。セルビア人勢力の動きがエスカレートし、基地までも占拠しようとする中、アイダは逃げてきた人々や、その中にいる夫や息子たちを守ろうとするが……。第77回ベネチア国際映画祭のコンペティション部門出品。第93回アカデミー国際長編映画賞ノミネート。

2020年製作/101分/PG12/ボスニア・ヘルツェゴビナ・オーストリア・ルーマニア・オランダ・ドイツ・ポーランド・フランス・ノルウェー合作
原題または英題:Quo vadis, Aida?
配給:アルバトロス・フィルム
劇場公開日:2021年9月17日

スタッフ・キャスト

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受賞歴

第93回 アカデミー賞(2021年)

ノミネート

国際長編映画賞  

第77回 ベネチア国際映画祭(2020年)

出品

コンペティション部門 出品作品 ヤスミラ・ジュバニッチ
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(C)2020 Deblokada / coop99 filmproduktion / Digital Cube / N279 / Razor Film / ExtremeEmotions / Indie Prod / Tordenfilm / TRT / ZDF arte

映画レビュー

5.0主演の力強い目

2021年10月30日
PCから投稿
鑑賞方法:映画館

『サラエボの花』という素晴らしい映画を撮ったヤスミラ・ジュバニッチ監督の新作は、紛争で引き裂かれる家族を守ろうとする1人の女性の痛切な叫びを描いている。ボスニア紛争で2万人の難民が出てしまう。国連の用意した避難所には一部の難民しか入れない。セルビア軍が市民を無差別に殺しているという情報もある中、国連通訳のアイダは、家族を守るためにあらゆる策を講じる。 しかし、国連とセルビア軍との「合意」が事態を複雑化させ、虐殺のきっかけとなってしまう。後半、緊迫の脱出劇は生きた心地がしないほどのリアリティを観客に与える。どこにセルビア軍が待ち構えているかわからない中、抜け出す道を必死に家族とともに探す。 主人公アイダを演じたヤスナ・ジュリチッチの目力が素晴らしい。絶望に打ちひしがれても、意志の強さが失われないようなその目の力に大変な感銘を受けた。

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杉本穂高

4.0通訳=“橋渡しをする人”という主人公の設定の巧みさ

2021年9月17日
PCから投稿
鑑賞方法:試写会

悲しい

興奮

日本が阪神大震災とオウム地下鉄サリン事件で揺れた1995年、欧州ボスニア・ヘルツェゴビナの町スレブレニツァでは、紛争のさなかに8000人もの罪なき住民が虐殺される事件が起きた。本作はこの“スレブレニツァの虐殺”を題材にしているが、国連平和維持軍の通訳として働くようになった現地の女性、アイダという架空の人物を主人公に据えることで、事件のいきさつを的確に示しつつ観客に当事者のような感覚をもたらすことに成功している。 夫と2人の息子がいるアイダは、紛争の前はこの町で教師をしていた。映画冒頭、事件の前段階の状況が駆け足で語られるが、予備知識がないと若干わかりにくいかもしれない。 紛争ではセルビア人、クロアチア人、そしてムスリムのボシュニャク人の3勢力が争っており、スレブレニツァはボシュニャク人勢力の拠点だった。この町で1992年にムスリム武装勢力がセルビア人約1200人を殺害する事件が起き、セルビア側はスレブレニツァを包囲。1993年に国連がスレブレニツァを「安全地帯」に指定して攻撃を禁じ、平和維持軍の基地も設ける。しかしセルビア勢力が国連側の通告を無視して町に侵攻したことで、住民2万5000人が保護を求めて国連基地に押し寄せる…と、ここまでが前段階。 アイダは国連軍のリーダーらに付き添い、両勢力の交渉の場や、軍が住民らに状況を説明する場でボスニア語と英語を通訳する。物資に限りのある基地には数百人ほどの住民しか保護されないが、アイダは夫をセルビア側との交渉役にすることで、息子2人もどうにか基地の中に入れることができた。観客はアイダの視点を通じてことの推移を見守ることになり、国連側の弱腰な姿勢や、セルビア側の威圧的な言動、そして無力な家族や住民たちの不安を目の当たりにする。アイダは異なる立場の人々の橋渡しとして献身的に働きながら、大切な家族を守ろうとするのだが…。 昨日まで隣人同士だった人々が、民族や宗教やイデオロギーを理由に互いを攻撃し殺しあう内戦や紛争の不条理さは、主に2つの場面で印象的に描かれている。最初は、ゲート近くにいたアイダが、外の若いセルビア兵から「先生」と呼びかけられる場面。昔の教え子がにこやかに、さりげなく家族の居所を尋ねてくるのが地味に怖い。もうひとつは、終戦後何年もたってからアイダが教師に復職し、生徒たちの学芸会の舞台を見ているラスト。客席では、敵部隊の隊長だった男も父親の顔でほほえむ。このラストをどう受け止めるかは、観客ひとりひとりに委ねられている。そこにはきっと、いつまでも終わらない民族や宗教の対立から生まれる悲劇について、自分がその立場ならどう感じるか、どう行動するかを考えてほしいという作り手の願いが込められているのだろう。

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高森 郁哉

4.5受け止め、語り継ぐべき渾身の一作

2021年9月16日
PCから投稿

ボスニア紛争のさなかで起こったジェノサイドを描いた物語である。恥ずかしながら私はこの事実を知らずに生きてきた。25年前にこれほどの殺戮が行われたなんて、筆舌尽くしがたいとはまさにこのこと。ただし、本作は人が殺し、殺されゆく場面そのものを直接的に見せる作品ではない(それゆえ何が起こっているのかわからない恐ろしさがあるのだが)。むしろ国連軍の女性通訳者アイダの目線を借りて、その”経緯”を紡いでいく。セルビア人勢力によって制圧された街。助けを求めて国連施設へなだれ込む市民。そこへやってくるセルビア兵士。この状況に何ら手を打てない国連軍兵士達・・・。施設内を奔走するアイダの鬼気迫る表情と、キッと鋭い目線が胸に突き刺さる。演じるジュリチッチも相当な覚悟で事実と向き合い、役に身を投じたに違いない。「この悲劇を世界へ伝えたい」という魂の叫びをしっかり受け止めるべき一作。語り継がれるべき渾身の一作である。

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牛津厚信

4.5A Movie to Destroy Your Happiness

2021年8月17日
PCから投稿
鑑賞方法:試写会

In looking at dreadful moments in European history, it's interesting that the Balkans' 90's conflicts are overlooked by cinema. Quo Vadis, Aida? (good luck remembering that title if you haven't studied Latin) might be the first drama I have seen about the Bosnian War. It's the cousin to Hotel Rwanda, portraying the UN's shortcomings in solving humanitarian crises at the time. A must-watch for all.

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Dan Knighton