タクシー運転手 約束は海を越えてのレビュー・感想・評価
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今後の研究に期待
平常な世界と非常な世界のグラデーションの描き方が良い。何か違うなと思ったら既に違う世界にいる。追いつかない現状認識。それがどんどん追いつく。
タブーとされてきた事件を取り扱った作品。それだけに色々と勉強もできる。かつての映像では市民も武装している。皆兵制度がある国。数日間は市民が市中を制圧したという。不明な点も多いようだ。
何故民主化運動が光州で暴動化したか、何故軍政は市民を狙撃するに至ったのか?あまり触れてくれていない。実相を総じて正しく描いているかという点については疑問もあり、エンターテイメント要素も多く詰め込まれている。
しかし、卵と壁ではないが、思想的背景や社会情勢を棚上げしても、英雄的行為への希求は人の構成要素の一つであり、誰もが英雄となりえることを示すことが、昨今蔓延する臆病風に効く薬であって欲しい。
期待通りの映画
なかなか観ることができなかった本作を
やっと観られましたが
笑いあり涙あり、緊張あり緩和ありで
2時間強があっという間に感じられた
期待通りの映画でした。
ほんのちょっと前の出来事で
しかも隣国の韓国で
大した主義もない
ごく普通の市民が
人としての良心や善意からの行動で
紛争に巻き込まれていく様や
刃向かうものに軍事政権がとった行動は
とても怖かったです。
二人で伝えた真実と、友情
光州事件を世界に伝えたドイツ人記者と、彼を現場に送り届けた韓国人タクシー運転手。
実話がベース。
本国韓国で大ヒットしたのも納得、これは良かった!
今年の韓国映画BEST作!
まず、光州事件について知っておかないといけない。
1980年5月、韓国・光州市。
クーデターにより軍が実権を掌握。(粛軍クーデター)
それに対し、市民が抵抗した民主化デモ。
死傷者は多数。
韓国では歴史的事件で、度々映画の題材にもなっている。
これまで見た光州事件を扱った作品は歴史/政治的視点で、正直ほとんどちんぷんかんぷんだったが、本作は一庶民の視点で描かれ、非常に見易い。初めてと言っていいくらい光州事件について分かったほど。
主人公は、ソウルのタクシー運転手、マンソプ。
まだ幼い娘と二人暮らしの男やもめ。家賃は滞納。
典型的な貧しい一庶民。
最近ソウルでも多いデモにも無関心。
「全く近頃の若者ときたら、デモする為に大学に入ったのか?」
ましてや、光州で何が起きてるかなんてまるで知らない。
日本で言えば、身近で学生運動が起きていながらも、それについて全く知らないようなもの(…かな?)。
しかし、それも無理はない。何故なら…。
ある時マンソプは、外国人を光州まで送り届ければ大金を貰えるという話を耳にし、ちゃっかりその客を横取り。
その外国人ピーターを乗せ、いざ光州へ。
こんな楽な仕事で大金貰え、何て美味しい!
…でも、何かおかしい。
光州へ入る道至る所に軍人が立ち、入る事が出来ない。
ピーターとひと芝居打ち、やっと光州市内へ。
そこで、見たものは…
軍による市民への圧政。
ソウルなどに知れ渡っている報道とはまるで違う。
暴徒と化した反社会的の市民たちを軍が抑え、軍に死傷者が出ているのではなかったのか…?
実際は、その逆。
圧政を強いる軍に対し市民が立ち向かい、抵抗し、市民の方にこそ多くの死傷者が出ている。
一体ここで、何が起きているんだ…?
軍による市民への暴虐が戦慄。
立ち向かってくる市民に対し、容赦ない暴力。
銃をも向け、射殺。
本来軍人というのは、市民を守るもの。
そんな軍人が、市民を殺戮している。
報道も規制され、その真実が知れ渡らない所か、歪曲されている。
こんなゾッとする光景が、ほんの30数年前、お隣の国で起きていた…。
作品はただ重苦しい社会派ドラマではなく、ユーモアとペーソスもたっぷり。
マンソプとピーターが光州で出会った学生とタクシー運転手。そのタクシー運転手の家で過ごした一夜は、人情劇。
突然、銃声が。表へ出ると、軍の暴虐が続いている。
平凡な日常のすぐ隣に、非日常的な戦慄の光景が。
その現場へ。軍人に学生が捕まり、絶体絶命の状況に。
ほんの数時間前までは、こんな生きるか死ぬかの瀬戸際に立たされるとは思わなかった。
ユーモアとペーソス、シリアスな人間ドラマとサスペンスの織り交ぜが絶妙。
何の抵抗も無く作品の中に引き込まれ、見入ってしまう。
ソン・ガンホが言うまでもなく、名演!
この人間味たっぷりの役柄は、彼の真骨頂!
光州事件の真実は世界に知れ渡る事になったが、ソン・ガンホという名優ももっと世界に知れ渡って欲しい。(日本じゃ映画ファンの間では知らない人は居ないが、果たしてハリウッドでは何人がこの名優を知っている…?)
彼が演じたマンソプの役回りがまたいい!
最初はただの金目当て。
こんな危険な仕事だと知ってたら、引き受けてなかった。(いや、正確に言えば、横取りしてなかった、か…)
さっさと金を貰って、こんな危険な所とはおさらば。娘も待っている。
が…
ひと度この惨状を目の当たりにし、命懸けで抗う人々と知り合い、自分だけ逃げる…?
自分は光州市民じゃない。
娘にも早く会いたい。
でも…
畜生、自分だけ逃げるなんて出来やしない!
今ここで何が起きているか。
その為に犠牲になった人々…。
この事を、伝えなければいけない。ソウルに、韓国中に、世界中に。
そしてタクシー運転手としても、お客さんを送り届けなければならない。
無関心だった主人公に使命感が目覚めていく様は、胸熱くさせる。
ピーターとの国籍を越えた友情も感動的。
ピーターは英語しか話せず、マンソプは英語は片言。
だから最初は、どうもぎこちない。
しかし、一緒にこの惨状を行動する内に…、いちいち言う必要も無いだろう。
それは是非、見て欲しい。
ちょいと最後に触れるが、エンディングの2015年のピーター本人の映像と、二人が再会出来たか否かは、目頭熱くならない訳がないではないか!
光州市内での学生やタクシー運転手との出会いも。
ピーターとの通訳をしてくれた学生。彼はデモに参加しており、最後は…。
マンソプとピーターを逃がす為に、カー・アクションまで繰り広げてくれたタクシー運転手たち。彼らもまた…。
悪政や真実のねじ曲げがずっと続く訳がない。
真実は、必ず伝えられる。そう信じている。
その為に戦った人々、犠牲になった人々。彼らの為にも。
そして真実を伝え、協力してくれた人。
ひょっとしたら、もう二度と会えない事は薄々感じていたかもしれない。
でも、あなたが居たからこそ、この真実を伝える事が出来た。
あなたに会いたい。
それは二人共、同じ気持ちだろう。
再会する事は叶わなかった。
しかし、二人の出会い、二人で伝えた真実、友情は、国も時を越えてーーー。
追記
Wikipediaによると、マンソプは劇中の最後で彼が偽名として使ったキム・サボクというタクシー運転手がモデル。
サボクは光州事件の4年後にガンで死去。
その事は、本作が韓国で公開されてから、息子が名乗り出て明かしたという。
それを知ると、エンディングのピーター本人の映像がまた…(ToT)
色々教えてくれる映画
タクシー運転手の主人公は男手一つで娘を育てているとは言え、それほど誠実なタイプでもなく、滞納した家賃を払うために他人の仕事を取る。それが実はドイツ人ジャーナリストをソウルから光州へ送る仕事で、ジャーナリストにも彼のデタラメな性格をすぐに見抜かれてしまう。
目的地の光州は学生を中心にクーデターか起こり軍や警察が市民を弾圧していて、ジャーナリストはそれを取材するために危険を知りながら来たのだった。
「デモなどせずに勉強に励め」と学生をたしなめていた主人公も、普通の大学生や市民が軍部に次々と銃を向けられるのを黙って見てはいられなくなる。
ジャーナリストから任務をとかれ、主人公が光州を離れて入った食堂で事実と全く違う軍部寄りの報道を耳と目にし、このままには出来ないと光州に舞い戻る。そんな主人公を見て、最初は彼を信用できなかったジャーナリストも、徐々に信頼するようになり、共に光州の人達を助けなければ、という気持ちになる。
光州の人達がジャーナリストに、この状況を世界に伝えてくれ、と託す気持ちに観客も共感、ジャーナリストの有り難みと、その重要な意義を感じる。
途中、某シリーズ映画を連想させる(観てないけど)ようなカーチェイスがあったり、韓国映画らしいエンターテイメント性も忘れず、ソン・ガンホが生むコミカルな要素もある。
ラスト、ジャーナリストがこんなにも一生懸命にタクシー運転手を探しているのに終に名乗り出なかったのは何故か、と考えてしまう。
ジャーナリストが危険地帯に行って起こったことは自己責任だと言い放つ人達に、是非一度観て頂きたい。
情報錯乱の中、自分自信で見極めなければならない事は今も同じ。
1980年実際に起きた軍主体の国家と民主化運動を進めた光州民間人の闘いを、ソウルから来た運転手とドイツ人のジャーナリストが現地を体験する方法にて「光州事件」を映画化。
私としても小さい頃の話だが、日本でニュースを報道していた記憶は無いし、この歳になるまで隣国にてこの様な騒動があったなんて知って心が痛んだ。
光州以外の韓国には民主化暴動と情報が流され、真の場所では軍が民間人を赤呼ばわりで暴行行為。
先日までめげずに明るく食卓を囲んでいた人間が、数日後には拷問死体。何とも哀しくなる状況。
後半になればなるほど目を背けたい実情なのだが、これをしっかり伝えなければと頑張る主人公2人の背中を観ているとこちらもしっかり観なければと思った作品だった。
満点に近い点数を出したかったが、車バトルがいかにも「友情お涙ちょーだい」的で事実に付け足した感があり、私には要らなかった。検問のみにしとけば良かったのに。
情報操作なんて方法違えども、今も溢れている。
この映画から、何事にも都合良い情報だけ入手するのでは無く、時には自分自信で別角度から判断し、他から煽られず、一個人として見極めて行きたいと実感した。
ジャーナリズムものが好きな方にはオススメします。
知らなかった隣国の史実
1980年5月に起こった「光州事件」を描いた韓国映画。
どこまでが史実かは分からないけど、韓国映画らしい迫力とアツさに溢れていて、胸がいっぱいになった。
だらしなくてしょーもなくて憎めない、ソン・ガンホの「小市民のオッサン」感が本当に素晴らしく、それがあるから観客はこの重いテーマをエンターテイメントとして受け入れられるし、事件の凄惨さや後半の彼の葛藤や苦悩もより引き立つように思う。
私はこの事件についてほとんど知識がなかったので、映画を見てからネット記事などで背景を少し読んだ。
今やアジア有数の民主主義国で、日本以上に開かれているようにすら思える隣国が、ほんの40年前まで民主化運動でこんなに苦しんでいたとは…今となっては信じがたい。
そして、この事件が世界中で報道されるようになっても、国内では長年正しい情報が伝えられず、今でも真実について不確実な点が多いらしい。
自国の民衆にためらいなく銃口を向け、丸腰の市民を棍棒で殴る軍人たちに葛藤はなかったんだろうか。
市民側には自分の家族や友達や知り合いがいるとは思わなかったんだろうか。
それにしても、彼のいいかげん英語でのいいがげんなコミュニケーション、「うまく話さなきゃ」とおどおどして口ごもってしまう私には羨ましい限り…。
緑色は自由の色
主役はちょっと昔の緑色のタクシーだ。
スピードもあんまり出なそうだし、馬力も大きくなくて、わりとすぐ具合が悪くなる。
だけど、何でも手動で、メカニカルな楽しさと自由度は今の車よりずっと高い。車に乗せられてる感より、乗ってる感を存分に味わえることでしょう。
緑色は自由の象徴だ。仲間のために疾走するちっちゃな緑色のタクシーは、そのままあの頃の市井の人々だと思った。
20年後、ソン ガンホの運転するタクシーは小綺麗だけどなんだか均一化されたような印象の車だった。
私は自分と照らし合わせ、はたと思った。心の中はいつまでも緑色のタクシーでありたい。
世界の眼
「韓国ほど住みやすい国はない。親に金を出してもらって勉強するために大学に入ったのに、デモなんかするなんてバカバカしい。」みたいなことを言ってるソウルのタクシー運転手の眼から見た世界の光景が、ものすごいテンションとスピードで変わってゆく。軍事政権が市民を凄惨な暴力で弾圧し、マスメディアを統制し、嘘の情報で世論をコントロールする腐りきった世界が、彼のナイーヴな世界の幻想を塗り替えてゆく。その丁寧な描写が素晴らしかった。
タクシー運転手達の、生活感とプライドと愛をあぶり出すような会話とアクションにも胸を打たれた。
過去の政治の酷い過ちを描くことで、世界の今を鋭く批判する。今の日本の映画界にこのような作品を産み出す知性と力があるだろうか?
心が震えた
めちゃくちゃ良かったです。心が震えました。光州事件を初めて知りました。社会派メッセージを中心に描きながらエンターテイメントに優れていて笑いあり、泣けました。軍が市民たちにひどい暴行を加えているシーンはまるでドキュメンタリーを見ているかのようです。
韓国って、、、
韓国に旅行したときに、見知らぬ人々から受けた親切が甦る。韓国の人ってほんとに損得なしに親切で、よくも悪くも感情の吐露が激しくて、同じような顔をした我々日本人とはずいぶん違うなと、知れば知るほど不思議な気持ちになる。
この国は大国に挟まれだいたいいつの歴史を見ても戦っている。だからなのか、市井の人々は耐えることも知っているし、時には無謀な戦いにもあえてでる。そんなことがたった一本の映画からはわかるはずもないのだが、俳優の演技が自然で、この映画での出来事すべてが事実に思える。いい映画だった。
でも色々思い出すにつれて、この国で女性として生きていくのは本当に心根がよくて、堪え性があって、主義主張にいきる男性を支えなくてはいけないなーと暗澹たる気持ちになったことも甦る。だからといって他の国、ましてや我が国がそうではないわけではないのだけど、、、、
盛り過ぎはマイナス。
久し振りの韓国作品(DVDの「フェイク」以来、嗚呼「新感染」も封開けてないや)、
しかも久し振りのガンホ兄貴、ハズレの訳はな買った期待通りの一本。
十二分に映画として良作なのだが、「事実を基にした」という点では終盤30分辺りからの演出が過剰でクドく感じてしまったのが残念。
兄貴が聖人君子ではない小市民を見事に演じているだけに、余計に。
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