コラム:FROM HOLLYWOOD CAFE - 第267回
2015年8月26日更新
第267回:【D23 EXPOレポート】実写映画編
D23 EXPOの2日目の目玉は、実写映画のプレゼンテーションだ。スタートを飾ったのは破竹の勢いを誇るマーベルである。
マーベルは「アイアンマン」(2008)から「アベンジャーズ」(12)までをフェーズ1(第1段階)、「アイアンマン3」(13)から全米公開されたばかりの「アントマン」(15)までをフェーズ2(第2段階)と位置づけている。登壇したマーベル・スタジオのケビン・ファイギ社長はフェーズ2の成功をファンに感謝すると、来年からスタートするフェーズ3の作品紹介をはじめた。
まずは、「キャプテン・アメリカ/シビル・ウォー(原題)」(16年公開)だ。これは「キャプテン・アメリカ」シリーズの第3弾ではあるものの、ミニ「アベンジャーズ」的な作品になっている。ある法案を巡ってアベンジャーズたちが真っ二つになるという展開で、アイアンマンをはじめ、ブラック・ウィドーやホークアイ、アントマンまで参加するのだ。ロケ先のドイツから主演のクリス・エバンスとアンソニー・マッキーが会場に駆けつけてくれた。
次は、ベネディクト・カンバーバッチ主演の「ドクター・ストレンジ」(スコット・デリクソン監督)だ。11月クランクイン予定のためフッテージは存在しないものの、コンセプト画が公開された。ドクター・ストレンジは魔術を使うスーパーヒーローで、「インセプション」のような異次元世界が舞台となることから、かなりワイルドな作品となりそう。「ガーディアンズ・オブ・ギャラクシー」、「アントマン」と、マーベルの単独映画はいずれも攻めているなと感心する。
マーベルの次は、本社であるウォルト・ディズニー・スタジオのプレゼンテーションだ。「アリス・イン・ワンダーランド」の続編「鏡の国のアリス(仮題)」や「美女と野獣」、「ジャングル・ブック」、「ピートとドラゴン」など、自社アニメの実写化が多い。そんななか、もっとも盛り上がったのは人気シリーズ最新作「パイレーツ・オブ・カリビアン5(仮題)」だった。ジョニー・デップがジャック・スパロウとして舞台に登場すると、会場は熱狂の渦に包まれた。あいにく当人はジャック・スパロウになりきっていたため、ディズニー重役とのトークはぐだぐだだったけれども(笑)。
さて、取りを飾ったのはもっとも注目を集めたルーカスフィルムだ。スピンオフ第1弾「ローグ・ワン」(ギャレス・エドワーズ監督)のビジュアルが初公開されたり、「エピソード9」の監督に「ジュラシック・ワールド」のコリン・トレボロウ監督が決定したことが告げられたものの、肝心の「スター・ウォーズ フォースの覚醒」に関して新情報は出てこなかった。キャストが紹介されたあと、ハリソン・フォードがサプライズで登場したくらい。むしろ、アメリカにある2カ所のディズニーランドに「スター・ウォーズ ランド」が建設されると発表されたことのほうがビッグニュースだった。
今回でD23 EXPOへの参加は3回目になるけれど、あらためて「ディズニーファンのための究極イベント」という宣伝文句に偽りはないと思う。ディズニーファン向けのプレゼンテーションではマスコミより先に映画やパークの最新情報が発表されるし、憧れのスターを間近で見ることもできる。コスプレ大会やカラオケ大会、ジェダイ・トレーニングなどイベントが盛りだくさんだし、パビリオンではD23 EXPO限定グッズを購入できる。おまけに体力さえあれば、隣のディズニーランドに繰り出すこともできるのだから。
もっともこのイベントを楽しんだのは、ファンだけじゃないようだ。さまざまなディズニー映画のキャストやスタッフがやってくるので、デップとフォードなど普段は接点のないスターたちも交流を楽しんだようだ。彼らもきっと2年後のD23 EXPOを楽しみにしているに違いない。
筆者紹介
小西未来(こにし・みらい)。1971年生まれ。ゴールデングローブ賞を運営するゴールデングローブ協会に所属する、米LA在住のフィルムメイカー/映画ジャーナリスト。「ガール・クレイジー」(ジェン・バンブリィ著)、「ウォールフラワー」(スティーブン・チョボウスキー著)、「ピクサー流マネジメント術 天才集団はいかにしてヒットを生み出してきたのか」(エド・キャットマル著)などの翻訳を担当。2015年に日本酒ドキュメンタリー「カンパイ!世界が恋する日本酒」を監督、16年7月に日本公開された。ブログ「STOLEN MOMENTS」では、最新のハリウッド映画やお気に入りの海外ドラマ、取材の裏話などを紹介。
Twitter:@miraikonishi