ヤクザと家族 The Familyのレビュー・感想・評価
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まともに生きようと思っても社会がそれを許さない
東海テレビ制作のドキュメンタリー映画『ヤクザと憲法』を思い出させる作品だった。『ヤクザと憲法』は暴対法や暴力団排除条例の施行によって、銀行口座も作れない、携帯の契約もできなくなったヤクザがしのぎをどんどん失い、生きる権利を奪われていく過程を密着取材で捉えた作品だ。この作品は、その劇映画版と言ってもいいかもしれない。
一人の若いチンピラがヤクザとなり、刑務所に入り、出所してからの生活を3つの年代に渡って描くが、本作はまだヤクザ組織が元気だった頃から始まるので、法律の施行による凋落ぶりがとても強烈な印象を与える。主人公が刑務所から戻ってきたら、世の中が一変している。まともに生きようと思っても、生活がままならない。非合法なことでもしない限り生きていくこともできないような世の中になっている。ヤクザをなくすための法律・条例のせいでヤクザが足を洗うことができなくなっている。そんな強烈な矛盾に翻弄される人々の物語だった。
ヤクザ映画からネオノワールへ
そのストレートなタイトルから、往年の“任侠映画”をイメージするかもしれないが、日本のヤクザ映画の系譜を受け継ぎつつも、いい意味でその固定概念を覆してくれる。「新聞記者」のスタッフが再び集結し、「家族」という視点から現代のヤクザを描いて進化させた新世代のスタイリッシュな作品となっている。
見どころのひとつは絶妙なキャスティングだろう。チンピラからヤクザの世界で男を上げていく主人公・山本を演じた綾野剛が放つキレと哀愁、その繊細な表情がこの映画に説得力をもたせている。さらに山本の親分となる柴咲組長を演じた舘ひろしが綾野と新しい化学反応を起こす。いわゆる強面の親分ではなく、義理人情を重んじ、包容力と凄み併せを持った役で、「あぶない刑事」シリーズを見て育った世代としては、その立ち居振る舞いを見ただけでなんとも感慨深い。ヤクザ役は43年ぶりだという。
この映画は新旧の時代を対比させ、「家族とは何か」「いかに生きるか」「失ってはいけないもの」を提起している。エンタテインメント作品でありながら現代の様々な問題をはらんでおり、「変わりゆく時代の中で排除されていく“ヤクザ”」を鋭い視点で描くことで、生きる場所を失った者の人権、今の世の矛盾と不条理を突きつける。
ヤクザと時代の変化を1999年から2019年までの期間で描いた秀作。藤井道人監督のふり幅の大きさに驚く。
本作は昨年の日本アカデミー賞で最優秀作品賞を受賞した「新聞記者」を手掛けた藤井道人監督と、尖った作品を送り出し続けるスターサンズという映画会社が再びタッグを組んだ作品です。
「新聞記者」についてはフィクションとは言え、賛否両論を巻き起こしたため最優秀作品賞に関しては物議を醸しましたが、本作は完全なオリジナル作品なので純粋に見られると思います。
まず、本作を見て一番驚いたのは、藤井道人監督のふり幅の大きさでした。
「藤井道人監督の大型の商業映画」は、それこそ「新聞記者」が最初でしたが、その次に「宇宙でいちばんあかるい屋根」というファンタジーで良質な作品を手掛けました。続いて、再び毛色が大きく変わった本作の登場です。
ヤクザ映画というのは、暴力シーン等かなり違った技術が要求されますが、それをベテラン監督の如く演出し、的確に描き切っていました。オリジナル脚本の完成度も含めて、この分野を主戦場にしてきた監督からしてみたら驚異的な存在に映ることでしょう。
さて、本作は時代の変化とともにヤクザという存在がどのようになっていったのかがよく分かる興味深い内容となっていました。特に終盤での展開は切ないほどリアルで、こういう俯瞰的な視点のヤクザ映画が作られるようになったのは時代の変化を感じます。
主人公の綾野剛が1999 年の少年期の序盤から、ヤクザとして最前線で生きた2005年を経て、2019年の現代までの約20年間を演じています。当初はさすがに20年間の変化は厳しいのかもしれないと思いました。ただ少年期とは言え成人前くらいだったので違和感なく見事に演じ切っていました。
本作は全体的に出来が良いので、大げさではなく役者陣全員が良かったです。中でも2019年から登場する磯村勇斗は存在感の強い役者に成長していて今後が楽しみな俳優になっていました。
タイトルの意味も含め、間違いなく深い秀作です。
今まで見た映画で一番好きな映画
ヤクザ物ということで最初すごく見るのに躊躇しました。ですが全然内容は思っていたものとは違いました。綾野剛さんが10代〜を演じているのを見た時流石にそれはと思いましたが全然馴染んでいました。歳をとるにつれ変わって行くヤクザの歴史に怖くなりました。
綾野剛さんと市原隼人さんが殴られるシーンで本当にやっていいよって駿河太郎さんに言ったと聞きプロ根性すごいなって思いました。安定に車に轢かれていた綾野剛さんは素晴らしかったです。
テーマは家族
親や兄弟がいなくてもヤクザにはなりたくなかった。けど成り行きでヤクザと家族になった。なったら全力で家族の一員になるべく努力した。けど刑務所にはいった。やっと出所して家族の元に戻ったけど、全てがかわってしまっていた。好きだった女からも拒絶され行き場を失った。家族と幸せになりたかっただけなのにうまくいかなかった。
そんな話。
ヤクザ映画であってヤクザ映画でない
ヤクザ映画はあまり得意ではないのだか、本作は序盤から一気に惹き込まれた。
薬に手を出してしまった中村、復讐を決意した翼のアップ、終盤の賢治の独白。どのシーンも胸が苦しくなるほど。
ラストでやっと救われたような気がした。
今までのヤクザ映画にない
これはリアリティあるのだろうか、、
それはわからないが、今までのヤクザ映画にないストーリーだった、、
威勢の良いヤクザ映画しか見てきたことはないので、最後こんなカタチで終わるのは少し寂しかった。。
綾野剛の演技は迫力があったが、演じている役柄に覇気があまりなくイラっとしてしまった
ご都合主義だらけ
この映画がなぜこんなに評価が高いのか、
正直、不思議。
使い古されたベタなキャラクター設定の配役オンパレード。
映像で状況説明し過ぎ。
あからさまな前振りが多く、先が読める。
次々に、ご都合主義なベタな展開が続くが、
逆に最後はあり得ない結末。
全編通してリアリティ欠如で、
かといってエンタテインメントに振る訳でもない、
以上、愚痴だらけの感想でした。
悲しすぎるラスト
ヤクザ映画はドラマチックで成立しやすいが、これはヤクザそのものを描いたヒューマンドラマだ。 骨太で、かつ、繊細。 綾野剛は顔がヤクザ顔だから損してるかもしれない。舘ひろしは温かみのあるオヤジがこれも〇。 市原隼人もいい味出してる。 自業自得でしょ、と思いながらエンディングにかけては余りにも悲しすぎる展開だった。最後弟分に刺殺されるシーンは印象的。久々にエンドロールまで観切った。
平成令和のヤクザ映画
新しいヤクザ映画な感じに見えて、確かにその予想は合っていました。
期待を超える部分、ありがちなシーン、予想出来なかった展開、たくさんあり見応えもある作品でした。
特に照明は冷たさや重く暗い感じを表現していて印象深かったです。
印象的だったシーンは、主人公がヒロインをデートに誘うシーンです。
昭和のヤクザ全盛期を知る世代と、平成令和のそうじゃない世代で一緒に観て欲しいです。
映画のすべての至らなさを俳優の〝力み“でカバー
ヤクザの時代は終わった、と説明台詞が何度も出てくる。くどい。それ以上の思想や鮮烈なアイディアはとくに感じられなかった。
またベタな模倣が目につく。黒い罠やブギーナイツへの憧憬か長回しのOPはこすられまくっているし、トゥモローワールドのような車の襲撃の長回しも、本家の背筋の凍るような、テクニカルにもどうやって撮ってるかわからない破格の域ではもちろんなく、なんとなく真似して薄まった感がいなめない。長回せばいいというものでもない。クライマックスのマグノリアのようなモンタージュも当然マグノリア以上にはならない。憧れがあったので真似た、薄まっただけの結果になった、という印象が目立つ。新たな発明はしないのか。過度に雰囲気の作られたスワロウテイルのような中華料理店も不自然、カッコつけているだけにしか思えず、セリフや作劇で描かれているのは極めて庶民的な下町の雰囲気、なぜムード満点なのか。頻出する逆光の「キラキラしたきれいな」画は節操なく、セリフはどこかできいたようなベタ中のベタ。それらすべてを俳優の〝力み“に委ねたような映画だった。
磯村勇斗だけは素晴らしかった。
年代を経て変わっていくヤクザの世界
タイトルから任侠ものを想像してしまうが、「反社会的勢力として年代を追うごとに行き詰っていくヤクザ」と「元ヤクザ、一般人含めての家族愛」を描いた藤井道人監督作。
綾野剛も一本筋が通った男として「ただのチンピラ」から柴咲組の組長(舘ひろし)を救ったことから「ヤクザ」の世界に入っていく男を好演していたが、本作でとりわけ目を見張ったのは(ほぼ紅一点の)尾野真千子である。バーのホステスをしていたところを綾野剛に惚れられるが、彼がヤクザだからと言って臆することなく(押し倒してきた彼を)引っぱたくわ、思ったことを言うわ…の存在感(笑)
序盤、尾野真千子が出てくるシーンが楽しい。
〇綾野剛の部屋に呼び出された尾野真千子が、彼の部屋に入ると綾野剛が彼女を押し倒す。
⇒「何すんのよ!」と怒る彼女に、綾野剛は「ココに来たら、ヤルこと込みだろ…」(笑)
〇綾野剛が「なんでウチの店で働いているんだ?」と聞くと、彼女は「学費が払えないから」⇒「お前、学生か。老けてんなぁ~」(笑)
1999年には羽振りの良かったヤクザだが、数年先には世代交代の影が表れて、綾野剛が殺人罪で刑務所に入っていた14年後(2019年)には暴力団排除の時代になっていて「反社との付き合いも厳しい世の中」。
綾野剛は14年の「オツトメ」していたので、出所後に元仲間から「今は反社、反社と言われて、暴力団を止めても、最初の5年は雇用面でも難しかった」と言われる状態。
綾野剛が14年ぶりに再会した尾野真千子も役所勤務していたものの、やはり時代の流れ。ネットでの誹謗中傷問題も含めて、藤井道人監督は社会問題を描くのが上手い。
藤井監督の『新聞記者』ほどは世間に訴える姿勢は前に出てきてはいないが、社会問題と家族愛を描いた佳作であった。
[MEMO]本作は、2021年公開日本映画で、キネマ旬報読者ベストテン第11位
<映倫No.122270>
嘘っぽいので、途中で観るのやめました。
うーん、配信で途中まで観てましたが、なんかリアリティが無さ過ぎてつまらなくなりました。
襲撃されたのにボーっと突っ立ってるヤクザの親分。出所してすぐにヘーキな顔して一晩寝た女に会いに行く主人公。どーでもいい一般人が投稿した元ヤクザの写真が芸能人並みに拡散して、人の人生を狂わしていくありえない展開・・・エトセトラ、エトセトラ・・・ここでウンザリしてやめました。結末も救いがないだろうと思います。もっと本職のヤクザ屋さんにいろいろ取材してからリアルな話を映像化してください。馬鹿馬鹿しかったです。
カッコよく描かないヤクザ映画
ヤクザ映画というと、ヤクザの怖さを描きながらもどこかカッコいい、というか、間違った憧れを持ちかねないモノが多いように思うが、この映画は全くそれがないのでは?組の仲間同士では家族のような繋がりを持ちながらも、世間からは徹底的に除外され、一旦関わると大変なことになるよ、自分も友達も愛した人も。幸せなんて程遠いよと、伝えているようだ。そこがとても個人的に面白く感じた。
ヤクザのケンジに恐ることなく自分の言いたいことを言うユカがカッコよく、ケンジが置いていった300万円にも手をつけず、子供を育てたユカはすごい。なのにあの結末はなんとも気の毒。でも現実なんだろうなあ。ケンジのラスト、意外な結末でした。同僚に裏切られ、妻子に見捨てられた彼(市原隼人)も気の毒。
舘ひろしの親分、似合ってた。そして駿河太郎と豊原功補、2人とも最近ヤクザの役多いなあ。これからヤクザ映画を牽引していくのか、それにしても駿河太郎の死に方はちょっと恥ずいぞ!
今時ヤクザなんて
そんな時代になってきたけど、
やり方は正しいことだけじゃないが、真っ当なヤクザは任侠と情に溢れてたのかもしれない。
ヤクザとその関係者は生きずらい世の中。
ある意味差別になってしまうのかもしれない。
後半がもはや別の映画
暴対法による締め付けで衰退していくヤクザを描いた映画。
前半は勢いのある任侠映画といった感じだが、後半はとにかく惨めで切ない展開の連続である。
舘ひろしは優しそうで全然ヤクザの親分には見えなかったが、主人公がずっと欲しかった「家族」の愛情溢れる大黒柱を演じていて、本当の父親みたいだったのが良い。
侠気とかではなくて家族愛とその儚さが泣ける映画だったので、本質的にはヤクザ映画ではないのかもしれない。
器用には生きれない
どうにも昔から任侠ものは苦手でなかなか自分からは選ばない
同僚は大好きで
「これだったら見ますよね」
と勧めらたのだ
彼方の世界にも善と悪があるのだろうか?
映画の中でしか分からない世界なのでそこのところはよく分かりません
分かりませんが役所広司さんの作品にもあったように何かと生きづらい世の中になっているのでしょうね
新たな法律は新たな組織を作り裏の世界はより複雑になっていったのでしょうか
まっとうに生きようと決めた人達に救済はないのだろうか?
警察や議員や弁護士とかと繋がっている方がよほど悪どく社会の敵のような気がします
高倉健さんが言ってましたね
あの言葉が悲しく心に響きます
綾野剛さん、そして尾野真知子さん、素晴らしいですね
この作品で緊張と緩和を見事に表現されてましたね
住みにくい時代になった、ヤクザににとってだけではなく。
若い頃からヤクザ映画は大好きだし、綾野剛も尾野真知子も良い俳優だとは思っているが、あの悪名高い新聞記者を撮った監督の作品ということで正直全く期待していなかった。が、良かった。20年の間に世の中はものすごく変わったが、その間塀の中にいた主人公にとっての変化はさぞショッキングだったことだろう。住みにくい時代になった。ヤクザににとってだけではなく。
綺麗事だけでは生きていけない…
本当だろうか。。暴対法以降のヤクザたちが社会で生きていく上での難しさ、苦しさをヤクザ側の視点で描く。昔のように義理人情では通用しない、スマホも、保険も、口座も、仕事も、家族ももてない。しかし、ある意味、そういう生き方を選んだ彼らが悪い、自業自得だと思う。反社は社会に必要なのだろうか。今更世の中に放り出されたって、極道しかやってこなかった子分たちを路頭に迷わせてはならない組織の長である親分の気持ちもわかる。彼らにほとんど実の家族がおらず、組織が家族のようなもの。自ら入りたくて入ったのではなく環境がそうさせた者もいるかも知れない。けれど、それは甘えだと考える。映画では綾野剛、舘ひろし、磯村勇斗、尾野真千子、娘の物語に感情移入してしまうが、実際は違うと私は思う。人の道を外れた者が人並みの幸せを求めてはならないと強く思う。
俳優さんの力量が凄い作品
綾野剛の荒くれた感じ、くたびれた感じ、全部違いを感じて、凄いなあと思った。舘さんの組長は全てを持って行く存在感。素敵でした。磯村くんの演技、世代交代感の中に愛や家族を感じられて、切なくなりました。見るべき作品。
全484件中、1~20件目を表示