王様のためのホログラム : 特集
トム・ハンクス=青春のあなたに絶対見てほしい、“らしさ全開”信頼の1本
「人生はまだまだ大丈夫」、そう教えてくれるハートフルな応援賛歌
「ブリッジ・オブ・スパイ」「ハドソン川の奇跡」「インフェルノ」と、主演作の連続公開が続いている名優トム・ハンクスの最新作「王様のためのホログラム」が、2月10日に全国公開。「クラウド アトラス」のトム・ティクバが監督を務め、ベン・ウィショーも意外なシーンで登場する本作は、どこかコミカルながら誠実な“ハンクスらしさ”が満喫できるハートフル・ドラマだ。
「フォレスト・ガンプ」「ユー・ガット・メール」
「めぐり逢えたら」「ターミナル」
待ってました! この愛すべき“困った笑顔”こそ、映画ファン&監督の安心印
1984年「スプラッシュ」での映画初主演から33年、数々の傑作に主演し、2度のアカデミー主演男優賞(ノミネートは5回)に輝いてきたトム・ハンクス。今や誰もが認める名優として、圧倒的な存在感を誇る存在へと上り詰めた彼だが、80年代、90年代にその活躍をリアルタイムで楽しんできた映画ファン=トム・ハンクス世代にとっては、もっともっと親しみやすい、トホホな状況に陥っては困った笑顔で奔走する、少しコミカルな等身大の役柄を演じていたイメージがきっと強いに違いない。「王様のためのホログラム」は、90年代の「フォレスト・ガンプ 一期一会」「ユー・ガット・メール」「めぐり逢えたら」や、00年代の「ターミナル」など、善良で平凡な男という最もハンクスらしい、安心できるキャラクターを久々に味わえるファン待望の作品だ。
スティーブン・スピルバーグ監督やクリント・イーストウッド監督ほか名匠と呼ばれる多くの監督たちとタッグを組み、濃厚なサスペンス、シリアスなドラマまでこなすハンクスだが、ブレイクのきっかけは、実直ながらもコミカルな青年という役柄を演じた作品の数々だ。メグ・ライアンと共演したラブ・ストーリー、「めぐり逢えたら」「ユー・ガット・メール」のほか、オスカー受賞作となった「フォレスト・ガンプ 一期一会」での誠実な姿に魅了されたファンも多いはず。あの愛すべき“困り顔”が、本作でも再び堪能できるのだ。
1年から2年に1作と、元々出演ペースが早いことで知られるハンクスだが、この約1年を見てみると、16年1月公開の「ブリッジ・オブ・スパイ」を筆頭に、9月の「ハドソン川の奇跡」、10月の「インフェルノ」、そして2月の今作と、実に4本もの主演作が続いている。ハリウッドの代表的俳優が、しかも主演でこれだけの作品を連続公開させているのは、他に例がないのではないだろうか。ハンクス本人がここに来てさらに意欲的になっていること、そしてハンクスの再評価が高まっていることの証明とも言えるだろう。
「王様のためのホログラム」は、ハンクスがデイブ・エガーズによる原作小説を絶賛し、Twitterで投稿したことが映画化のきっかけとなっているが、「クラウド アトラス」でハンクスとタッグを組んだ経験を持つトム・ティクバ監督も別のルートで映画化を画策していたという。監督の中でも「演じられるのはトム・ハンクスだけだ」という思いがあったが、別作品の映像化でティクバとつながりのあったエガーズもまた、「主人公を演じる俳優をひとり選ぶとしたら、死んでもハンクスしかいない」と心に決めていたとか。まさに3人それぞれの思いが完全に一致していたのだ。
エリート人生から転落したサラリーマンが、砂漠の国でハプニング連続──
トム・ハンクスが「出演したい!」と大熱望したベストセラー小説の物語とは?
ハリウッドを代表する名優にして、SNSでは1200万人を超えるフォロワーを誇るハンクスが、12年に大絶賛のツイートを投稿したのが、ニューヨーク・タイムズのベストセラーリストに14週連続でランクインし、ピューリッツァー賞にノミネートされた「驚くべき天才の胸もはりさけんばかりの奮闘記」を記したデイブ・エガーズの(当時の)最新作「王様のためのホログラム」。ハンクスのツイートから4年を経て、アカデミー賞俳優が「ぜひ映画化して、出演したい」と願った渾身作が、「クラウド アトラス」「ラン・ローラ・ラン」の異才監督とのタッグでついに実現した。
業績悪化で大手自動車メーカーの取締役を解任され、家も家族も失ってしまった主人公アラン。愛する娘の学費を払うためにIT業界に転職した彼は、人生の再起を懸けて、サウジアラビアの国王に最先端の映像システム=3Dホログラムをセールスするべく砂漠の国へとやってくる。ところが、オフィスはただのボロのテント、Wi-Fiもつながらなければ、プレゼン相手の国王がいつ現れるのかも分からないという状況。アメリカの常識では太刀打ちできないカルチャー・ギャップの波にさらされ、想像以上のハプニングに翻弄されてしまう。
果たして、アランの運命は!?と、先行き不安な状況に観客たちはハラハラさせられるに違いないが、人生って自分の想像よりは悪い状況には転んではいかないもの。人生のどん底を経験してはいるものの、目の前にある課題を投げ出すこともなく、マイペースだけど誠実に取り組もうとするアランには、運転手を務めてくれる青年や、たまたま病院で診察してもらった女性医師など、“味方”となってくれる人々が徐々に現れる。どんな事態になろうとも、悲観することなく前向きでいられればなんとかなる。本作には、あらゆる人に向けられた温かなメッセージが込められている。
アランの運転手役を演じるスタンダップ・コメディアン出身のアレクサンダー・ブラック(「サイバー諜報員 インテリジェンス」)や、女医役のサリタ・チョウドリー(「ハンガー・ゲーム FINAL:レボリューション」)、「インフェルノ」のデンマーク人女優、シセ・バベット・クヌッセン、「エイリアン」「トップガン」のトム・スケリットら、国際色豊かなキャストに彩られるハートフルな物語はどう転んでいくのか。意外かつ重要なシーンには、「007 スカイフォール」「リリーのすべて」のベン・ウィショーまで登場。最後まで目が離せない。
上手くいかないこと、人間関係、悩み──“沈んだ気持ち”がきっと浄化される
見た後に《前向き》になれる、最新「人生リセット」作品
人生はスムーズに進むばかりじゃない。仕事や学業、人間関係などで悩んでいるときに、見る者に前向きな元気を与えてくれるのもまた、「映画」の力だ。沈んだ気持ちを吹き飛ばして、「色々あるけど、明日からもがんばろうかな」という心持ちにさせてくれるのが、人生の再起を描いた「人生リセット」映画。今作「王様のためのホログラム」も、見る者に元気を与えてくれるおすすめの1作なのだ。
大手自転車メーカーの取締役だったアラン(トム・ハンクス)は、業績悪化の責任を問われて会社の役職から解任され、すべてを失う。娘の養育費を払うため一念発起してIT業界に転職した彼は、一発逆転を懸け、サウジアラビア国王に最新デジタル映像機器である3Dホログラムを導入させるべく彼の地を訪れるが、そこには劣悪な環境とカルチャー・ギャップの嵐が待っていた……。予想外のトラブルの数々に見舞われながらも、誠実な人柄で前向きに進んでいく主人公をハンクスが好演。周囲の人々に助けられながらも再び人生を取り戻してくアランの姿に、見る者もまた前向きな気持ちが湧いてくるはずだ。「クラウド アトラス」のトム・ティクバ監督が再びハンクスとタッグを組んでいる。