劇場公開日 2021年9月17日

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「受け止め、語り継ぐべき渾身の一作」アイダよ、何処へ? 牛津厚信さんの映画レビュー(感想・評価)

4.5受け止め、語り継ぐべき渾身の一作

2021年9月16日
PCから投稿

ボスニア紛争のさなかで起こったジェノサイドを描いた物語である。恥ずかしながら私はこの事実を知らずに生きてきた。25年前にこれほどの殺戮が行われたなんて、筆舌尽くしがたいとはまさにこのこと。ただし、本作は人が殺し、殺されゆく場面そのものを直接的に見せる作品ではない(それゆえ何が起こっているのかわからない恐ろしさがあるのだが)。むしろ国連軍の女性通訳者アイダの目線を借りて、その”経緯”を紡いでいく。セルビア人勢力によって制圧された街。助けを求めて国連施設へなだれ込む市民。そこへやってくるセルビア兵士。この状況に何ら手を打てない国連軍兵士達・・・。施設内を奔走するアイダの鬼気迫る表情と、キッと鋭い目線が胸に突き刺さる。演じるジュリチッチも相当な覚悟で事実と向き合い、役に身を投じたに違いない。「この悲劇を世界へ伝えたい」という魂の叫びをしっかり受け止めるべき一作。語り継がれるべき渾身の一作である。

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牛津厚信