【「バードマン」映画ファンの疑問(2)】なぜ字幕が黄色なのか?
2015年4月12日 11:30

[映画.com ニュース] 第87回アカデミー賞で作品賞・監督賞を含む4部門を制した、アレハンドロ・ゴンサレス・イニャリトゥ監督作「バードマン あるいは(無知がもたらす予期せぬ奇跡)」が、4月10日に封切られた。オスカーに輝いた撮影監督エマニュエル・ルベツキによる、話題の長回しに期待を膨らませてスクリーンを見つめた途端、おや? と違和感を覚えなかっただろうか。映像に乗っかる日本語字幕が、見慣れた白色ではなく「黄色の字幕」なのだ。
なぜ、字幕が黄色なのか? 配給を担当した20世紀フォックス映画の担当者によれば「監督の指示」だという。
「へえ、そうなんだ」と納得してしまえばそれまでだが、この答えでは疑問が残る。
前例がないわけではない。社会現象になったウォルト・ディズニーの「アナと雪の女王」は、ブルーレイ版の日本語字幕が黄色になっている。ピクサーの「トイ・ストーリー3」もしかり。「ミッション:インポッシブル ゴースト・プロトコル」(ブラッド・バード監督)のブルーレイでは、「監督の意向」により黄色の字幕になっていると説明されているが、それ以上突っ込んだ理由は語られていない。
ちなみにテレビの字幕放送では、白・黄・シアン(水色)・緑の4色が使用されている。中心的な人物から黄→シアン→緑という順で、話者ごとに色が割り当てられることが一般的だ。
だが、劇場映画の日本語字幕に黄色が採用されるのは極めて異例である。なぜ、イニャリトゥ監督は字幕の色にまで口出ししたのか? なぜ、赤でもなく、青でもなく、黄色なのか?
そこで、映画.comが「バードマン」黄色の字幕問題の真相を予想してみた。
黄色の字幕は、イニャリトゥ監督の飽くなきこだわりのたまもの。白い字幕は、画面が白や明るい色だと非常に読みにくい。メキシコ出身であるイニャリトゥ監督も、映画館でスペイン語字幕を見てそう思った経験があるにちがいない。
実は黄色の字幕は、海外ではそれほど珍しいものではないようだ。クエンティン・タランティーノ監督「イングロリアス・バスターズ」で、フランス語やドイツ語の場面に黄色の英語字幕がつけられていたのを記憶している映画ファンも多いかもしれない。
また、上映形式について徹底したこだわりを見せた監督もいる。「スター・ウォーズ ジェダイの復讐」を劇場で鑑賞したジョージ・ルーカスは、自分の耳で聞いた音響が、意図していたものと全く違っていたことに衝撃を受け、技術認証機関「THX」を立ち上げているし、3D映画ブームの引き金となった「アバター」のジェームズ・キャメロン監督も、鮮明な3D映像を実現するためにデジタルシネマ用映写機「DLP Cinema」の開発に協力していた。
スケールの違いこそあれ、イニャリトゥ監督が、自身の経験をもとにこだわり抜いた結果がこの黄色い字幕ではないだろうか。
黄色の字幕は、作品全体の色彩バランスを考えた結果なのだ。本作のキーアートは赤がベースとなっている。劇中では、青が夢や虚構、嘘などが潜んでいるシーンに使われているという見解がある。そこで足りない色は、やはり黄色だ。
では、劇中に登場する印象的な黄色いものはなんだろう? 思いつくのは、主人公リーガンが主演する舞台の看板だ。看板は、この舞台で人生を取り戻そうと必死になっているリーガンのシンボルともとれる。それにちょっと変則的だが、バードマンのスーツのベルトがある。これは、リーガンの自我を強調するために壮大に見えるゴールド(≒黄色)なんだそうだ。
実は、作品全体のカラーバランスを考えて選ばれた黄色い字幕には、主人公の性格や境遇といった意味合いまで込められているのかもしれない。
黄色の字幕は、ずばり「バットマン」へのオマージュ。映画ファンならご存知の通り、主人公リーガン役のマイケル・キートンは、「バッドマン」「バットマン リターンズ」でタイトルロールを演じた元スーパーヒーロー俳優だ。近年はヒット作どころか主演作すらなかったキートンが、かつてバードマンというヒーロー役で一世を風びしながら、今は過去の栄光を取り戻そうと必死な落ちぶれ役者を演じたのが、本作の肝でもある。
ということで、キートン版バットマンスーツのエンブレムの黄色にちなみ、イニャリトゥ監督は黄色い字幕にしたと考えても、あながち見当違いとは言えないだろう。
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