ある男のレビュー・感想・評価
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これはテーマ、演出、脚本、キャスト全て良い傑作かもしれない。ずっと...
これはテーマ、演出、脚本、キャスト全て良い傑作かもしれない。ずっと追いかけさせらる感じ、そして誰?の先にあるアイデンティティへの問い、ラストシーンの余白、石川監督素晴らしい。もう一回見なきゃかもと思わせてくれる良作でした。
予告編の印象と違う…?
映画の予告では重厚なミステリーかと思ったが、実際は人間ドラマだった。
差別や偏見に苦しめられてきた夫の生涯が段々と浮かび上がってくる。
彼を追いかけるのは在日三世の弁護士で、差別や偏見に苦しめられた側だと想像できる。しかし、その弁護士自身も偏見を持って調査していると思い知らされる展開がよい。
観客も偏見や先入観をもって観ていたのではないか?
物語的には特に悪いというわけではないが、ミステリー的な部分がかなり薄味。
予告編で期待したものとは違った。結局事件については全容がわからないまま終わってしまうので不完全燃焼。ミステリー部分をしっかり作りこんでほしかった。
過去を変える、とは。
単なるミステリーかと思っていたら、社会派の一面もあり、その面ではかなり攻めていて際どい台詞もあって心臓がドキドキしました。
役者陣が皆上手いのでどんどん引き込まれましたが、特に安藤サクラさん!何気ない表情やしぐさで多くを語り彼女の心情を深く表現されていました。
そして妻夫木聡さん、窪田正孝さん、柄本明さん。相乗効果でとても重厚な物語となっています。
意外なラストシーンでぐっと映画的面白さが増しました。深い余韻が残り誰かと語り合いたくなるエンドです。
脇役がいい
最も出演時間が長いのは妻夫木聡だろうが強烈な印象はない。妻夫木聡も重要な役ではあるが、脇役の印象が強く残る映画だった。
安藤サクラ、柄本明などは当然印象に残るが、坂元愛登という子役に注目したい。安藤サクラ演じる宮崎の文房具店の女性の長男という役だが(名前は悠人)、母親の離婚などにより自分の姓が何度も変わることから「僕は一体何なの」と映画のテーマを語るという重要な役を演じている。発言の重要さだけでなくその演技力には抜群のものがあるのではないだろうか。坂元愛登という役者を覚えておきたい。
人が生きていく中での迷宮
冒頭、そしてエンディングに映される、シュールレアリスムの画家:ルネ・マグリットの絵「王様の美術館」が本作を見事に象徴しています。
人は日常の中で知らず知らずのうちに、一定の固定観念に縛られて物事を見聞きしてしまっていて、ほんの少し視点をずらすと、実は全く異なる世界が広がっている、その危ういほどの微妙なバランスの上を綱渡りのように歩んでいるのが人生である、ということを感じさせる作品です。
本作は、芥川賞作家・平野啓一郎のベストセラー小説の映画化ですが、原作にはマグリットの絵は引用されておらず、このカットを入れる、而もファーストシーンとラストシーンに挿入することで、本作に世の中の不条理感と不可思議で無気味な空気感を漂わせることに成功しています。特にラストは奇怪さがより増幅され、背筋が凍る思いで慄然とさせられ、観終えた後、あまり愉快な思いはしませんでした。
前半は、安藤サクラ扮する武本里枝の視点でホームドラマ風に緩く進み、窪田正孝扮する谷口の事故死から、物語は一気にサスペンス調に切り替わります。ただサスペンスドラマのような体裁を取りながら、冒頭に述べましたように、本作は謎を解くことが主たるテーマではありません。それは窪田正孝の目に終始生気がなく、まるで生きている人でない、一種の亡霊のような感覚がするのが、後々への伏線になっていることにつながります。
そして、物語の転機では常に雨が降っているのも象徴的です。またアクションも美しい自然描写も一切ない、人と人との会話により進行する本作のようなストーリー展開では、つい人物の顔の極端な寄せアップを交互に映し、やたらと無意味に緊張感を強調するようなカット割りにしがちなのが、本作では寄せアップは殆どなく、やや引いた落ち着いたカットでつながれます。観客は寛いで観賞できながら、それゆえにいつの間にかスパイラルに社会の不条理性・不可解性の泥濘に取り込まれていきます。
ただむやみに手持ちカメラを多用しますが、これはあまり意味がありません。画面を揺らして不安感と緊張感を高めようとしているのでしょうが、本作に限っては不要です。私は手持ちカメラのカットのたびに平常心に戻り、却って興醒めしていました。
独特の怪しい空気感が漂う、不思議な趣の本作ですが、率直に言って社会問題を余りにも多く揃え広げて見せ過ぎており、その結果焦点がぼけてしまっています。人種差別・夫婦間の不信・親による差別/虐待・仮面夫婦・戸籍交換・・・、深刻で重篤な問題ばかりで、小説なら読みこなせても、2時間の映像にまとめねばならない映画では明らかに盛り込み過ぎており、脚色に大いに難ありと思います。
さて、タイトルにある「ある男」とは一体誰のことか、脚本通りに捉えれば、その正体を追い求めた、自称・谷口大祐のことなのでしょうが、実は主人公である、妻夫木聡扮する城戸章良のことのようにも、或いは柄本明扮する謎の囚人・小見浦憲男にも思えます。
そう、きっと世の人々は遍く仮面を被った日常と他人には見せない裏の顔を持った、“ある男”なのではないでしょうか。
カテゴリー分けと先入観から開放されたい
自分ではない誰か他人の人生を生きたいと思ったことのある人は意外といるんじゃないか。でも、それはただの夢みたいな妄想だ。現実的に元の自分とは違う人間になるために戸籍を買ったり、別の名前で生活するってことは相当な気遣いが必要。犯罪にかかわっていたり、多額の借金から逃れるくらいの理由がないとそんなことはなかなかできない。
亡くなった愛する夫は別人で、なぜ彼は自分とは違う人間になりすましていたのか。その夫の過去を探る話と思っていたが、予告編のミスリードであった。実際の主人公は妻夫木演じる弁護士。いや、もちろんあの夫婦もメインの話ではある。でも帰化した在日韓国人の弁護士が(無意識にではあるが)自分の出自とからめて、ある男(X)の調査にのめり込んでいく話だと感じた。でもだからこそ面白かった。
ある男(X)が何者でなぜ他人になりすましていたかの真相はあまり重要ではなく(とても重く感動的ではあったが)、その人がその人であるための要素ってなんだろうということを問いかけてくるメッセージの方がより強かった気がする。人は、人をカテゴリー分けし、過去や血縁関係等といった先入観で判断しがち。昔から様々な作品で問いかけられているメッセージではある。でも未だに重い。とても深みのある物語だ。
でも、最後のシーンはどうなんだろう。彼が抱える闇の深さはその直前の家族での外食シーンからもうかがえるのだが、あのバーでのやりとりはそこまで必要なシーンだったんだろうか。妻や子どもとの関係もどうなったのかもこちらの判断にゆだねるということなのかもしれないが、若干消化不良になってしまった。
秀逸でした。
原作はもとより、構成、脚色、展開、演技、どれをとっても、久しぶりに良い作品でした。
作家さんの事、作品のことを良く理解していらっしゃる監督さんと脚本家なのでしょうね。
絵画展や最後の脚色も素晴らしく。この作品はこれ以上の作りはないように感じます。
平野さんの作品の中では、割と読みやすい作品ではあるものの、やはり人物描写や背景と展開は緻密で奥深い。相変わらずの天才なのだと思える物ですが、それを良く理解して映像にする意味のある形にしている点が本当に素晴らしい。
日本映画としては、久しぶりにモヤモヤせず。良い作品を鑑賞できたのは、嬉しい。
それと、これは、原作を読んでいる者としては、非常に泣けるものでした。
内容的に難しかったので感想
戸籍を捨てないと生きられない人の身元ロンダリングの話。そのような境遇の人は少ないと思うし私も同様なので、強く共感するには難しい映画だった
その上で、家族や国籍や過去の犯罪歴とか、捨てたい先天的なものを完全に捨てることで前向きに生きれるのなら、それはそれで選択肢として認められてもいい制度だと思う
…あと窪田正孝すごい。
生い立ちが人生を不幸にさせるのはやるせない。差別がない世界になって欲しい。
映画としてとても良く出来ていて見応えある映画でした。
次のシーンの足音を被せる演出は劇中の登場人物の人生の歩みを描いているようでした。
自分の過去をリセットしたい人がリセット出来たとして、幸せになれるかなれないかは、その人の生き方に左右されるわけで、やはり家族によるんだと。互いに愛し合うことが幸せになる近道でそれ以外に術はないのだと思い知らされた。
経済的に満たされていても駄目なんだと。
ラストのよるラストのための映画
先日公開された「母性」で感じたかった胸のゾワゾワが本作にはありました。ものすごい感触...。公開から3週間経ってようやく鑑賞できたわけですが、こりゃ見物。韓国ノワールのような作品です。いや、凄かった。
妻夫木聡、窪田正孝、そして柄本明の怪演。
本作一番の見どころは、間違いなくそこです。
柄本明の登場から物語の雰囲気はガラッと変わり、それと同時に妻夫木聡演じる城戸の様子が変貌。「死刑にいたる病」で味わった狂気に似たものが感じられました。柄本明のおぞましさは流石で、やはり日本映画には彼が必要。そして、妻夫木聡の正気を失ったその姿は「来る」以上で、見ている側も頭がおかしくなりそうになるほど、緊張感溢れる演技を披露。窪田正孝の泣き演技にはとてつもなく胸を締め付けられ、やはりこのような役柄が似合うなと感心。他の役者も良いですが、特にこの3人の演技には圧倒されっぱなしで、高評価に繋がったかと思います。
前半は物語として致し方ないとは言っても、なんだか色々と弱く、飽きはしないけど物足りないってのが正直な感想。妻・里枝の夫に対する思い、夫・大祐の妻に対する思いが全然描かれておらず、この人でなきゃダメだったんだ、こうしてまで君と一緒にいたかったんだ、というのが無い。そのため、サスペンスとしては非常に出来がいいものの、恋愛・家族愛としての質は低く、感情移入が出来ない。もっと長くしてよかったから、そこはきちんと書いて欲しかったな。
しかしながら、後半に差し掛かってからエンジンがかかり、急速に面白くなる。在日、戸籍、死刑問題、それに対する反対運動や反対言動など、色んな要素を盛り込んでいるせいで裏テーマとしては何が言いたかったの?とはなるけど、表面的に見れば単純にめちゃくちゃ面白い人間ドラマだし、伏線回収も上手い。話自体は分かりやすいから支障は無いっちゃ無いんだけど、もっとシンプルでサスペンス一筋!だったらより良かったかも。だけど、ストーリー展開は素晴らしく、今年の日本サスペンス映画ではベスト級に面白いです。
この映画の上手いなぁと思うのは予告。
あの予告じゃ、本当に何も分からない。この結末が予想できるはずがない。特に特報なんて、妻夫木聡がなんの人なのかすら分からないし、すごくよく出来ている。おかげでラストの鳥肌は半端じゃなかった。一つの絵が、一つの映画を見て、全く違うものに見える。お見事な着地点でこりゃ面白い!!!となること間違いなしです。ラストを先に考えて、そこから話を膨らませていったんじゃないかと思うほどに、秀逸な締め方でした。
もっと面白い作品にできた気もするけれど、個人的には大満足。「初恋」ぶりに窪田正孝ボクサーが見れたのも最高に嬉しかった。今年、「さがす」に次ぐ衝撃ラストの日本サスペンス。この機会にぜひ、劇場で。
『誰かの心に残る』ということ
ラストシーンが『世にも奇妙な物語』ぽい感じで、いかにも『物語だよ』『作り話だよ』って引き戻されてしまうんだけど。
『過去を捨てる』ということ、『誰かの心に【強く】残る』ということ、そんなことを考えてしまった。
『涙』で全て表現する感じ?ちょっと『涙』に頼り過ぎ?な感じもしたけど、でも引き込まれる『涙』だった。
子役の子の『涙』が素晴らしかった!!
もちろん窪田正孝さんの演技も素晴らしかった!!
対して、柄本明さんの大阪弁はちょっと違和感。わざわざ大阪弁にせずとも、いいんじゃない?なんて
安藤サクラ
ストーリーもさることながら、役者さんたちの演技がとにかく素晴らしい。
実力派揃いではあるが、中でも安藤サクラの演技には、冒頭から引き込まれた。
特に安藤サクラ演じる里枝と息子のシーンがいい。
偏見、差別、在日、ヘイト、少し重いテーマでいろいろと考えさせられる作品だ。
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