細雪

劇場公開日:

解説・あらすじ

名匠・市川崑が谷崎潤一郎の同名小説を映画化。名家に生まれ育った四姉妹の三女の縁談を中心に、姉妹それぞれの1年間を四季折々の風物を織り交ぜながら描く。昭和13年。大阪・船場の蒔岡家では、次女・幸子らが三女・雪子に縁談の世話を続けていた。しかし話は一向にまとまらず、雪子本人はのんびりとお嬢さま暮らしを楽しんでいる。一方、5年前に駆け落ち騒ぎを起こした奔放な四女・妙子は、恋人の急逝をきっかけに酒場へ通うようになる。長女・鶴子役に岸惠子、次女・幸子役に佐久間良子、三女・雪子役に吉永小百合、四女・妙子役に古手川祐子と、当時の日本映画界を代表する豪華な顔ぶれがそろった。

1983年製作/140分/日本
配給:東宝
劇場公開日:1983年5月21日

スタッフ・キャスト

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受賞歴

第7回 日本アカデミー賞(1984年)

ノミネート

作品賞  
監督賞 市川崑
助演男優賞 伊丹十三
新人俳優賞 仙道敦子
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映画レビュー

3.5繚乱

2025年6月8日
iPhoneアプリから投稿

四姉妹による含みの多い会話劇で始まる訳であるが緊張感ただならない。逃げ出したくなる。リアルなのか劇中の設定なのか石坂浩二のどっちつかずさの説得力高い。特別出演の岸恵子。ちょっと出るわけではなく助演級の出番の多さであるが、助演ではなく特別としなければならんのであろう。吉永小百合は特別がつかないがその辺の折り合いが気になる。話そのものはそっちのけ。佐久間と岸か岸と佐久間というべきか、会話劇が痛快でもある。それと対照的に凛とした吉永小百合。これも磁力高し。最後に選んだ男が江本。経歴を聞く限り詐欺っぽいのであるが。
東宝五十年に花を添える作品。貴重である。

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Kj

3.5岸さんと、佐久間さんの絡み。岸さんたち姉妹と伊丹さんの絡み。

2025年5月12日
PCから投稿
鑑賞方法:DVD/BD

笑える

単純

癒される

意外にコメディアン的な掛け合い。
本当は出世街道を走っているのに、蒔岡家の中に入ると、婿としての立つ瀬の無さ・卑屈をたっぷりと演じて下さった伊丹さん。
微笑ましくも笑ってしまうようなエピソードが満載。
長女鶴子と、次女幸子のあでやかでたおやかな口喧嘩を始めとする掛け合い。
それだけでも、いつまでも観ていたくなる。
鶴子が気にする親戚筋代表の叔母は三宅さん。小津監督の映画を思い出して笑ってしまう。嫁として右往左往していた方が、今回はご意見番。
 他にも、ここにこの方!とそちらも釘付けになってしまう。

なじみのない、戦前のセレブの暮らしぶり。
お化粧はあんな風にするのか。
和風な部屋と洋風の部屋。吸入器も既にあり、風邪予防に使われていたのか。
炊事場の様子。階段。
絢爛豪華な訪問着や振袖。普段着使いの紬。嫁入り衣装だけでも、どれだけの財力があったのかと。
その他もろもろの意匠にも目を見張ってしまう。

姉妹の物語であり、石坂さんも出演されているので、時折『犬神家の一族』を彷彿とさせる。
家族構成や出演者だけでなく、映像のセンスが似ている。
『雪之丞変化』でも「光と影、究極の芸」と思ったけれど、この映画でも、美しさの見せ方にこだわっている。
 鶴子・幸子が絢爛な帯を部屋いっぱいに広げて、あれやこれやというシーン。最初は、部屋だけ灯りで。周りは黒い額縁のよう。中に入っていくと帯と鶴子・幸子には光が当たり、キラキラしているが、その周りは、薄暗い。美しさ満点。なのに、話題はお腹が鳴る音で、姉妹が笑い転げている。
 そんな、見惚れてしまうようなシーンがそこかしこに。

映画の筋は、ほぼ日常生活を映し出すもの。
まったりとしすぎていて、気を抜くと眠くなる。

それを唯一、かき回してくれるのが、四女(末っ子)妙子。
長い原作をまとめたから仕方がないのだが、この恋人とどうやって関係を深めていったのかが、少々唐突。とはいえ、恋人の選択は、よりましになっていく、その妙子の気持ちの変遷は見て取れるところがすごい。

そして、三女雪子のお見合い。果たして、良い相手は見つかるのかという点でも、一応話を引っ張っていってくれる。

だが、やはり、三女・四女の話は添え物で、主に次女がどう動くのか、それに長女がどう絡むのかが本筋なのであろう。
 長女が移住を決めた時の婿と長女のやり取りが好き。

と、まったりしたこの話の中で、雪子演じる吉永さんが違和感。
 電話にも出られない人見知りでおとなしいけれど、意思は一番頑固という役柄。しかも、電車の中で少年を、姉婿を誘惑しているような表情もあったりして。でも、余裕なく押し黙っていて、不気味な人に見える。表情も張り付いたように硬い。能面の品もなく、ぷるぷる震えて、視線はキョドキョドしている。なのに、姪の悦子に話しかける様子は矢継ぎ早で自分の気持ちを押し付けるばかり。看病の時は、必死さ・心配をしている様子を表したかったのだろうが、なめるように触っている。不審者?橋寺の娘にも、質問攻め。鶴子・幸子のおっとりさは出せなかったのか。

だから、「美しさを堪能しました」にならない。
勿体ない。

原作未読。他の映画化未鑑賞。

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とみいじょん

5.0条件つき満点

2025年2月2日
PCから投稿

近代文学を代表する大谷崎畢生の大作を映像化すること自体に無理があるものの、さすが崑ちゃん、原作のまったりした雰囲気を完璧に映像化しましたが、その剛速球演出を完璧にこなした岸、佐久間両先輩貫禄の大女優演技に脱帽です。

いずれにせよ、文芸作の場合、この作品に限らず原作を読んでいるのが前提なので、読んでいなければ正当な評価はできません。読んでいれば満点です。

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越後屋

3.0四大美女に集中すべし、

2024年11月17日
PCから投稿
鑑賞方法:VOD

知的

原作の小説があまりに面白いので、映画を検索してみてみた。

この巨大な原作を、2時間にまとめるのは、無理なのは分かっていたが、

1年にすべての要素を集約することで、

なんとかまとめあげることには成功したような作品。

それゆえに、原作愛好者は、そこを踏まえて、映画の狙いをしっかりと見極める必要がある。

単純な原作との比較では十分に楽しめない。いや、比較してはならない。

岸恵子、佐久間良子、吉永小百合、古手川祐子の美を堪能することに集中すればいいということである。

ただ、貞之助の名誉のために一言。

映画のように、雪子に横恋慕するような優男ではない。義兄として責任を果たそうとする男気のある好男子である。大洪水のおりの妙子救出の一幕はそれを如実に現している。それに、幸子とは夫婦円満であり、幸子の流産のおりの貞之助の行動は本当にすばらしい。雪子のお見合いについても、義兄としてのサポートは完璧である。貞之助のような男になりたいものだと思う。

映画は大団円だが、原作は決してそのような感じではない。明るい春爛漫のように開幕した物語は、暗い不穏さを醸し出しながら、唐突に終わる。上中下巻の下巻では、谷崎潤一郎の雪子、妙子に対する視線は、耽美性を超える異常さを垣間見る気がしてとってもモヤモヤするのである。

原作未読の方には、是非一読してもらいたいと強く思うものである。

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うさぎさん