「パラサイト」ポン・ジュノ監督、歴史的快挙も真摯な姿勢 “聖地巡礼”には陳謝
2020年2月23日 20:37
[映画.com ニュース] 第92回アカデミー賞で作品賞をはじめ4冠に輝いた「パラサイト 半地下の家族」を手がけたポン・ジュノ監督、主演のソン・ガンホが2月23日、東京・千代田区の日本記者クラブで記者会見を行った。
アカデミー賞での歴史的快挙を受けて、実現した緊急来日。会場には開始2時間前から、多くの報道陣が駆けつけ、注目度の高さがうかがえた。ポン監督は「何より多くの観客が熱く支持してくださり、それが受賞につながったことが意義深い」とファンに感謝を伝え、「支持された理由は、私が皆さんにうかがいたいほど。いつも通りの仕事をしただけなので、不思議に思っている」と今も驚きを隠せない様子だ。
日本では2月22日に観客動員220万人、興行収入30億円を突破し、韓国映画として「私の頭の中の消しゴム」以来、15年ぶりに記録を更新したばかり。映画が描く格差問題が取り沙汰されるが、「それ以上に予想を裏切るストーリー展開。そして、俳優の皆さんが醸し出す魅力が熱く訴えかけたのでは」と作品を自己分析した。
また、約5カ月に及んだオスカー・キャンペーンについては「長く複雑なプロセスを経験した」と振り返り、「正直、これだけ時間があれば、新しいシナリオが書けるのにと思うこともあったが、壮大なキャンペーンを通して、作品の魅力や思いが再検証された」と話していた。
現在、映画の舞台となった韓国ソウルの半地下住宅が点在するエリアは、ファンや報道陣による“聖地巡礼”でごった返しているそうで、「その地で生活を営んでいる皆さんに、ご迷惑をかけて申し訳ない気持ち。ぜひ住民の不便や不都合が生じないよう配慮していただければ」と陳謝する場面も。各地で猛威を振るう新型コロナウイルスに話題が及ぶと、「人間が心理的に生み出す不安や偏見のほうが恐ろしい。私自身はこの事態が、克服されると希望的に考えている」と持論を展開した。
ポン監督と4度目のタッグを組んだ、主演のソンは「この作品をきっかけに、現在交流が薄まった日本と韓国が、互いに関心を寄せ、応援し合える関係性が取り戻せれば。近い両国には、すばらしい文化や映画があるのですから」と訴える。「寄生(パラサイト)ではなく共生を描いた映画が、世界中で評価され、メッセージがしっかり伝わったと実感できた。これこそ、映画作りの喜びであり、意義」と熱弁した。
約1時間に及ぶ会見の最後に「映画作りで大切にしていることは?」と問われたポン監督は、「メッセージを声高に、真顔で伝えるのは苦手です。それよりもシネマティックな力を信じている」と語り、「これは言葉にするのは恥ずかしいのですが……」と前置きしながら「評価や成功ではなく、自分が撮った作品が、黒澤明監督の『七人の侍』、アルフレッド・ヒッチコックの『鳥』といった“クラシック”になってほしいと常に願望を持っています。ある種、妄想に近いですが(笑)。そこを目標に、透明な心持ちで映画作りに取り組んでいる」と真摯な姿勢を示していた。
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