【日本公開10周年】「アナと雪の女王」が変えた“10のこと” 第3弾は2026年公開か
2024年3月14日 07:00
いまからちょうど10年前の今日、2014年3月14日に、日本でディズニーアニメーション「アナと雪の女王」が封切られました。当時、公開直後から大ヒットを記録し、国内興行収入は255億円に到達。洋画では「タイタニック」に次ぐ歴代2位、邦画を合わせても歴代3位(当時)の記録となる“アナ雪現象”を巻き起こしました。
興行的な成功に加えて、同作はその革新的な作風で、後のアニメ作品にも多大な影響を与えた重要作に位置づけられています。この記事では、日本公開10周年を迎えた「アナと雪の女王」が映画史において変えた“10のこと”をご紹介します。
「アナと雪の女王」の脚本を担当し、クリス・バックと共同監督も務めたジェニファー・リーは、当時、女性として初めて、ディズニーアニメの長編監督になった人物。現在、同スタジオのチーフ・クリエイティブ・オフィサーとして、現場を統括し、最近では「ウィッシュ」の脚本も手がけている。
当初は、「心の清いヒロインと邪悪な女性ヴィラン」という単純な対決構図が描かれる予定だった「アナと雪の女王」。それでは観客の共感を得られないと、現場が試行錯誤を重ねるなか、バック監督とともにリー監督は、「エルサとアナを姉妹にするのはどうか?」というアイディアを捻り出し、私たちが知る物語へと進化させた。現在は、「ウィッシュ」の共同監督であるファウン・ビーラスンソーンら、女性監督が活躍する場も広がっている。
1937年に製作された世界初の長編カラーアニメ映画「白雪姫」をはじめ、数々の作品に登場する女性の主人公はひとり、というのが基本的だったディズニーアニメ。そんな定説を打ち破り、アナとエルサ、ふたりのヒロインを主人公に迎えたことも、本作の画期的な部分だ。
“愛”を象徴するアナと“恐怖心”を象徴するエルサという対比が、物語に奥行きを与え、女性同士の絆が力強い「シスターフッド映画」としても、ファンの心に深く刻まれることになった。
ディズニーアニメーのヒロインといえば、古くは、明るくて心優しい、清らかで慈悲深いといった印象も強かった。社会情勢の変化に応じ、少しずつ修正が重ねられたディズニーの女性像だが、なかでもエルサの存在は異彩を放っている。触れたものを凍らせる秘密の力を持ち、その力で妹を傷つけてしまうことを恐れ、城の部屋に閉じこもって暮らしてきた。そんな境遇のエルサは、非常に複雑な内面を抱え、影を背負っているのだ。
もしかすると、エルサはヴィランなのかも? そんな不安さえ感じさせる展開から、次第にエルサの「とまどい 傷つき」の葛藤が浮き彫りになることで、観客は「主人公は、完ぺきである必要はない」と気付き、自分の運命を切り開く姿に共感する。これもまた、エルサの特異性であり、魅力といえる。その人気はすさまじく、米タイム誌は、14年に最も影響力があった「架空のキャラクター」の第1位に、エルサを選出している。
ロバート・ロペスとクリステン・アンダーソン=ロペス夫妻による主題歌「Let It Go」は、エルサの存在をより特別なものにし、映画の大ヒットにも大きく貢献。アカデミー主題歌賞を受賞した。
そして、日本では「レット・イット・ゴー ありのままで」のタイトルとなり、エルサの葛藤と、それを乗り越えた先にある意思を「ありのままで」と表現した歌詞が注目を浴びた。この詩的かつ的確な訳詞は、翻訳家・高橋知伽江氏によるもの。オリジナル歌詞の要素をとらえ、イメージを増幅させた名訳は、日本における“アナ雪現象”の起爆剤となり、改めて日本語詞の重要性がクローズアップされることに。14年新語・流行語大賞では、同曲から「ありのままで」「レリゴー」が候補の50語入りし、「ありのままで」が見事トップ10に選ばれた。
ディズニーアニメでは、物語が訴える正義や愛を際立たせるため、ときには主役以上の魅力を放つヴィラン(悪役)が登場する。多くの場合、映画が始まると、すぐに外見や言動から、彼・彼女らがヴィランだと判明するのに対し、「アナと雪の女王」のヴィランであるハンス王子は、礼儀正しく誠実そうな印象。出会ってすぐにアナと意気投合すると、結婚の約束も果たし、アナが危険な旅に出ている間は、アレンデール王国を守るという大役も担った。
しかし、ハンス王子の目的は、アナとの政略結婚で、アレンデールの王位を継承することだった。エルサの氷が直撃し、衰弱するアナを助けようともせず、またアナが命を落とせば、エルサを反逆罪で死刑にできるとまで考える極悪非道ぶり。本作が画期的だったのは、その正体が物語の後半まで隠されていた点だ。公開当時、アナとハンス王子の“運命のキス”を期待していた観客は、大いに裏切られる結果となった。
映画のクライマックス。本性が暴かれたハンス王子に、剣を振り下ろされたエルサをかばったのが、アナだった。その瞬間、氷の魔法がいまだ解けないアナの体は、氷像のように凍りつき、ハンスの剣を砕いた。動かなくなったアナを抱きしめ、泣き崩れるエルサ。すると、アナは元の姿を取り戻し、息を吹き返す。相手を思いやる“真実の愛”こそが、エルサの魔法を制御できる唯一の術だったのだ。
同時に、身を投げ出し、姉を守ろうとしたアナの自己犠牲の精神もまた“真実の愛”であり、アナとエルサは、互いを助けあった――この驚きと感動に満ちた結末は、ディズニーアニメが、王子のキスでプリンセスが目覚める古典的価値観から脱却し、自らの意思で決断し、未来を切り開く女性像を提示することに成功した証だった。「真実の愛には、恐怖心を打ち負かすだけの力がある」。そんな勇気に、世界中の観客が背中を押されたのだ。
公開当時、本作における恋愛要素の希薄さも、ディズニーアニメのファンにとっては、大きな驚きだった。アナはハンス王子と出会ったその日に、結婚を約束するが、一見唐突に思える展開は、両者が末っ子同士(ハンス王子は13兄弟の13番目)で、似た境遇だったことも原因のひとつ。アナにしてみれば、それまでの末っ子暮らしが、息苦しいものだったことを暗に示しているようにも思える。また、氷売りのクリストフが、アナに対して抱く感情も、本作にとって、優先順位の高いものではなかった。
もはや、白馬の王子は不要。本作が打ち立てた価値観は、その後「モアナと伝説の海」(2016)、「ラーヤと龍の王国」(21)、「ウィッシュ」(23)といった作品にも継承されており、一過性のトレンドというよりは、新たなスタンダードとして定着しつつある。
2023年に創立100周年を迎えたウォルト・ディズニー・カンパニー。その歴史は、アニメ製作とともにあったと言っても過言ではない。「白雪姫」をはじめ数々のクラシックを生み出した黎明期、「美女と野獣(1991)」、「アラジン(92)」、「ライオン・キング(94)」といったメガヒット作を連発した90年代前半の絶頂期という2度の黄金期を経た後、長らく不振が続いていたが、「プリンセスと魔法のキス」(09)、「塔の上のラプンツェル」(10)、「シュガー・ラッシュ」(12)といった作品が評価を集め始めた。
そして、ディズニーアニメ復権を決定づけたのが「アナと雪の女王」だった。映画の大ヒットはもちろん、これまでに挙げた革新性が観客・批評家双方から熱く支持され、第86回アカデミー長編アニメ映画賞、第71回ゴールデングローブ賞、第67回英国アカデミー(BAFTA)賞のアニメ映画賞を受賞。アニー賞では作品賞を含む計5部門を制覇し、ディズニーアニメ“3度目の黄金期”到来を世界に知らしめた。
しばしば巻き起こる「アナとエルサは、ディズニープリンセスなのか?」という議論。現在、ディズニーの公式サイトにて、ディズニープリンセスとして13人の女性キャラクターが紹介されているが、そのなかにアナとエルサは含まれておらず、「ディズニープリンセスではない」という結論になる可能性もある。確かにアレンデールの王位に就いたエルサ、その後、エルサから王位を引き継いだアナは、どちらも「女王であり、王女ではない」とは言える。
なお「シュガー・ラッシュ オンライン」(18)には、ディズニープリンセスが一堂に会するシーンがあり、ここでは、白雪姫やシンデレラらと一緒に、アナとエルサの姿も確認できる。
数々の名作を生み出してきたディズニーアニメだが、劇場公開用に続編を製作することには、基本的には消極的だった。映画の世界では、作品が偉大であればあるほど、興行的に「前作超えは難しい」という定説があり、製作には少なからずリスクもある。
しかし、19年に公開された「アナと雪の女王2」は、社会現象を巻き起こした前作を超えて、アニメ映画として世界累計興収歴代1位(約14億5000万ドル)になり、いまもその記録は破られていない(ジョン・ファブロー監督の「ライオン・キング」が上回るが、ディズニーは同作を実写映画とみなしている)。ちなみに現在、長編アニメの世界興収歴代2位は「ザ・スーパーマリオブラザーズ・ムービー」(23)、3位が「アナと雪の女王」である。
そして23年、ウォルト・ディズニー・カンパニーのボブ・アイガーCEOによって「アナと雪の女王」第3弾、第4弾の製作が相次いで正式発表され、注目の的に。いまのところ、ジェニファー・リーが監督を務める予定はない模様だが、ディズニーの公式サイトのインタビュー取材を受けたリーは、「チームが一生懸命仕事に取りかかっていること、一緒に作り上げているストーリーにとても興奮していること、そして、あまりにもスケールが大きいので1本には収まらないかもしれない、ということです」と語っており、第3弾と第4弾が前後編となる可能性が高いようだ。「アナと雪の女王3」(仮題)は、26年に公開される予定になっている。
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