劇場公開日 2021年9月17日

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「主演の力強い目」アイダよ、何処へ? 杉本穂高さんの映画レビュー(感想・評価)

5.0主演の力強い目

2021年10月30日
PCから投稿
鑑賞方法:映画館

『サラエボの花』という素晴らしい映画を撮ったヤスミラ・ジュバニッチ監督の新作は、紛争で引き裂かれる家族を守ろうとする1人の女性の痛切な叫びを描いている。ボスニア紛争で2万人の難民が出てしまう。国連の用意した避難所には一部の難民しか入れない。セルビア軍が市民を無差別に殺しているという情報もある中、国連通訳のアイダは、家族を守るためにあらゆる策を講じる。
しかし、国連とセルビア軍との「合意」が事態を複雑化させ、虐殺のきっかけとなってしまう。後半、緊迫の脱出劇は生きた心地がしないほどのリアリティを観客に与える。どこにセルビア軍が待ち構えているかわからない中、抜け出す道を必死に家族とともに探す。
主人公アイダを演じたヤスナ・ジュリチッチの目力が素晴らしい。絶望に打ちひしがれても、意志の強さが失われないようなその目の力に大変な感銘を受けた。

杉本穂高