ヤクザと家族 The Familyのレビュー・感想・評価
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まともに生きてはいけないのか
ヤクザ映画でしたが
ストーリーが本当にしっかりしていて
ややこしくなく、見れる作品でした。
主人公綾野剛は、まだ子供の頃に
親分に拾われて生きてました。
本当の家族のように。
けどヤクザは真っ当に生きてはいけないのですね。
構成しようとしてもつきまとうヤクザという肩書き。
最後は慕ってくれていたはずの
後輩に刺されて死んでしまいます。
人それぞれの想いとかをちゃんと
見せてくれているので綾野剛以外の感情も
わかる作品だから、感情が忙しかったです。
ラストシーンで『少しはなそっか』と
泣き笑いながら言うところは、胸が痛みましたね。
人間、人情、人ってなんですかね。
複雑ですね。
見て良かった作品でした。
舘ひろしさんの演技力の凄さを
改めて見ることができました。
出てくる人たちみんな演技がうまかったので
どんどん入り込めました。
市原隼人さん久しぶりに見ましたが
カッコ良かったです。
親父から賢治へ、賢治から新たな世代へ、魅了し続ける漢たちのヤクザと家族の物語
今年の1月~2月に公開された邦画の中で特に観たかったのが、本作と『すばらしき世界』。
なので、早めの配信リリースしてくれたNetflix、ありがとー!\(^^)/
本当は配信日に即見たかったのだが、仕事の都合もあったので、休日の今日、ゆっくり、ワクワクしながら。
率直な感想を。
いやもうこれ、傑作でしょ。面白い!
タイトルだけ見ればゴリゴリのヤクザ映画のように思えるが、そこに家族のような絆で結ばれていく男たちのドラマ。
その周りの者たち。
1999年、2005年、2019年、20年に及ぶ3つの時代の波が彼らを呑み込んでいく…。
もう最初の20分(99年パート)だけでヤラれた。
その日暮らし、自暴自棄に生きる青年、賢治。
ある時、柴咲組組長・柴咲の命を救う。
その後、あるヤクザと揉め、絶体絶命に陥っていた賢治を、柴咲が救う。
実父を覚醒剤で亡くした賢治。父親に対して憎しみにも似た複雑な感情。
“ケン坊”と愛称で呼び、優しい眼差しで孤独な青年に手を差し伸べる。父親として。
抑えていた感情を堪え切れず、泣く賢治。
賢治はヤクザの世界へ。柴咲と父子の契りを結ぶ。
ここでメインタイトル、『ヤクザと家族』。
巧い!
柴咲は昔ながらのヤクザ。(決して堅気の人には迷惑はかけない)
賢治を気に入ったのは、荒々しいけどその漢気ではなかろうか。
99年時代、柴咲らを前にしても臆する事無く、「ヤクザになんかならねぇ」。揉めたヤクザらに対しても、「柴咲なんか関係ねぇ」。
そして2005年パートのラストになるが、“家族”の為にある決断を下す。
ただのチンピラ同然から柴咲に育てられ、いっぱしの男に。舎弟も付き、組の中でのし上がっていく。
綾野剛がさすがさすがの名演。時代ごとに見事な演じ分け。哀愁も漂わせながら、その漢気っぷりにも惚れ惚れ。
刑事を引退して、ヤクザへ? 舘ひろしが優しさと人間味たっぷりに、素の本人のよう。そこに渋さとカッコ良さ、そして敵対ヤクザに舐められた時に発した凄みにしびれた! 舘ひろしにとってもここ近年ではBEST!
周りも個性派揃い。助演で圧倒的存在感を放つのが舘ひろしなら、巧演者は北村有起哉。組の若頭で、柴咲に可愛がられている賢治に嫉妬。かと思えば泣かせるシーンあり、哀しいシーンあり。
賢治の舎弟、市原隼人も良かった。
敵対ヤクザの豊原功補、駿河太郎、マル暴刑事の岩松了は憎々しく。
漢たちの世界に女は付き物。ヒロインは尾野真千子。賢治と恋に落ちる由香。ヤクザの男に惚れるからその筋の女かと思いきや、真面目に生きる普通の女性。それがまた哀しい。ヤクザの世界で生きる男と真っ当に生きる女性…。決して幸せになれない事は分かり切っている。
もう一人、存在感を発揮したあっと驚く人物が。これは後ほど。
2005年は賢治にとっては最も充実していた時期だったかもしれない。
組も安定。
親父からの信頼も厚く。
自分のシノギも上々。
女も出来。
全ては、親父に出会えたから。親父が全てを与えてくれた。
だから、親父の身に何かあったら俺が死んでも守る。
それは急襲だった。
親父は無傷だったものの、自分は負傷。舎弟の一人が犠牲に。
畜生…!
実は、こんなせいになったのも、全て自分のせい。
この少し前、敵対ヤクザと揉め事。それが偶々、昔揉めて因縁あったヤクザ。ここで暴力沙汰。
親父がわざわざ相手側と会って穏便に済ませようとするが…、決裂。
そのせいで親父は狙われた。
さらに、敵対ヤクザとマル暴刑事は結託している。
復讐は勿論、例え相手が挑発してきても手出しする事が出来ない。
時代は大きく変わった。もし、昔ながらのやり方を貫き通したら…?
法や警察だけじゃない。この社会からも徹底的に疎外される。
ヤクザがどんどん生きづらくなったこの社会…。
それでも、俺は…。
傷の癒えぬ身体で敵対ヤクザの元へ向かう賢治。
因縁あるアイツ。
しかしその時、思わぬ人物が!
“家族”を守る為、賢治は代わりとなってある決断をする。
賢治も親父も、彼らを取り巻く者たちも何を思ったか。
身代わり、愛する人との別れ。
親父の言動が忘れられない…「この親不孝もんが」と言って、初めて殴るのかと思ったが、抱き締める。“息子”との暫しの別れを惜しむように。
そして賢治は…くどくど語る必要もないだろう。彼の表情一つ、佇まい一つがそれを表している。
14年が経ち、出所。
2019年(令和元年)となり、浦島太郎の如く時代はさらに大きく変わっていた。
法も文化も何もかも。
ヤクザは勿論いるが、“昔ながら”のヤクザは片身が狭く。
14年ぶりに叩いた組を見て、賢治は愕然とする。
変わり果て、“辛うじてやっていってる”という言葉がぴったりなくらい今にも潰れそうも同然。
組員も親父と苦楽を共にしてきた幹部のみ。舎弟も足を洗った。
親父との再会。何処か弱々しい親父。実は、数年前に癌が見つかり、転移も。
シャバに出てきて、また“家族”と暮らせるのはいいが、これからどう生きていったらいいのか…?
久し振りに元舎弟と会う。また、かつて愛した由香とも再会する。が、厳しい言葉が投げ掛けられる。この時代、未だヤクザとしても生きる者への現実…。
同じヤクザはヤクザでも、上手くやってるのが時代の波に乗ったヤクザ。
言うまでもなく、敵対ヤクザ。
義理や人情や仁義などそんなくだらねぇもんはクソ溜めに棄て、金、シャブ、時代の欲するもので私腹を肥やす。
勿論、マル暴刑事とバッチリ手組み。
結局世の中裏で、こういう奴らがのさばるんだよなぁ…。
しかしここに、新たな世代が。
賢治がチンピラ時代から食わして貰ってた食堂の女主人(寺島しのぶも好助演)の息子、翼。
小さい頃はあんなに可愛く、勉強熱心だったのに、14年ぶりに再会したら、驚いた!
街の一角を仕切る若者集団のリーダー。裏社会の格闘技やナイトクラブで稼ぎもかなり。
演じた磯村勇斗がなかなか印象残す。
実は彼の父親は元柴咲組の組員。殺したのは敵対ヤクザ。
ある時敵対ヤクザから、稼ぎの良さから誘いを受ける。
拒否。その時、父親がコイツらに殺された事を察する。
一触即発に…。
親父が入院。
賢治が見舞う。
自分が癌転移した時点で、組解散を考えた事もあったという。
しかしそうしなかったのは、ヤクザの世界でしか生きられない“家族”の為。
でも、ケン坊、お前ならまだやり直せる。組を抜けろ。
きっと親父もこれを切り出すのは辛かっただろう。可愛い息子を手放すのは。だからだ。息子の為に。
賢治の反応が意外だった。「何言ってんだよ、親父! 俺はずっと一緒に居るよ!」…なんて言わなかった。きっと賢治も悟ったのだろう。これが親父の“遺言”だと。
組を抜けた賢治は由香の元へ。
由香には“14歳”の娘がいた。
母親の昔の恋人(?)として、3人で暮らし始める。受け入れる娘もスゲェ…。
元舎弟から仕事も紹介して貰う。
“家族”を抜けて出来た新たな“家族”。
幸せな時はその文字の如く、ほんのひと時。
今はSNS社会。その情報網、拡散力は時に背筋が凍るほど。
自分の仕事場はまだしも、由香の職場や娘の学校にもあっという間に知れ渡る。
元とは言え、反社会的組織に属していた者と関わりあった人物に対し、この社会は冷たい。
まあ、分からんでもない。もし、自分の前や周りにそういう人が居たら…? ビクッとしてしまう。
一度貼られた“ヤクザ”のレッテルはもう剥がせないのか…?
再会したのも束の間。一緒にはいられない。
そんな悲しい別れが起きたのは、自分だけではなかった…。(まさかこれが、あんな最後に繋がるとは…)
いよいよ翼が敵対ヤクザへ牙を剥く。
親父が危篤状態に。最期に会った賢治に掛けた言葉は…。
各々の運命に翻弄される者たち。
そして賢治も再び、ある決断を下す…。
これは、親父から賢治へ、賢治からある人物へ、3世代の家族の物語。
『新聞記者』が絶賛された藤井道人監督。
“ヤクザ”と“家族”を見事に融合させ、素晴らしい傑作を誕生させた。
本格ヤクザ映画の雰囲気たっぷり、男たちの悲哀もたっぷり、そこに包み込むような家族映画の優しさも感じる。
映像、編集、スタイリッシュでクール、センスも抜群。見応え充分!
しかもこれをオリジナル脚本で作ったのだから、いやはや本当に素晴らしい!
現時点で藤井監督のMY BEST!
そして今年見た映画の中でもダントツBEST!
何度も興奮し、胸アツ激アツ、ウルッとさせられたか!
劇中でのヤクザたちの末路は哀しい。
でも、今年の邦画の世界では!
本作があり、『孤狼の血2』もある!
まだまだヤクザたちが漢を魅せる!
山本が人として命をかけて残したかった物
凄い心抉る作品…
これぞリアル。
最近、やくざや悪が美化されているような作品が多いがあれはやっぱりファンタジー。嘘物。
家族って、絆って脆くて美しいという普遍的な物語に凄い考えさせられたし感動しました。
人の道から外れた代償に何もなも失った山本が最後まで守りたかった唯一の物は、義理と人情なんだと思う。見た目が反社っぽいオレオレ詐欺とかやってそうな翼だが、幼いころに優しくしてくれた山本の影響もあり義理人情は重んじる青年になった。そんな真っ直ぐな心だからこそ自分の父親を殺されたことが純粋に許せなかったのだろう。
山本はそんな綺麗な心を持つ翼を過去の負の遺産からなんとか守りたかったのだろうと思った。
綾野剛はやっぱいいね〜 後半の演出がちと分かりにくい
今年1月に上映したばかりの綾野剛の「ヤクザと家族」がこれまたもうNetflixで配信!!この前の「ホムンクルス」はイマイチだったがこれはなかなかおもろかった!!
綾野剛やっぱ上手いなあ!ずーっと見ていたい!味がある俳優!見てるだけで飽きない俳優とか高倉健以来だ!!
冒頭は金髪の綾野剛でモロに「新宿スワン」で引き込まれるぐらいおもろい!
舘ひろし組長に向かって敵がいきなりバイクから撃ってきたり中盤までこんな凄い映画いつあったん?ってぐらいめちゃくちゃおもろい!
後半どおした?なんか作りが下手!
磯村演じる翼がバット持って襲撃に行ってたからバットで刑事と敵のボス殴ったのは翼かと思ったじゃん!あれ綾野剛だったのか!服は違うけど後ろ姿だけじゃ綾野剛ってわからんわ!せめてバットじゃなく別の武器なら区別ついたのに!
よーく見直してあれは翼のかわりに綾野剛が襲撃したってことだったのか!ってわかったw
なんで後ろ姿だけだったんかなあ
最後の最後で復讐するシーンなんだから綾野剛正面から写してじっくり見せてくれりゃいいのにwもったいない
そして他の方のレビューでもあったが最後刺したのがなぜ市原隼人w
彼も元ヤクザなわけでそうはならんやろw
衝撃な展開ではあるし綾野剛もお前が刺してくれてよかったみたいに嬉しそうに死んでいったからいいかんじの幕にはなってるがね〜
なんで彼が殺す?て思った人多そう!
翼役の磯村もほんとめちゃくちゃ上手かったし最後の襲撃が綾野剛に見えなかったのと市原隼人が刺したってのが謎の演出だったなあ
しっかり綾野剛がバットで殴ってるシーンを思いっきり見せてくれて最後は敵のザコかなんかに刺されて虚しく死ぬほうが傑作になってたなあ
全体的にはめちゃくちゃおもろい韓国のヤクザものに匹敵するぐらいハマる映画ではある!
やくざと言うカテゴリーが無くなる日来るようで来ないような感じ
タイトルなし(ネタバレ)
前半のヤクザ映画にありがちな展開でそのまま終わるのかと思いきや、後半は暴対法以後のヤクザの生き方の難しさを描きつつ、カタギになろうとした主人公と家族らが無神経なSNSの投稿で広まった噂によって世間から排除されるなど今時でした。
しかし、もう一つ心に突き刺さる何かが足りない…
綾野剛は刹那的な役やらせたらうまいな。
相手役の尾野真知子はそんな主人公を支える役がうまくて魅せます。
ただのヤクザ映画ではなかった
この映画は、ヤクザというものが時代の中でどう変わってきたかを、ひとりのヤクザの目を通して見事に表現されている。この男は、ヤクザになるしかないような生い立ちでヤクザになることで家族をえたのだ。あったかくて仲間や家族思いの真っ直ぐな男は、時代とともに生きづらくなっていった。周りが変わっても自分は変わらないからこそ、浮き彫りになる様々な現実。どんなに戻ろうとしても簡単には戻れない大きな壁があった。ヤクザの話なのになんだか可哀想になってしまった。家族のために刑務所に入り、人を殺し、刺されても穏やかに相手を抱きしめるのだ。
そして最後のシーンが一番好きだ。
彼の生きた証はたしかにあった。彼の思いもちゃんと繋が
っていた。磯村勇斗がいい表情だった。
身につまされる!
日本が先進国として悪を排除しようとする現実とヤクザが必要悪から、ひたすら金を求める犯罪集団と成って行った時代が重なった事による更正の道を残さないままひたすら暴力団排除に走る社会を上手く描いている作品。
ヤクザは「一家」、マフィアは「ファミリー」、、、疑似家族なのだなぁ。
藤井道人がまた傑作を産み出した。
しかも、オリジナル脚本だという。
まだ30代ですよ、この監督。
ヤクザの世界に身を置くしかなかった男が、反社会的勢力排除へ大きく動いた時代のうねりに翻弄される姿を、三つの時点の断面で描いている。
開巻直後、主人公(綾野剛)が父親の葬儀会場に入るまでのダイナミックな長回しカットで、観客の集中力を一気に高めさせる。
主演綾野剛のバイオレンスは板についていきた感じだ。元々哀愁を感じさせる佇まいを持っているから、この役に見事にはまっていた。
主人公は不良少年からヤクザへと、映画の前半で大きく変わっていく。
周囲のキャラクターたちは主人公が刑期を終えて出所する前後、映画の後半部分で変化する。
親分の舘ひろしは勢力を失って萎縮した姿を晒す。
恋人だった尾野真千子は娘との生活を守ることに必死な母親となって、綾野剛と訣別する。
兄貴分の北村有起哉はヤクザの正義を捨てて落ちていく。
達者な役者たちが、時代の変化のなかでもがく様をそれぞれの持ち味で演じている。
中でも一番印象に残ったのは市原隼人だ。
彼が演じる元舎弟が世間の風当たりに耐え続けた何年間かは描かれていないが、奥歯を噛みしめるようにして発する台詞でその過酷さが想像できる。
だからこそ、映画終盤の彼の凶行に同情してしまうのだ。
反社の世界に身を染めていく若者たちは、皆がみんな喧嘩好きの乱暴者ではない。生まれながらに乱暴な性格の者もいるだろうが、人生の大半は「環境」で決まるのだと思う。
ヤク中だったと思われる主人公の父親について詳しくは説明されないので、親から何を受け継いだのかは分からないが、行きつけのホルモン焼き屋でヤクザ同士の抗争劇が巻き起こるような環境に生活している主人公がヤクザ一家に疑似家族を求めたことも、そのホルモン焼き屋の息子(磯村勇斗)が成長して半グレのリーダーになってしまったことも、生活環境が強く影響しただろうと思った。
さて、エンディングは世代交代を示しているようで、歴史は繰り返す的な無限ループを匂わせているようでもあった。
幸せな出会いの予感を持たせつつも、その行き先には不幸が待っているに違いないと、私の老婆心が叫んでいる。
実は身近な存在だったりする
切ないお話でした。
最初、綾野剛さん演じる山本賢治が1999年の時点でいったい何歳なのか分からず、少し戸惑いましたが(10代なのだろうと推測出来ましたが、例えば14歳と19歳では印象がだいぶ違いますからね。結局、17歳だったみたいですが…)10代から30代後半まで綾野剛さん、見事に演じられていましたね。
役柄も含めると綾野剛さんくらいしか演じられなかったでしょうね。
そして、柴咲組組長を演じられた舘ひろしさん。
多分ですが、舘ひろしさん、きっと実際も凄く良い方なんでしょうね。
そのせいなのかヤクザの組長にしては怖さは少し欠けているような気もしましたが、人間的にとても魅力的で包容力も有りそうで、あのような組長さんだったら、ついて行こうという気にもなりますよね。
北村有起哉さんや磯村勇斗さんなど脇を固める役者さんも良かったですね。
終わり方を含めストーリーも良かったですし、変に時系列を弄ったりしてないのも好印象でした。
欲を言えば賢治も柴咲組も一番勢いのあった2005年のお話をもう少し長く、あと刑務所に収監されている時も少しでも良かったので観てみたかったです。
粗がないわけではありませんが、全体的に見て良く出来た作品だと思います。
契りからムショ 出所後の生活を描いた異色のヤグザ物語
すごい……(末尾に、最近の心境もあり)
ひとりの男の人生を追うことで、現在のヤクザとその家族を取り囲む過酷な状況を伝える映画。
すごいなあ、こんな黄昏れたやくざ映画って、撮れるんだ・・・
1999年から始まり、2005年(6年後)を経由して、2019年(14年後)で幕となる。
それぞれ、① ヤクザになるきっかけ、② 刑務所に入ることになる原因、③ 刑務所を出てからの生活。
前半は、各シーンを黒っぽくそして青っぽく撮っている。これが、前半のバイオレンスでソリッドなストーリーにぴったりあてはまる。
一転、後半は、各シーンをくすんだ白熱灯のような色で撮っている。この対比は、もう見事としか言えない。
ヤクザを囲む過酷な状況が悪いとか可哀想とか思うことは、俺にも、ない。彼らは反社会的勢力なのだから。
そして作中でも言われるように、「世の中全部が、ヤクザを排除するようになっている」 のだから。
ただ、"ちょうどその時期にあたったひとりのヤクザ" の人間としての悲劇は知っておくべきだし、さらに、ヤクザの家族に対して俺たちはどう対応するべきなのか、いろいろなことを考えさせられる映画だ。ここは、詳しく書くよりも観てほしい・・かな。
ラストシーンは俺にめちゃくちゃ響いたなあ。この話に、こういう終わらせ方があったのか!? 凄い!!!
おまけ
綾野さん、小野さん、上手い。まあ、ふたりが上手いのは今さら言うまでもないことだが、特に小野さんは、こういう役に絶対的な強さをもっている気がする。はまり役というか。
そして舘さんの前半後半の変化は、みんな是非観た方がいいですよ。これも見事と思う。前半と後半で2本の映画だと思えば、136分という時間も短いとわかります。
へええ。藤井監督って、「新聞記者」で「宇宙でいちばんあかるい屋根」で、そして本作なんだね。この幅広さって、すごいね。おお、隠れた名作「青の帰り道」も藤井監督なのか。今泉監督のように "俺とウマがあう" わけじゃないけれど、注目してるべき監督であることは、間違いないなあ。
2021/4/1 追記
ある解説で読みました。抜粋して引用しておきます。
『あゝ、荒野』、『宮本から君へ』、『MOTHER マザー』。いま日本で最もアブないテーマに果敢に取り込む制作会社スターサンズ。
… たしかに。どれも、諸手を挙げて好評されることはない、クセの強い映画ばかりだ。今後も注目しておこっと。
2021/6/6 追記
友人の感想が、けっこう心に響いたので、書き記しておく。と共に、評価点を3.5に下げた。
---- ここから、友人の感想 ----
タイトルになっている家族への愛。組長への愛、妻娘への愛、いずれも描写が薄くない? 優しくされたから、組長を親父と慕ったのだろうが、あまりにもあっさりした描写だけ。それはまだ許すとしても、後半。主人公は、言われたからといえ、大した葛藤の描写もないままに、組を辞める。妻娘が主人公に寄せる心も、観ているこちらが少しでも納得するような描写がない。特に娘の心は、謎。娘からみたら、"ただ災厄を運んで来た男" でしかないのに、ここも葛藤する娘という描写もないまま、「実の父親だから」という理由だけで、海に花束持って来たのか? どうしてそうなった? と疑問符が付くことばかり。主人公を、よい方に描き過ぎてるんだと思う。妻娘のエピソードは、ない方がまだましだったろう。
密漁する幹部二人も、既に、若頭が覚醒剤やってるんだから、そんなことする必要ない。
なんというか、説明不足のエピソードが、あちらこちらにとっちらかってる感じ。
---- ここまで、友人の感想 ----
上記の感想は、いずれも言われてみると、その通りだと感じる。ヤクザという許されない存在を、ひとりの人間と見ることが、この映画の主眼だろうが、そこに生じる矛盾は解決できないので、上で言われているように、"後半は、エピソードの羅列だけに終始し、少しでも納得感を呼び起こすような工夫は、行われていない" ってことなのだろうな。
観ていた勢いで、最初のレビューを書いたわけだが、今は、ちょっと、反省してます。それほど、出来がよいわけでは、なかったのかも知れない。
その後の令和のリアル『仁義なき戦い』にして、その後の令和のリアル『極道の妻たち』
まるでドキュメンタリーフィルムのような即物的なタイトルは、本作の荒涼とした殺伐感を表象しています。
不遇の幼少時代を経て社会から疎外され、世間に馴染めず非行化し狂暴化していく一般社会からの脱落者は、いつの時代も常に一定割合は居ました。彼らの受け皿となり、アンタッチャブルな暗黒の世界としてヤクザは、いわば必要悪として已むを得ず認知されてきたのでしょう。見方を変えると、本来、経済付加価値を何ら生み出さない彼らの存在を許容できるほどに、世の中に良くも悪くも無駄な負担を受容する漠然として曖昧な諦念が蔓延れた、古き“良き”時代が長く続いていた訳です。
とっくの昔に高度経済成長が終焉し、バブルが崩壊し、デフレが常態化して停滞した経済状況の一方で、ITが進化普及して社会が1mmの無駄も許さない生産性至上でのシステマティックになり、法秩序の完全運用が徹底し日本社会の、本来結構いい加減だった振幅幅が一気に狭まっていくという、ある意味で生き辛い窮屈な時代が現代でしょう。
本作は、斯様な現状を踏まえ、“ヤクザ”になった一人の若者のビフォアと窮屈な時代のアフターを、淡々と、やや若者に好意的な視点で問題提起した作品です。
いわば、その後の令和のリアル『仁義なき戦い』、であり、その後の令和のリアル『極道の妻たち』といえますが、其処には勇壮で荒々しい侠気は微塵もなく、また情熱的な恋情もなく、ただ静謐で平穏な日常生活に矯正される、逆説的ですが行き場のない悲惨で悲愴な物語が展開します。
前半の「ビフォア」では手持ちカメラにより常に画面が揺れ、何かにつけ興奮し激昂する主人公たちの荒んだ心性を的確に映しながら、ひたすら威勢のいい言動が綴られます。将に“ヤクザ”とはどういう構造かを描いています。比較的低いアングルからの仰角での寄せカットが多いのも前半の特徴で、観客に威圧的な印象を強烈に与えます。
しかし後半、主人公の刑務所出所後ではカメラはフィックスが主体のカットとなり、世間を描く映像風景がガラッと一変し、緩やかなリズムに変わります。ムショ出所時の迎えの車が、ベンツでもレクサスでもなくプリウスだったのが象徴的です。
尚、冒頭ファーストシーンは本作最高の見所です。主人公のバイクが疾走する遠景の引きからパンしながら手持ちに変わり、バイクを停めて葬儀会場に入るのをそのまま追いかけて室内まで付いていく、長回しカットは、久々の見事なエスタブリッシング・ショットです。いきなり綾野剛扮する狂暴で反抗的な主人公の視線に一気に立たされ、感情移入させる、このシーンによって観客は自然にヤクザの道を辿る若者の世界に導かれます。
どうしょうもなく救いのない映画
義理堅く真っ当な渇望の果てに
“堅気”の意味に含まれる矛盾する理屈と本作の真意を付き合わせる。道を極めると書いて「極道」…人の道とは、温かい手を差し伸べた者に対する律儀な姿勢、恩義に対する報い、人情があって然るべき生き方、それであろう。その道を進む、社会に居場所がない彼等は、ただ家族を求め、向かい入れた。その行為を罪だと断定するならば、救いの代償としては辛辣な愚行であろう。随所に滲む、綾野剛がみせる優しさに悲しみが内在する覚悟の眼差しが、連鎖する物語の悲哀を語る様に映えるのだ。これは現実に起きている歪み、法律や条例が規制する物事の歪曲された社会の素顔だ。人権を、ただ幸せを得たいと願う、その望みを根刮ぎ絶とういう社会通念こそ、正常化の元凶なのである。
綾野剛の「目」に痺れた。「ヤクザと家族」はヤクザ映画と家族映画のハイブリッドだ。
綾野剛の目がいい。
それに尽きると思う。
(あとから、同じことを舘ひろしも言っていたと知った)
題材的には、東映任侠映画を換骨奪胎して、ウェルメイドな家族映画に落とし込んだような印象。
まあ昔のヤクザ映画やVシネマは、カットや作りも荒っぽいぶん粗さも気にならないし、勢いとノリで楽しく観られちゃう部分もあるんだが、これだけ丁寧に作りこんであると、逆にいろいろ気になるところも出てきたりして、そこはなかなか難しいもんである。
一番気になるのは、「合間の日常」がきれいさっぱり欠落しているところか。
たとえば、オヤジとケン坊の出逢いは鮮烈だが、そこからいっぱしのヤクザになるまでは、一足飛びだ。
ユキとケン坊の出逢いも鮮烈だが、そこからすぐに入所して14年後に出所するまでは、一足飛びだ。
物語を動かすきっかけになるイベントは、それぞれ十分に完成度が高いし、セリフもよく練られているのだが、合間のどうでもいい「一緒に何かをやるカット」が(おそらく敢えて)抜いてあるので、「設定」しか頭に入ってこない。キャラクター間の絆が醸成されない。あとの感情移入は、シナリオやカットではなく、役者の演技と、観客側の寄り添う姿勢で補ってくれというスタンスだ。
それでも、別れがあったり、死があったりするので、十分胸を打つし、それなりに泣けもするのだが、「意外に軽量級」な映画だというのが、正直な感想だった。
まあ、これだけ間をすっ飛ばして作っても、2時間以上あるわけで、しょうがないっていえばしょうがないんだろうけど。
あと、出所後の展開については、もちろん綿密な取材に基づくヤクザの現実に則してはいるのだろうが、家族がヤクザだとわかって、職場がああいう雰囲気になるとか、学校がああいう雰囲気になるとか、その結果として家族がああせざるをえないとか、舎弟がケン坊にああしてしまうとか、すべてが若干、物語上都合がよすぎるというか、ステロタイプというか、絵空事のような印象も否めなかった(自分が80年代に関西で生まれ育って、関東に来てからもう20年以上になるので、令和の反社をとりまく空気感がわかっていないだけかもしれないが)。SNSの話とかも、真実味のあった『ミセス・ノイジィ』あたりと比べると、面白動画でもないのにあれがそこまでバズるとか、どういうシチュエイションだろうね、みたいな気もしたり。
「ヤクザ映画の型を脱して、リアルな人間像を描く」目標を掲げた映画であるにもかかわらず、実際には「ヤクザ映画のクリシェをリファインする」作業にはきわめて長けている一方で、(物語と直接かかわらない)リアルな人間描写を尺と演出上の自己都合でことごとく排している、というのは、やはりなにがしかの自己矛盾をきたしているとは思うんだよなあ。
あと、世代的に「近くのおじさんがヤクザ」という、僕の少年時代には身近にあった環境を知らない世代の監督さんが、「ヤクザ映画」の知識と、「現実の取材」をもとに撮っているということで、どうしても体感的な生々しさが薄れてしまう部分はあるのだろう。
とはいえ。
全体としてはとても面白く見られたし、最初に書いたとおり、綾野剛の演技はすばらしかった。
舘ひろしは舘ひろしでしかなかったが、キャラクター込みで成立している部分もあって、ぎりぎりのところでセルフパロディからは踏みとどまっていた。
むしろ、置き物として配された菅田俊と康すおんが、事務所のリアリティを一手に引き受けていたような(笑)。
豊原功補と駿河太郎の、憎々し気な敵対組織の組長と若頭も、ハマり役。
尾野真千子は大学生をやるにはさすがに老けていたが、ちゃんとセリフでいじられていて笑ってしまった。
各シーンの撮り方やレイアウトも、ダイナミックなのに、流麗で、緻密。
よく考えられている。
映像を隙なく仕上げ、画面に情感と情報をこめる映画職人としての藤井監督の技量は、たしかなものだ。
じつは、『新聞記者』は題材がさすがに気持ち悪すぎてスルーしてしまったのだが(申しわけない)、テレビで『100万円の女たち』を観たときから、この監督はモノが違うとずっと思ってきた。
そういえば、藤井監督も、綾野剛も、映画番宣のインタビューで、しきりに「世間では社会派と言われるけどそうじゃない。映画的正義を振りかざして問題提起してるわけじゃない。現実を描いているだけ、人間を描けば社会も描くことになるだけ」といったことを強調していた。ちょっと気の毒ではあるが、今後もしばらくは『新聞記者』のバイアスと闘い、中和していくしかないのだろう。でも、そのへん、「ちゃんとした」監督さんだというのはこちらも重々わかっているつもりです。
なお、作中で声高には語られていないが、主人公や組構成員の名前、彼らがたむろしている行きつけが焼き肉屋で、そこの死んだ亭主が組の幹部だったことなどから見て、本作は裏テーマとして、単なる「ヤクザ」の問題ではなく、よるべなく生きる「在日ヤクザ」の問題を描いていることは間違いない。
その意味で、河村プロデュースのSTAR SANDS作品でいえば『かぞくのくに』、藤井監督の好きな映画でいえば行定勲監督の『GO』あたりの流れをさりげなく汲む作品であることも、頭の片隅に置いて鑑賞するといいのではないかと思う。
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