コラム:細野真宏の試写室日記 - 第75回

細野真宏の試写室日記

映画はコケた、大ヒット、など、経済的な視点からも面白いコンテンツが少なくない。そこで「映画の経済的な意味を考えるコラム」を書く。それがこの日記の核です。

また、クリエイター目線で「さすがだな~」と感心する映画も、毎日見ていれば1~2週間に1本くらいは見つかる。本音で薦めたい作品があれば随時紹介します。

更新がないときは、別分野の仕事で忙しいときなのか、あるいは……?(笑)


第75回 試写室日記 「アベンジャーズ エンドゲーム」と「アバター」。勝ったのはどっち?/【番外編】2019年作品でリアルに儲かった、あのメガヒット映画のお金事情 :第9回

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日本の映画では、「個別の作品の利益など、具体的な数字は出さない」という風土が続いています。

その一方で、世界で展開をするハリウッド映画では、制作費などを詳細に公表するのが一般化しています。

昨年2019年作品は、大まかに世界で公開され、まさに今、配信などが行なわれているわけですが、話題作は最終的にどのくらいの利益が出たのでしょうか?

ハリウッドのDeadlineにて、それらのデータが出たので、それを基に今後の動向も合わせて紹介していきます!

そもそも「映画の儲けとは何なのか?」を簡単に解説すると、まず、大きなものに劇場公開で得られる「興行収入」があります。

そして、その後にネットで配信したり、DVD化などをしたり、テレビでの放送権も売ることで「2次使用料」が得られます。

その一方で、映画には制作費がありますし、宣伝やプリント代の「P&A費」もかかりますし、特にハリウッド映画の場合は、ヒットしたらボーナス的に監督や大物キャストに追加で支払われるギャラなどもあったりするので、それらの「プラス」と「マイナス」の結果が、最終的な映画会社の「儲け」となるわけです。

【なお、金額の規模感を分かりやすく示すため、キリの良い「1ドル=100円」として換算します】

≫第1回(第21位~第25位)はこちら
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●第1位

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「ベスト1位」にランクインした作品は、こちらもディズニー配給の「アベンジャーズ エンドゲーム」でした。

これは、「当然の結果」とも言えますよね。

なぜなら、10年ぶりに「世界興行収入歴代1位」の記録更新をしたのですから!

ちなみに、現時点の「世界興行収入歴代ランキングのトップ10」は以下のようになっています。

1位 アベンジャーズ エンドゲーム
2位 アバター
3位 タイタニック
4位 スターウォーズ フォースの覚醒
5位 アベンジャーズ インフィニティ・ウォー
6位 ジュラシック・ワールド
7位 ライオン・キング
8位 アベンジャーズ
9位 ワイルド・スピード SKY MISSION
10位 アナと雪の女王2

このランキングから、世界規模での「アベンジャーズ」シリーズの圧倒的な人気の高さが分かると思います。

とは言え、特に日本は、マーベル作品(マーベル・シネマティック・ユニバース)は、個別の作品では苦戦することが多かった面もありました。

ただ、それぞれの作品の主役が一気に結集する「アベンジャーズ」という枠組みの場合は別でした。

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アイアンマン」から始まった、10年間にも及ぶ「アベンジャーズ」というプロジェクトは画期的で、華やかさのインパクトだけでなく作品自体も壮大なストーリーで非常に面白く、この超大作「アベンジャーズ」シリーズによって、日本も含めて世界的に興味が加速していきました。

日本では、まず最初の2012年の「アベンジャーズ」は興行収入36.1億円と健闘しました。

次に、2015年の第2弾「アベンジャーズ エイジ・オブ・ウルトロン」では興行収入32億1000万円と健闘はしましたが、少しだけ落ちてしまいました。ただ、この作品は、正直、少し出来が劣っていたので、世界的な傾向とも一致していて、世界興行収入歴代ランキング11位が、この「アベンジャーズ エイジ・オブ・ウルトロン」になっています。

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そして、2018年の「アベンジャーズ インフィニティ・ウォー」では興行収入が37.4億円と、再び盛り返しました。

さらに、「アベンジャーズ」という枠組みでは最後となった2019年の「アベンジャーズ エンドゲーム」では、突然、大きな変化が日本でも起こって、上映時間が181分にも及ぶ作品ながら興行収入は61.3億円と飛躍的に数字を伸ばしたのでした!

そんな中での「世界興行収入歴代1位」の記録更新なので、納得できる結果だと言えるでしょう。

とは言え、日本の市場規模を考えると、本来的には余裕で興行収入100億円を突破していても不思議ではないので、今後のマーベル作品(マーベル・シネマティック・ユニバース)の興行の行方に注目ですね。

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さて、「アベンジャーズ エンドゲーム」に超される前は、1997年の「タイタニック」から実に20年以上にわたって世界興行収入歴代1位の称号を得ていたのは、「アバター」の監督でもあるジェームズ・キャメロン監督でした。

今回「世界興行収入」という点では「アベンジャーズ エンドゲーム」に超されましたが、世界興行収入歴代1位の「アベンジャーズ エンドゲーム」と、世界興行収入歴代2位になった「アバター」を比べると、どちらが多くの利益を出しているのでしょうか?

「アベンジャーズ エンドゲーム」と「アバター」は、一体どっちが勝ったのか?

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まず、「アベンジャーズ エンドゲーム」の制作費は、3億5600万ドル(356億円規模)と、2億ドルといった規模とは比較にならない金額になっています!

ちなみに、2012年の「アベンジャーズ」の制作費は2億2000万ドル(220億円規模)だったのです。

これは大成功しているシリーズなので、出演者が増えていったことに加えて、俳優やスタッフへの報酬も跳ね上がっていったわけですね。

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そもそも制作費が3億ドルを超えた作品は数えるほどしかないので、「アベンジャーズ エンドゲーム」は制作費でも歴代1位となっています!

ただ、それだけのコストをかけた結果、世界興行収入は歴代1位となる27億9780万ドル(2797億円規模)も記録することができました。

それらの結果、最終的な利益は、8億9000万ドル(890億円規模)という圧倒的な金額を稼いでいます。

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では、「アバター」の方はどうだったのでしょうか。

まず、「アバター」の制作費は2億5400万ドル(254億円規模)となっていて、かなりの超大作映画ではあったのですが、「アベンジャーズ エンドゲーム」があまりに高額な制作費になってしまったので、制作費の段階で「アバター」の方が1億ドル(100億円規模)も安く済んでいるのです。

そして、「アバター」の世界興行収入は27億8996万ドル(2789億円規模)となっています。

つまり、「アベンジャーズ エンドゲーム」に抜かれた、とは言え、わずか784万ドル(7億8400万円規模)程度の差だったのです。

このように、実は、制作費の圧倒的な違いから、最終的な利益は「アバター」の方がずっと多かったのです!

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さて、そんな「アバター」ですが、2017年から続編の製作が行なわれています。

前作がこれだけのメガヒットを記録したので、「アベンジャーズ」と同様に、俳優やスタッフへの報酬も跳ね上がる面があります。

でも、実は、第1弾とあまり変わらない制作費になりそうな見通しになっているのです!

これは、何と「第2弾から第5弾までの4本もの作品を一気に撮影してしまう」という手法がとられているからです。

通常の映画の場合は、1本ずつ作っていくので、セットを用意したり、俳優を集めたり、といった作業がその都度必要になり制作コストが上がります。

ところが、この「アバター」方式だと、セットや俳優などを毎回用意したりせずに済み、一気に効率よく撮影ができるので1本あたりの制作コストは大きく下げることが可能なのです。

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これは、有名な作品では、アカデミー賞で作品賞、監督賞、脚色賞など「史上最多11部門」を受賞し、日本も含めて世界中で大ヒットした「ロード・オブ・ザ・リング 王の帰還」もその手法をとっていて、あれだけの超大作映画なのに、実は制作費は9400万ドル(94億円規模)と非常に安く済んでいたのでした。

ただ、この方式は良いことだけではなく、もしも第2弾の映画がコケてしまったら、それ以降の第5弾までが悲惨な結末を迎えるリスクもあるのです。

直近では新型コロナウイルスの影響でニュージーランドでの撮影が延期されていますが、アメリカではCG制作の作業は続いています。

そして、第2弾は今のところ2021年12月17日に公開を予定しています。

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果たして、再び世界中で「アバター旋風」を巻き起こして、ジェームズ・キャメロン監督が「アベンジャーズ エンドゲーム」から世界興行収入歴代1位を奪還できるのか注目されます。

さらには、第3弾が2023年12月、第4弾が2025年12月、第5弾が2027年12月と、“2年おき”の公開が予定されていますが、これらも含めて「世界興行収入歴代ランキングのトップ10」はどのように変わっていくのか興味深いです。

ちなみに、ディズニーが20世紀FOX映画を買収したため、この「アバター」もディズニー配給作品となるので、「世界興行収入歴代ランキングのトップ10」がディズニー作品で埋まる日も遠くないのかもしれませんね。

では、次回は、これまでの成功例と“表裏一体の関係”にある「コケてしまった映画」について解説しようと思います。

筆者紹介

細野真宏のコラム

細野真宏(ほその・まさひろ)。経済のニュースをわかりやすく解説した「経済のニュースがよくわかる本『日本経済編』」(小学館)が経済本で日本初のミリオンセラーとなり、ビジネス書のベストセラーランキングで「123週ベスト10入り」(日販調べ)を記録。

 首相直轄の「社会保障国民会議」などの委員も務め、「『未納が増えると年金が破綻する』って誰が言った?」(扶桑社新書) はAmazon.co.jpの年間ベストセラーランキング新書部門1位を獲得。映画と興行収入の関係を解説した「『ONE PIECE』と『相棒』でわかる!細野真宏の世界一わかりやすい投資講座」(文春新書)など累計800万部突破。エンタメ業界に造詣も深く「年間300本以上の試写を見る」を10年以上続けている。
 10年連続完売を記録し続けている『家計ノート2020』が遂に完成し、「老後に2000万円が必要って本当?」も詳しく解説!
Twitter:@hosono_masa

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