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【「RRR」宣伝の裏側:前編】燃料は惜しみなく投下! 「バーフバリ」の延長線上にあった戦略

2022年12月3日 11:00

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「RRR」
「RRR」
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この“沼”にハマってしまったら、抜け出すことは難しい……。熱狂的信者を生み出し続ける“インド映画の魅力”を伝えていくコラム「熱狂!インド映画天国 この沼はスパイシー!」。前編&後編に分けて取り上げるのは、SNSを中心に絶賛評があふれかえる「RRR」(S・S・ラージャマウリ監督)。本年度のインド映画世界興行収入No.1作品で、オープニング興収5400万ドル(約74億円)を記録。10月21日に日本公開を迎えると「最高濃度の映画体験」に惚れ込んだファンが続出! 初週2日間での洋画興収第1位、日本公開されたインド映画オープニング興収歴代1位となりました。

本記事のテーマとなるのは、宣伝サイドから見た「RRR」ブーム。話をうかがったのは、株式会社ツインの配給営業マネジャー・古田雄揮さんと、宣伝会社マンハッタンピープル・原悠仁さん。前編では、ラージャマウリ監督の代表作「バーフバリ」公開時とのプロモーション比較、実現させたかった企画、近年のインド映画に対する印象などを語ってくれました。


●「バーフバリ」旋風で“燃え上がった火”に燃料を投下! 映画体験そのものをアピール
――「RRR」の宣伝戦略では、どのようなことを意識されたのでしょうか?
古田:宣伝戦略に関しては“「バーフバリ」の延長線上にある”と考えていました。
原:もともとインド映画がお好きな方々は、10年、20年のスパンで愛されていますよね。「バーフバリ」公開時は、その方々に加えて、これまでインド映画に触れてこなかった人たちがそこに加わってってくれた。「RRR」は、そこで形成されたファン層をさらに厚くするという考え方です。コアなファンの間で火がつき、インド映画を知らない人々にも……というのが、通常の流れですが、今回に関しては、「あのラージャマウリ監督が新作撮る!」という情報が出た時点で既に火がついている状態。そこにツインさんと一緒に燃料を投下していく。「燃え上がった炎の何処に導線を作るか?」という感覚に近いかもしれません。ファンの方々の火にのっからせていただいたというイメージです。
古田:「バーフバリ 伝説誕生」の頃、ツインは1度もインド映画を配給したことがない会社でした。最初は劇場のブッキングにも困っていたんです。その当時日本ではまだまだインド映画が根付いていなかった。そして、日本でヒットしたインド映画は、ハートフルな作品が多かった。そのため、どこの興行に持って行っても、なかなか決まらなかったんです。そんななかで、唯一新宿ピカデリーさんだけが「一度限定公開でやってみましょう」とご快諾いただけました。
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古田:最初は1週間限定公開の予定でした。その頃、ちょうと応援上映などを企画・運営されていた「V8Japan」さんと別の作品でご一緒していたんです。「『バーフバリ』を見たら、どういう反応が返ってくるだろう」と思って、実際に見ていただいたら「面白い!」と言っていただいて。宣伝にもご協力していただいた結果、そこからファンの方々に広まって、新宿ピカデリーで1週間満席上映が実現したんです。それでも「バーフバリ 伝説誕生」の公開館数は全部で25館くらいでした 「バーフバリ 王の凱旋」の際は「伝説誕生」の反響を受けて、30館スタート。「ムトゥ 踊るマハラジャ」をヒットに導いた江戸木純さんに宣伝隊長を務めてもらいました。作品を観てくださったファンの皆様の熱量を感じながら監督やキャストの来日、応援上映、完全版の公開など、ファンの皆様の声に応えていった結果、反響がさらに大きくなった。言ってしまえば“映画の力”が全てという感じですが、「RRR」は、そこで培った経験を基にしています。火はついている。だからこそ、色んなところに燃料を投下していった……という感覚です。
原:「バーフバリ」というベースがありつつ「『バーフバリ』以上のヒットを狙う」「インド映画に触れてこなかった人たちを引き込む」というミッションもありました。「RRR」はインド映画、アクション映画とカテゴライズしなくてもいいような……誰が見ても「楽しいものは楽しい」ということを証明してくれるような映画でした。だからこそ“映画体験”そのものをアピールしていきました。実は一番お客さんが入ったのがIMAXのシアターなんです。上映後は、毎回のように拍手が起きていたんですよ。センターに座って、最初に拍手をしてくださる方は、きっと「バーフバリ」も支えてくださったファンの方だと思います。こうやって振り返ってみると、届くべき人の元にはしっかりと届いたのではないかなと考えています。
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●インド映画初心者を取り込むための施策は? 実現させたかった企画も告白
――「インド映画に触れてこなかった人たちを引き込む」というミッションがあったというお話ですが、宣伝ではどのような工夫をされたのでしょうか?
原:発信する側としては、インド映画であることだけでなく、内容の素晴らしさを積極的に発信していくことにしたんです。キャッチコピーも「友情か、使命か」というシンプルなもの。日本の漫画やアニメに通じるような、日本人とは親和性のあるストーリーだったので、そこを押し出していきました。あとは、とにかく絵力がありますよね。インパクトのある映像や画像は、出し惜しみをしないで出しまくる。でも、実際に見てみると「それすらも序の口」という。そのようなテンションを維持していたつもりです。
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――例えば、実現できなかった宣伝企画などはあるのでしょうか?
原:応援上映に関しては、ラージャマウリ作品との相性は抜群です。だからこそ、ラージャマウリ監督が来日しているタイミングでムーブメントを起こしたかったのですが、ご時世的にもタイムラグが生じてしまいました。それとリサーチを進めていくなかで、インドフェスが開催されていることを知りました。そことは、ぜひコラボを実現させたかったです。「RRR」だけではなく、その他のインド映画、さまざまなインド文化のクラスターが皆で楽しめる場を作りたかったのですが、フィジカルなイベントがなかなか開催できなかったのが残念です。来日した監督たちも、毎日のように「応援上映はないのか?」って言っていましたよ(笑)。
古田:前回、監督が来日された際は“絶叫上映”でお出迎えをしたんです。タンバリンをかき鳴らして、ペンライトを振って。非常に感激されていました。だからこそ、今回も“絶叫上映”でお迎えしたかったですし、公開初日に応援上映もやりたかった……というのが正直なところです。実現はできませんでしたが、いつかやりたいなと考えているところです。
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●近年のインド映画から受ける印象は「世界に向けて戦おうとしている」
――近年のインド映画の勢い・傾向についてもお聞かせください。
古田:我々は全てのインド映画を観ているわけではないので、そういったことを話せる立場ではないと思っています……なので非常にコメントに困りますが……(笑)、「バーフバリ」公開以降、弊社で買い付けを検討した作品を見た上で感じるのは、「インド映画は、世界に向けて戦っている」ということです。そして、その先頭に立っているのは間違いなくラージャマウリ監督だと思います。監督がインタビューでも言及されていましたが、「Brahmastra Part One: Shiva」は、アメリカで大ヒットしています。ヒンディー語やテルグ語の映画界とはまた違うカンナダ語映画界から出てきた「KGF:Chapter2」という映画も、インド国内の言語の壁を越えてインド国内で空前の大ヒットをしていて、各国で上映が決まっていると聞いています。本当に面白い映画は言語の壁を超えるんです。インドでは皆さんご存じの通り、膨大な本数の映画が製作されています。それらが今後さらに世界に出ていくとなると、すごいことになるのではないかと思っています。
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原:ラーム・チャランとNTR Jr.がインタビューで話していたことが印象に残っています。インドの中でも言語によって、ボリウッド、コリウッド等、組するところが異なっていますが、ラーム・チャランは「ラージャマウリ監督は言語の壁を取っ払い、インドをひとつにした」と言っていました。一方、NTR Jr.は「監督は『RRR』によって、世界をひとつにしようとしている。インド、ハリウッドというバックグラウンドは関係なく、世界で見てもらえる作品だ」と。2人がそのことを実感しながら参加している。そこがかっこいいなと思いました。

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【「RRR」作品概要】

「バーフバリ」シリーズのS・S・ラージャマウリ監督が、英国植民地時代の激動のインドを舞台に、2人の男の友情と使命がぶつかり合う様を豪快に描くアクションエンタテインメント。「バードシャー テルグの皇帝」のN・T・ラーマ・ラオ・Jr.(通称NTR Jr.)、「マガディーラ 勇者転生」のラーム・チャランが出演。タイトルの「RRR」(読み:アール・アール・アール)は、「Rise(蜂起)」「Roar(咆哮)」「Revolt(反乱)」の頭文字に由来する。

1920年、英国植民地時代のインド。英国軍にさらわれた幼い少女を救うため立ち上がったビームと、大義のため英国政府の警察となったラーマ。それぞれに熱い思いを胸に秘めた2人は敵対する立場にあったが、互いの素性を知らずに、運命に導かれるように出会い、無二の親友となる。しかし、ある事件をきっかけに、2人は友情か使命かの選択を迫られることになる。

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