「パラサイト 半地下の家族」チェ・ウシク×パク・ソダム、ポン・ジュノ監督は「バスのドライバーのようだった」
2019年12月23日 10:00

[映画.com ニュース] 「グエムル 漢江の怪物」「母なる証明」のポン・ジュノ監督が、ソン・ガンホと4度目のタッグを組んだ「パラサイト 半地下の家族」。第72回カンヌ国際映画祭で韓国映画初となるパルムドールに輝いた本作では、“貧乏一家”の子どもたちに扮したチェ・ウシクとパク・ソダムの好演も見逃してはならない。そんな“若き才能”たちが、ニューヨークの「The Whitby Hotel」で単独インタビューに応じてくれた。(取材・文/細木信宏 Nobuhiro Hosoki)
全員失業中、“半地下”住宅で暮らす貧しいキム一家の長男が、IT企業を経営する超裕福なパク一家の家庭教師になったことから、想像を遥かに超える悲喜劇が展開。主演を務めるソンは貧しい一家の大黒柱キム・ギテク役、チャン・ヘジン(「わたしたち」)は妻キム・チュンスク役、チェは長男のキム・ギウ役、パクは長女のキム・ギジョン役として出演している。劇中で描かれるキム一家の“やり取り”は、非常に自然でリアルなもの。事前にリハーサルを行っていたのだろうか。
「撮影中、僕ら俳優陣は意図的にひとつの部屋にこもり、絆を深めていきました。4人は一緒のホテルに滞在し、皆で何度か飲みに行ったこともありました。家族の触れ合いを無理に作り上げようとはせずに、自然な形でその雰囲気が出来上がっていったんです」(チェ)、「私たちは撮影中、全てのことを共に行い、一緒の時間を過ごしていたから、家族関係を“強制的に作った”という感じがしなかったんです。撮影が終了するまで、家族という意識が自然と保てました」(パク)と振り返る。本作のプロモーションで集まる際には、今でもソンのことを「パパ」と呼んでいるそうだ。

これまで数々のジャンル映画に挑戦してきたポン監督。「パラサイト 半地下の家族」は、その“集大成”ともいえるほど、各ジャンルの要素が詰め込まれている作品と言えるだろう。ポン監督の演出は、何が魅力的なのだろうか。
チェ「(本作には)確かに様々なジャンルの要素が含まれています。でも、ホラー、あるいはスリラーの要素があるからといって、(俳優陣は)意識的に怖がったり、ワクワクしていたわけではなく、あくまで現場を楽しんで演じていた気がします。それは、監督がコメディだからといって“コメディの要素を意識した演出”に限定したくなかったからだと思います。俳優陣は常時素のまま。監督は、バスのドライバーのようだった。道から外れないように、コーナーをしっかり曲がっていました(=僕らを演出していた)」
練りに練られた脚本だったため、即興芝居を加える必要はなし。芝居の手助けとなったのは、ポン監督から事前に手渡されていた絵コンテのような資料だ。「その絵コンテのようなものには、写真が貼られていたり、(俳優の)感情が説明されていました。そして、カメラワーク、カメラアングルも記されていたんだ。カメラワークが事前にわかることで、シーン全体を俯瞰で把握できる。だから、演技がしやすかったのです」とチェは教えてくれた。
そして、キム一家が住む“半地下の家”について「あの家はすごくリアルですが、実際はセットとして建てられたものなんです」(チェ)と明かされると、パクは「部屋でパジャマを着たりして、他の3人と家族として過ごしているうちに、撮影中は“本当の家”のように思えてきました」と告白。また“超裕福”なパク一家の家の構造に関して「実は、階(フロア)によって異なった場所で撮影したんです」と説明してくれた。

エンドクレジットで流れるのは、チェが歌唱を担当し、ポン監督が作詞した楽曲だ。2週間ほどのトレーニングを経て、レコーディングに臨んだチェは「最初、監督が、僕に『エンディング・クレジットの楽曲を歌ってくれ!』と言ってきた時は、ジョークだと思いました」と述懐。「なぜなら、僕は決して歌が上手いわけじゃないですから。(鑑賞する度に)恥ずかしい思いをしています(笑)。でも、楽曲の歌詞自体は『ギウが、家を買うために、どのようにお金を貯めていたのか』というものをつづっている。映画としては意味のある楽曲になったんです」と話してくれた。
韓国での反響を尋ねてみると「監督がパルムドールを手にした時、僕は韓国にいました。授賞式の様子はYouTubeで見ていたのですが、周りにいた映画の関係者は泣いていたし、涙を流す韓国人ジャーナリストもいました。ただ、僕ら俳優陣、おそらく監督もですが、カンヌ国際映画祭での受賞を“ゴール”として目指していたわけではないんです。それでも最高賞(=パルムドール)を獲得できたということが、良い雰囲気、ポジティブな展望をもたらしてくれました」とチェは語る。一方、パクは「カンヌ国際映画祭から(韓国に)戻ってきた際、病気になってしまったのです。だから、授賞式の時間を寝過ごしてしまって……。起きた時には、山ほどのメッセージが携帯に残されていました」と苦笑いを浮かべていた。

米ナショナル・ボード・オブ・レビュー賞、第85回ニューヨーク映画批評家協会賞では外国語映画賞を獲得し、海外メディアが発表している「2019年の映画トップ10」に軒並みランクイン。第77回ゴールデングローブ賞では、監督賞、脚本賞、外国映画賞にノミネートを果たし、オスカー有力の呼び声も高い。高い評価を受け続けている点について、チェは「とても非現実的だし、最初から賞を獲得するとは思っていなかったですから。パルムドール自体も非現実的でした。ただ今、僕らは映画が良い評価を受けていることに喜んでいます。その評価が、俳優としての自信にもつながりました」と述べていた。
「パラサイト 半地下の家族」は12月27日からTOHOシネマズ日比谷、TOHOシネマズ梅田にて先行公開。20年1月10日から全国公開。
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