劇場公開日 2021年1月29日

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「ヤクザは「一家」、マフィアは「ファミリー」、、、疑似家族なのだなぁ。」ヤクザと家族 The Family kazzさんの映画レビュー(感想・評価)

4.5ヤクザは「一家」、マフィアは「ファミリー」、、、疑似家族なのだなぁ。

2021年4月27日
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鑑賞方法:映画館

藤井道人がまた傑作を産み出した。
しかも、オリジナル脚本だという。
まだ30代ですよ、この監督。

ヤクザの世界に身を置くしかなかった男が、反社会的勢力排除へ大きく動いた時代のうねりに翻弄される姿を、三つの時点の断面で描いている。
開巻直後、主人公(綾野剛)が父親の葬儀会場に入るまでのダイナミックな長回しカットで、観客の集中力を一気に高めさせる。

主演綾野剛のバイオレンスは板についていきた感じだ。元々哀愁を感じさせる佇まいを持っているから、この役に見事にはまっていた。

主人公は不良少年からヤクザへと、映画の前半で大きく変わっていく。
周囲のキャラクターたちは主人公が刑期を終えて出所する前後、映画の後半部分で変化する。
親分の舘ひろしは勢力を失って萎縮した姿を晒す。
恋人だった尾野真千子は娘との生活を守ることに必死な母親となって、綾野剛と訣別する。
兄貴分の北村有起哉はヤクザの正義を捨てて落ちていく。
達者な役者たちが、時代の変化のなかでもがく様をそれぞれの持ち味で演じている。
中でも一番印象に残ったのは市原隼人だ。
彼が演じる元舎弟が世間の風当たりに耐え続けた何年間かは描かれていないが、奥歯を噛みしめるようにして発する台詞でその過酷さが想像できる。
だからこそ、映画終盤の彼の凶行に同情してしまうのだ。

反社の世界に身を染めていく若者たちは、皆がみんな喧嘩好きの乱暴者ではない。生まれながらに乱暴な性格の者もいるだろうが、人生の大半は「環境」で決まるのだと思う。
ヤク中だったと思われる主人公の父親について詳しくは説明されないので、親から何を受け継いだのかは分からないが、行きつけのホルモン焼き屋でヤクザ同士の抗争劇が巻き起こるような環境に生活している主人公がヤクザ一家に疑似家族を求めたことも、そのホルモン焼き屋の息子(磯村勇斗)が成長して半グレのリーダーになってしまったことも、生活環境が強く影響しただろうと思った。

さて、エンディングは世代交代を示しているようで、歴史は繰り返す的な無限ループを匂わせているようでもあった。
幸せな出会いの予感を持たせつつも、その行き先には不幸が待っているに違いないと、私の老婆心が叫んでいる。

kazz
asicaさんのコメント
2021年11月11日

コメントありがとうございます。
尾野真千子の件、そうかもです。

市役所に臨時雇いってあるみたいですね。
話を象徴的に持って行きたかったからなのかここの描き方は早急だったようには思いました。
テーマ全体の事や演者の熱演っぷりが良かったので尚更。
そう、ほんとに
環境って重要ですよね。

asica