罪の声

劇場公開日:

罪の声

解説

実際にあった昭和最大の未解決事件をモチーフに過去の事件に翻弄される2人の男の姿を描き、第7回山田風太郎賞を受賞するなど高い評価を得た塩田武士のミステリー小説「罪の声」を、小栗旬と星野源の初共演で映画化。平成が終わろうとしている頃、新聞記者の阿久津英士は、昭和最大の未解決事件を追う特別企画班に選ばれ、30年以上前の事件の真相を求めて、残された証拠をもとに取材を重ねる日々を送っていた。その事件では犯行グループが脅迫テープに3人の子どもの声を使用しており、阿久津はそのことがどうしても気になっていた。一方、京都でテーラーを営む曽根俊也は、父の遺品の中にカセットテープを見つける。なんとなく気になりテープを再生してみると、幼いころの自分の声が聞こえてくる。そしてその声は、30年以上前に複数の企業を脅迫して日本中を震撼させた、昭和最大の未解決人で犯行グループが使用した脅迫テープの声と同じものだった。新聞記者の阿久津を小栗、もう1人の主人公となる曽根を星野が演じる。監督は「麒麟の翼 劇場版・新参者」「映画 ビリギャル」の土井裕泰、脚本はドラマ「逃げるは恥だが役に立つ」「アンナチュラル」などで知られる野木亜紀子。第44回日本アカデミー賞最優秀脚本賞受賞。

2020年製作/142分/G/日本
配給:東宝
劇場公開日:2020年10月30日

スタッフ・キャスト

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受賞歴

第44回 日本アカデミー賞(2021年)

受賞

最優秀脚本賞 野木亜紀子

ノミネート

最優秀作品賞  
最優秀監督賞 土井裕泰
最優秀主演男優賞 小栗旬
最優秀助演男優賞 宇野祥平
最優秀助演男優賞 星野源
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(C)2020 映画「罪の声」製作委員会

映画レビュー

4.0宇野祥平の枯れた肉体

2020年11月29日
PCから投稿
鑑賞方法:映画館

昭和の事件を題材にしているが、「今なぜ作るのか」を考え抜いて作られている。グリコ森永事件をモデルにした作品だが、あの事件の脅迫テープに使われた声の子供も、平成と令和の時代を生きている。あの事件が残した爪痕は、その子ども当事者だけに限らず社会に残っており、現代の問題にもつながっているのだということが説得力を持って描かれていた。学生運動の挫折が様々な混乱を社会にもたらし、そのことがいまだに尾を引いているのだとしたら、昭和をきちんと清算しなければ日本社会はなかなか前に進めないということなんだろう。実際、平成の30年間は日本は足踏みを続けてしまったわけなので。
ミステリーを主体とした人間ドラマとしてもよくできている。脚本がとても整理されていて、登場人物が多いけれど混乱することがなかった。TBSドラマ部門のエース格と言える土井裕泰監督も相変わらず確かな演出力を見せてくれた。
小栗旬はじめ役者陣も大変良かったが、中でも宇野祥平が際立っていた。あの枯れた肉体の説得力が本作の質を一つ上に持ち上げたと言っていい。

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杉本穂高

3.5「キツネ目の男」が動く姿に感動

2020年11月10日
PCから投稿
鑑賞方法:映画館

「3億円事件」と並び称される昭和の未解決大事件をモチーフに、その真相を解釈せんと試みる野心的な小説を映画化。確かにこの事件は、学生の頃リアルタイムで報道を見ていて夢中になってました。しかし、映画(小説)の内容はあくまでフィクション、「たぶんこうだったんじゃないか劇場」(byチコちゃん)です。この仮説に乗れるか乗れないかが、映画の評価にシンクロしますね。この事件が、本質的に「金融案件」だったって部分は目からウロコでした。あと、「キツネ目の男」が動く姿はちょっと感動的でした。思わず「おお〜」って声が出ちゃいましたね。

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駒井尚文|映画.com編集長

4.5「キツネ目の男」で有名な実在の事件をモチーフに作った作品。経済的な背景を与えた物語の展開が面白い。

2020年10月29日
PCから投稿

2000年に時効を迎えた、食品会社をターゲットにした、あの脅迫事件。「キツネ目の男」という犯人像が独り歩きして、私の記憶も時効と共に、ほぼ更新されずにいました。
ただ、よくよく考えると、犯人は一度も現金の引き渡し場所に現れなかったりと、よく分からない事件でもあります。
そんな実在の事件をモチーフに、実は「半沢直樹」的な「経済的な動きが背後にあった」という設定をしているのが本作です。
正直、「なるほどなぁ」と感心しました。確かにそういう動きをすれば経済的な利益も莫大に得ることが可能になります。
そうしてバックボーンのリアリティを与えながら、「脅迫の際に使われた子供の声」に焦点を当てている点も面白い。原作本の発行元の講談社が製作幹事会社の1つになっていることから、原作への自信がうかがえます。

マイナス要素を強いて挙げると、少し間延びして長く感じてしまった面がありました。これは、登場人物が多かったからなのかもしれません。
事件の構想が大きい分、いろんな人が出てきて、しかも「現在」と「過去」が交差もするので、少し頭が疲れる面が出てくるのです。
いや、「頭が疲れる」というより「興味が薄れる」という方が正確かもしれません。
小栗旬や星野源といった主要キャストには感情移入もしやすく良いのですが、だんだん主要キャストから離れたディテールにいくと、少し時間が長く感じる面はあるかと思います。
ただ、良く解釈すれば「丁寧に追っている作品」とも言えるでしょう。
「未解決事件×経済的な事象」の化学反応が存分に活かされた名作だと思います。

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細野真宏

4.5どこまで寄り添えるのか 小栗旬&星野源の眼差しに何を感じるか…

2020年10月27日
PCから投稿
鑑賞方法:試写会

本サイトでの「罪の声」インタビュー、新作映画評論でも記述させていただいているが、実際にこの日本で起こり、一定以上の年齢層の人々にとって忘れることができない衝撃の未解決事件をモチーフにした作品で、原作の魅力を上回るほどの社会派作品に仕上がっている。

小栗と星野のひたむきな眼差し、役を生き切る姿勢素が晴らしい。
と同時に、フィクションこそ含まれてはいるが、近年ここまで実際に起こった事件に対して真正面からぶつかっていった作品もなかったのではないだろうか。製作サイドの気苦労は大変なものだったと思うが、その思いを汲み、覚悟をもって撮影に入った俳優部の覚悟にも喝采を送りたい。

公開前なのでネタバレ回避すべく詳述は避けるが、中盤から後半にかけてのセリフに胸を打たれる。あの事件の脅迫テープに自らの声を使われ、意図せず事件に巻き込まれることになってしまった子どもたちが、もしも今作を映画館で見たら……、その言葉に救われるかもしれない。

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大塚史貴