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エミリー・ブラントが語る「メリー・ポピンズ」が“今戻ってきた理由”とは?

2019年2月1日 12:00

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新たなメリーポピンズ像を確立した エミリー・ブラント
新たなメリーポピンズ像を確立した エミリー・ブラント
(C)2018 Disney Enterprises, Inc. All Rights Reserved 堤博之

[映画.com ニュース] ジュリー・アンドリュース主演でアカデミー賞5部門に輝いた名作ミュージカル「メリー・ポピンズ」(1964)の続編「メリー・ポピンズ リターンズ」が、2月1日から公開中だ。伝説的なキャラクターをアンドリュースから引き継いだのは、イギリス出身の実力派女優エミリー・ブラント。日本公開にあわせて来日し、メリー・ポピンズが“今戻ってきた理由”を語った。(取材・文/編集部)

映画は、第1作の20年後、大恐慌時代の英ロンドンを舞台に、上から目線でエレガントな魔法使いメリー・ポピンズが人々に人生を楽しむことを教えていくさまを、アニメーションを交えて描く。第1作でバンクス家の長男だったマイケルは3人の子どもの父親となっていたが、金銭的な余裕はなく、妻を亡くしてから家は荒れ放題。マイケルの姉ジェーンの助けも空しく、家を失う大ピンチに陥ってしまう。そんな一家の前に、メリー・ポピンズが風に乗って再び舞い降りてくる。

55年前、メリー・ポピンズに向けられた最後のセリフは、ディック・バン・ダイク扮するバートの「Don't stay away too long(また近いうちに会おう)」だった。ブラントは、「近いうち、ではなかったですね!」といたずらっぽく笑いながらも、「彼女は戻ってくるべきときに戻ってきたのだと思います」と確信を持って話す。

「ロブ・マーシャル監督が作ろうとしたのは、もろさを抱えている現代に必要な作品。彼は意図的に1930年代の大恐慌時代を舞台にしたんだと思うんです。原作小説に沿ってということもありますが、人々が非常に苦労していた時代だから。混沌とした社会に求められる秩序を改めて示すために、メリー・ポピンズがやってくる。それをいまこの時代に見せたかったのだと思います」「毎日の生活のなかで幸せや喜びを感じることが些細なことだとは、私はまったく思いません。この作品もメッセージも同じ。日々幸せや喜びを感じて生きることの素晴らしさを教えてくれるんです」

自身がはじめて第1作を見たのは「6~7歳の頃」と言い、「作品の魔法とファンタジーの世界に完全に心を奪われました。ディック・バン・ダイクが本当に可笑しくて、ジュリー・アンドリュースは光り輝くようなパフォーマンスだった」と声を弾ませる。アンドリュースへのリスペクトは尽きないが、模倣にはしたくないとの思いから、起用が決まってから1作目はあえて見返さなかった。ブラントは、P・L・トラバースによる原作小説から役作りを行い、アンドリュースが演じたチャーミングでロマンティックなメリー・ポピンズに、シャープさを足している。

「原作小説のメリー・ポピンズは、映画よりももっと風変わりで、エキセントリックで、ユーモアがあって、すごく失礼(笑)。スタイリッシュで見栄っ張りで、自分だけの世界に入ったりもします。それでいて鋭さや厳しさも持ち合わせている。そんな資質と一緒に、スーパーヒューマンである彼女の人間性、心の広さ、共感力もしっかり伝わるように意識しました。彼女は共感力が本当に高くて、人が求めているものをすぐに察して見返りを求めずに与えてくれる。それでいて何もなかったかのように振る舞って、マジカルな仕事が終われば去っていくんです。高い問題解決能力を持ちながらもマジカルで、地に足が着いた人柄でありながらも空を飛べて、気難しいけれど楽しさも持ち合わせている。その素晴らしい多層構造をきちんと描くことが、この役を演じる上での鍵でした」

一方のアンドリュースも、カメオ出演の依頼を即答で辞退したと、マーシャル監督がアメリカで行われた同作のワールドプレミアで明かしている。理由は、「これはエミリーの作品で、邪魔をしたくないから」。プロデューサーのマーク・プラットは、「今作は第1作とは異なる物語で、時代も違います。観客は、ジュリー・アンドリュースが唯一無二の存在であるように、エミリー・ブラントもまた唯一無二の存在であるとわかることでしょう」と、2作品を比べるのはナンセンスだとしている。

このときのことを、ブラントは「(アンドリュースは)応援してくれて、寛大にもすべてを任せてくれた」と振り返っている。「彼女は今作をすごく気に入ってくれました。愛の込もった美しいメールを監督に送ってくださったんです。これは私たちにとってとても意味のあること。それに、あのジュリー・アンドリュースに気に入ってもらえるなんて、本当にクール! すごく嬉しかったです」

ブラントにとって今作は、マーシャル監督とタッグを組んだ「イントゥ・ザ・ウッズ」(2014)以来のミュージカル映画出演。ダンスナンバーは初挑戦となった。リハーサルには、映画としては異例の9週間を要したという。

「もちろん大変でしたし、みんな筋肉痛がひどい日もありました(笑)。でも、新しいスキルを学ぶのは素晴らしい経験です。今作は、人生をより素晴らしいものにしてくれました。実は、初めて出来上がった作品を見たとき、エンディングですごくエモーショナルになってしまったんです。だって、自分が経験したことが、素晴らしい形になっているのを映像で見られたんですから! こんな作品に携われて本当に誇らしいと思いました」

画像2

しかし、リハーサルに入ったのは第2子を出産した4~5カ月後だったといい、「本当にクレイジーな1年でしたね。撮影にすべての力を出さなければならない一方で、産まれたての赤ちゃんとよちよち歩きの幼児(第1子)もいるし。セットには子役たち、家には自分の子どもたちがいて、絶え間なく子どもに囲まれていました(笑)」

そんな状況下で、夫であり俳優、監督、脚本家でもあるジョン・クラシンスキーは、「(メリー・ポピンズ役を演じることを)喜んでくれて、支えてくれた」とほほ笑む。クラシンスキーが監督、脚本、出演を兼ね、ブラントと夫婦役で共演したホラー「クワイエット・プレイス」(18)は、日本でもスマッシュヒットを飛ばした。

「実は、今作の撮影中に彼はちょうど『クワイエット・プレイス』を執筆中で、私たちはまったく違う世界に生きているみたいでした。私はペンギンと踊っているのに、ジョンは3ページ目で子どもを死なせていたり……(笑)。毎日正反対の体験をしていたから、ディナーでの会話はかなり興味深いものになりましたね(笑)」

今作のオファーを受けたのは、アルコール中毒の女性を演じた「ガール・オン・ザ・トレイン」(16)の撮影中。正反対過ぎるキャラクター像に「すごく笑ってしまいました(笑)」と明かしつつも、それが役者としての醍醐味と感じている。「いろんなジャンル、いろんなキャラクターに挑戦して、まったく違うものを演じることが好きです。これほどのふり幅は初めてだったけれど(笑)、それは演じる者としての喜びでもあるんです」

母、妻、そして女優として生き、必要とあらば地球の反対側までやってくる。忙しい日々を送っていることは想像に容易いが、それでも朗らかな笑顔を絶やさない秘訣は何なのか。自身のブレイクのきっかけとなった「プラダを着た悪魔」(06)で演じたエミリー役の、「私は仕事が大好き、私は仕事が大好き、私は仕事が大好き……」というセリフを引き合いに教えてくれた。

「あのセリフ、もちろん覚えていますよ! ときにはああやって自分に言い聞かせないとダメなときもありますよね(笑)。でも、私は本当にこの仕事が大好き。神に誓って、心の一部だと言えます。こんなにも仕事を愛せるのは、特にいまは、いつ仕事をするのか、どんな作品に関わるのかを細かく選んでいるからだと思います。何かに追われて精神的、肉体的に完全に参ってしまわないようにしたいんです。子どもや家族との時間を重視しているなかで、それでも仕事に行くことを選ぶときは、心底そのプロジェクトを愛しているとき。本当にどうしても出演したい、撮影が待ちきれないと思うような作品ということです」

「高い問題解決能力を持ちながらもマジカル」。尊敬の眼差しで語っていたメリー・ポピンズ像を、ブラント自身のなかに見つけた気がした。

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