ステップ

劇場公開日:

ステップ

解説・あらすじ

妻に先立たれて男手ひとつで娘を育てるシングルファーザーと、母親を亡くし父と2人で人生を歩む娘の10年間の足跡を描いた重松清の同名小説を、山田孝之主演で映画化。結婚3年目、30歳という若さで妻の朋子に先立たれた健一。妻の父母から1人娘の美紀を引き取ろうかと声をかけてもらったが、健一は妻と時間をともにした妻の気配が漂うこの家で、娘と天国にいる妻との新しい生活を始めることを決める。娘の美紀の保育園から小学校卒業までの10年間、さまざまな壁にぶつかりながらも、亡き妻を思いながら、健一はゆっくりと歩みを進めていく。山田が自身初のシングルファーザー役を演じるほか、國村隼、余貴美子、広末涼子、伊藤沙莉、川栄李奈らが顔をそろえる。監督は「虹色デイズ」「大人ドロップ」の飯塚健。

2020年製作/118分/G/日本
配給:エイベックス・ピクチャーズ
劇場公開日:2020年7月17日

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(C)2020映画「ステップ」製作委員会

映画レビュー

4.0空気が読めるタイプの子供だった人には、懐かしい香りがする作品

2025年1月26日
PCから投稿
鑑賞方法:VOD

泣ける

突然母(妻)を失った、父子家庭の日常と日々の成長のお話。

まず、主要人物2人が良い。

白鳥玉季の「良い子を演じている子」を演じてるのと、
山田孝之の「黙っているだけ」で、心の機微の移り変わりを魅せる演技が凄かった。

白鳥は「極主夫道」でもそうだったように、ちょっとマセて大人びたガキをさせたら、
今日本で一番上手くて、可愛らしい子役だと思うが、

今作でも、父親に対して、父の心情を汲み取った上で、
良い子にふるまっているマセた子供を演じていて、見事だった。

一方、山田は、2024年の「正体」で、主人公を追いかける刑事を演じていたが、
上司の方針や指示と、自分の本心との溝に苦悩する刑事を、
「黙すること」で表現したように、今作は、子育てに奔走し疲れ切っている親父役で、

妻を亡くした直後の不安定な父親と、
子供がある程度成長し、手がかからなくなったが、苦労した分くたびれた感じの父親と、
同じ疲れきった感じの父親だが、加齢で安定してきた感じの父親の成長幅を、
やはり「寡黙」で「黙する姿」だけで見事に違いを演じているのは、見事だった。

山田の場合は、ちょうどこの2020年の「ステップ」辺りから、
ここ数年で黙するタイプの演技に、拍車がかかって凄味を増してきた印象があり、
昭和の俳優にも似た雰囲気を持つ、役者になった感がある。

ストーリーは、父子家庭のステレオタイプな「突然不幸が襲ってくる」展開で、
意外さや驚きは無かったが、父子の互いを思いやる心の機微を丁寧に描くことで、
鑑賞後は温かい気持ちになれる映画で、満足度は高かった。

また、個人的な話だが、私も子供の頃はどちらかというと、両親共働きで、
マセたタイプの子供であり、
幼少時は、知り合いのおばあさんの家で、親の仕事が終わるまで、
預かってもらい過ごす子供で、

大人の意図を汲み取る術には、処世術として長けており、
小学校の頃は、鍵っ子特有の思慮深い子供だったし、
経済的に裕福ではない事は、なんとなく感じていたので、
駄々をこねている同年代の子を見ると、見下す感じだったし、
やけに大人びた子供だったと記憶している。

空気を読んで、大人の手がかからない良い子を、演じていた自覚がある。
だから、この作品の子役を見てると、自分を見ている心地になり、
いや、もっとマセてたなぁと感慨深くもなった。

良かった演者
山田孝之
白鳥玉季

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ソビエト蓮舫

4.0すごくいい

2024年9月17日
スマートフォンから投稿
鑑賞方法:VOD

泣ける

幸せ

キャストがみんなハマってた印象。とくに白鳥玉季と山田孝之の演技に引き込まれる。終盤あたりの全感動シーンで泣いてしまった。心があたたかくなった。観て良かった。

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ててて39歳

4.0國村隼さんの演技に脱帽

2024年7月9日
スマートフォンから投稿
鑑賞方法:VOD

泣ける

ともかく「泣ける」映画。特に後半はウルウルしっぱなし。義理の父として婿や孫に注ぐ素直な愛情。車椅子で登場する最初のシーンの國村隼さんの表情に震えた。

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chizmoku

4.5映画の持つ力

2024年5月27日
PCから投稿
鑑賞方法:VOD

知的

ハンディキャップを題材にするズルい型であり、散々使い古されたものでもあるが、実際には2つとない物語でもある。
そしてこれはどこの家庭でもあり得ることで、しかしそれはどんなにシミュレーションしても経験しなければわかりようのないことでもある。
つまり、誰にとってもそれは絶対したくない初体験として捉えなければならないのだ。
恵まれた環境という設定が割と変哲のない感じを与えるが、この環境設定に余計なハンディキャップを加えると物語がぶれてしまうのだろう。
加えて聞き分けのいい女の子という設定もこの作品がどこを向いているのか明確にしている。
この作品はトモコが亡くなった。ただそれだけのことに的を絞っている。
冒頭に表示されるタイトルのステップのテロップは、あの坂道に沿って、その坂道が主役でもあるかのようにひっそりと遠慮がちに映し出される。
そして思い浮かぶのが、「道のり」とかそのまま「坂道を上る」とか、父娘二人のこれからの歩みを暗示している。
やがて物語の中盤に語られる「ステップ」とは、ステップファーザー、マザーという血のつながっていない関係を指す英単語として再登場し、もう一歩的が絞られる。
この作品のなかに健一の両親は登場しない。その代わり妻側の両親や息子夫婦が多数登場する。
彼らは真摯に健一親子の力になろうとするし、彼の再婚の後押しまで演出してくれる。
そして再婚相手はもちろん美紀と血のつながりはない。
この作品が訴えているのがこの「ステップ」、血のつながりがなくても強い信頼性を築くことができるということだろう。
そしてその境界線を勝手に引いているのは、自分自身だということへの気づきだ。
小学校で母の日に描く母の顔。担任はそのことで健一に相談するが、健一は娘が嘘をついているとは思えず、担任の考え方がどうしても受け入れられない。
意外なほどトモコに似ているコーヒーショップの店員にお願いして美紀と遊んでもらう。
健一は担任からの手紙をそのままコーヒーショップに置いたままにしたが、どうしても文句が言いたくて連絡先を知るためにそれを取りに行ったが、たまたま手紙を店員が読んでいたことでそのようにお願いしたことで、よけいな文句も言わずに済んだ。
そのことさえも、関係ない人からいただいた貴重な援助だ。
トモコが亡くなってからまだ日も浅いとき、健一は義父母から気を使われることにどうしてもなじめず、「何か引っかかる」と繰り返し呟いていた。それがいつか、他人行儀にしていたのは自分自身だったと気づくのだ。
上司からのたびたびの誘いと営業部復帰の打診も、彼の周囲の支えを群像表現している。
その自分で勝手に引いた境界線が、「関係」のあるなしを決めているのだと、この作品は伝えているのだろう。
保育園のケロ先生も二人の家庭事情を深く鑑みお世話していたことは、健一にも重々伝わっていた。そういう良き人たちに支えられて自分たち親子が立っていられるということを、異動で営業に戻り、「家庭」というものが一体どういう場所なのかを仲間でブレインストーミングしている機会に、健一の意見によってよく表れている。
やがてトモコの死から10年が経ち、心の余裕からか健一にも気になる人ができた。
そのナナエを母としてどう受け入れればいいのかという美紀の問題が始まるが、賢く聞き分けのいい美紀は彼女なりに思案を繰り返しながら受け入れていく。
美紀も自分でその境界線を引いていたことに気づいたのだろう。
健一のセリフに「悲しみも寂しさも消えない。でも乗り越えていくべきものでもない。付き合っていくべきものだと僕たちが生きてきた日々が教えてくれた」というのがあるが、この健一の言葉こそが作品が訴えていることだろう。この言葉のためだけにこの作品があるのだろう。
使い古された型ではあるが、個々人からは永遠のテーマだろう。勝手に境界線を引いて何もかも一人で抱え込む必要はないし、誰かが手を差し伸べてくれる時にはお世話になっていい。これは未だに日本人が苦手なことであり、これからの日本人が受け入れていく必要のあることなのだと感じた。
シミュレーションなどできないからこそ、映画の力があると思う。
良い作品だと思う。

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