アメリカン・ドリーマー 理想の代償
劇場公開日 2015年10月1日
解説
「マージン・コール」「オール・イズ・ロスト 最後の手紙」のJ・C・チャンダー監督が、「インサイド・ルーウィン・デイヴィス 名もなき男の歌」のオスカー・アイザック、「ゼロ・ダーク・サーティ」のジェシカ・チャステインら実力派キャストを迎え、夢を信じてオイルビジネスに全てをかけた男が、わずか30日間で全てを失っていく様を描いたドラマ。1981年、ニューヨーク。移民としてアメリカにやってきたアベルとその妻アナは、生き馬の目を抜くオイル業界で、クリーンなビジネスを信条に会社を立ち上げる。しかし、全財産を事業につぎ込んだ直後、何者かによって商売道具のオイルが強奪されるという事態が発生。立て続けに脱税疑惑、家族への脅迫といったトラブルに襲われる。悪い噂が広まったことで銀行からの融資も受けられなくなり、妻との間にも亀裂が入り始めてしまったアベルは、孤立無援の中で破産を回避するため奔走する。
2014年製作/125分/PG12/アメリカ
原題:A Most Violent Year
配給:ギャガ
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2022年3月26日
PCから投稿
鑑賞方法:試写会
ハリウッド映画的なことを期待すると肩透かしです。
観客を喜ばせるような派手な演出ではないけれど、見応えあります。
豪邸は出てきますが、いかにもハリウッド的な華やかなセレブ描写を期待すると、あまりにも地道すぎて物足りないです。でも危険度はこんな感じなんだろうな。
アクション場面もあり、結構迫力あって、ハリウッドアクションを見過ぎたせいか、勝手に展開予想してハラハラドキドキ。とはいえハリウッドアクションを期待すると物足りません。
サスペンス要素も予告では煽ってくるけど、きわめて現実に近い落とし所です。
予告で煽っている「最後の一手」を「倍返し!!!」みたいなものと期待すると肩透かしです。
障害物だらけの綱渡りを全力疾走している感じ。(驚かす為の驚かしではない)緊迫感はずっと続く。
あくまで社会派ドラマ。
誠実さを守り通して、ビジネスでのし上がろうとする男とその妻の、金策約30日間の物語。そこに色々な魔の手が降りかかる。そのさまざまに向き合い、乗り越えようとする男の生き方・その妻の生き方に焦点を合わせた物語。
だから、なんらかのビジネス、特に大小関わらず一城の主を経験した人なら、我がごとのように感情移入できるのではないでしょうか。
銃で身を守ると言うことについても考えさせてくれます。
清濁合わせもつと言うけれど…この先、権力欲、強欲に取りつかれた人々に取り囲まれて、この夫婦がどのようになっていくのか気になります。(映画は終わっても、人生は続く)
人生の方向性を考えたい時に、また観たい映画です。
☆ ☆ ☆ ☆ ☆
アイザック氏。『ギリシャの消えた嘘』と言い、この映画と言い、渋めのさりげない良い作品の中で、記憶に残る役者だと思っていました。そうしたら、この映画の翌年『スターウォーズ』でブレイク。作品の傾向が違いすぎて驚きました。
チャスティンさん。『ヘルプ』『欲望のバージニア』『オデッセイ』『女神の見えざる手』と、演じる度に違う女性を見せてくれる。出演される映画も幅広く、そのチョイスが好き。
ブレイクした大作の陰に隠れた名作小品を見つけたような気分です。
オンライン試写会で鑑賞。素敵な作品に出会わせて下さいましてありがとうございました。
2021年10月17日
PCから投稿
鑑賞方法:VOD
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ただまっとうな商いを志すことがいかに大変かと言う、ある誠実な経営者の苦難の社会派ドラマ。
石油卸業の世界だから闇取引やカルテル、政治家の買収なども日常茶飯事なのだろう、そんな業界で顧客第一の誠実な商いを社是とする若き経営者を邦題はアメリカン・ドリーマーと半ば皮肉っている、もはや道徳的に生きることが理想とは・・。
原題はA Most Violent Year(最も暴力的な年)で映画の設定の1981年はベトナム戦争後の荒廃もありNYの犯罪率が跳ねあがっていたことを指しています。映画では主人公の会社のタンクローリーが襲われ灯油が頻繁に奪われる事件が象徴的です。事件解決に警察も手いっぱいと放置状態、映画の終わり近くになってやっと犯人を主人公が追い詰めて裏を知るのだが、事件ものと思って観るとテンポが悪すぎてダレてくる。
世の中、綺麗ごとだけでは生きられないという現実も判らないではないがそれが成り立って一時かも知れないがカタルシスを得られるからこその映画でしょう。
主人公の誠実さの裏に妻のしたたかな経理操作とは、築き上げてきた会社はまさに砂上の楼閣、車にぶつかってきた瀕死の鹿、安楽死すら暴力反対の夫はためらうが妻はあっさりと銃でけりをつけてしまうシーンなどを見てしまうと主人公への応援の気持ち、感情移入が虚しくなって辛い、かっての自身のような運転手の若者の自殺すら看過するのみ、なぜこんな皮肉な描き方をたらたら見せるのか、「若者よ現実を見てしたたかに生なさい・・」と言うのが裏テーマなのか、製作・脚本・監督のJ・C・チャンダーの思い入れの真意が今一量りかねる脚色でした。
2021年8月7日
スマートフォンから投稿
鑑賞方法:VOD
アメリカンドリームの背景には、そうではない多くのケースがあることがわかった。それこそがアメリカ社会の特質なのだろう。交渉というものが、ユダヤとかアラブとか中国とかとは違って、現実の力を持って(ラストの主人公のように)、社会や関係を変えていくような力。そのために必要な精神力。
チャステインは、ギャングの娘として、その微妙な中間的地点にいる。クールで強い。そして主人公に惹かれている。
2021年2月6日
スマートフォンから投稿
鑑賞方法:DVD/BD
オイルショック!
…なんて古い流行った言葉があるが、とてもとてもその一言では言い表せない。
オイル業界に挑んだ男が、あっという間に破滅の道へ…。
1981年。妻アナと共にNYへ渡った移民の実業家アベルは、オイル業界に参入する。クリーンなビジネスをモットーに、“アメリカン・ドリーム”を理想としてではなく、信じてーーー。
会社を立ち上げて早々、運転手襲撃。
さらに、脱税疑惑。家宅捜索。
家族への脅迫。
銀行からの融資拒否…。
不運が立て続けに続く。
しかもその間、僅か30日!
この業界に参戦した事が間違いだったのか…?
否。どんな仕事をしようと個人の自由。
不条理なのは、思惑蠢くその業界。
理想を信じれば信じるほど、クリーンであればあるほど、翻弄され、飲み込まれる。
宇宙を駆けるエースパイロットではなく地を這いずり回る苦悩を、オスカー・アイザックが熱演。
普通こういう場合、妻がどんな時も支える。
挫けないで。諦めないで。
しかし、本作は違う。言ってみれば、強妻もしくは悪妻。
夫がクリーンならば、成功する為には夫にも内緒で非情な手も使う。
家族に害が及んだ時、銃を購入する。
自分が守ると反対する夫に言い返すアナ。自分の身は自分で守る。
ジェシカ・チャスティンは本当に強い女性が似合う。
J・C・チャンダーは社会派の才人。
確かに見応えはあるが、好みは分かれるかも。
『マージン・コール』も『オール・イズ・ロスト』もそうだった。
私財を投げ売ってまで挑んだビジネス。
その夢が、脆くも…。
妻との関係も…。
クリーンをモットーにしていた男が選んだ道は、あまりにも皮肉。
邦題は主人公アベルを表したようなタイトル。
原題は“最も激しい年”。
どちらも合っている。
オイルという夢でアメリカン・ドリームを目指した男が行き着いたのは、激しく、皮肉的な…。
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