ある男のレビュー・感想・評価
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濃密な衝撃作
2022年~2023年にかけて最も話題になった邦画の一つ。愛する夫を亡くした女性が、夫の死後に彼が別人に成りすましていたことを知り、弁護士に依頼して夫の本当の正体を突き止めようとするという、なんとも複雑なストーリーで、多くの場面で多くの登場人物の感情が混ざり合うコントラストが見事でした。夫は一体何者だったのか、なぜ他人を装っていたのか、それは開けてはいけないパンドラの箱だったのかもしれません。
まず、弁護士を演じる妻夫木聡、離婚後に結婚した夫を亡くした2児の母親役の安藤サクラ、そして素性を隠し別人を名乗っていた謎の男役の窪田正孝、この3人の演技が作り出すシリアスな世界観が素晴らしかったです。過去の回想シーンも多く、ストーリーそのものは複雑ですが、一見和やかな場面でもどことなく緊張感が走っており、終始目を離すことができませんでした。メインの3人を取り巻く人たちも、一人一人が濃いキャラクターを持っていて、一体どんなことをしている場面なのか混乱してしまうこともありました。妻夫木さん演じる弁護士も、途中で本当の目的を見失ってしまうような葛藤が描かれていて、少々感情移入しすぎてしまいましたね。窪田さん演じる謎の男の過去や真相も相まって、どうしても自分と重ねてしまいます。窪田さんのセリフ一つ一つに、一言二言では言い表せないほどの重みを感じました。自分の本当の気持ちと向き合うのってすごく難しいことですが、それがいかに大切なことなのかを教えてもらった気がします。
最後の場面からスタッフロールに画面が切り替わる瞬間に感じた、心に残る衝撃はいまだに忘れていません。よくぞこんな映画に出会えたなとしみじみ思っています。
刺さる刺さる。
重い。愚行録までは行かないけど、同じ監督とあとから知り、やっぱりねとは思いました。
自分の父が殺人をする。それも目の当たりにした少年。悲しすぎる。どうやって受け入れることができるだろう。想像を絶する。しかし事実、加害者家族はいる。被害者もまたいる。共に不幸である。
人類が、犯罪を無くすためにできることは何か、人々と国家が、犯罪、犯罪者と、どう向き合い解決してゆくべきなのか、今、この社会は犯罪を無くすための良い方向に果たして向かっているのだろうか、考えさせられる。
妻夫木聡は、こういう重いテーマが得意なのかな、伝わりますね。今回も驚かされた。終盤、事務所で、旅館の長男を前に抑えてきた感情を初めてあらわにしたシーンに震えた。人間は怒る時は怒らないといけないのだ。泣くときは泣かないといけないのだ。
息子くんがお母さんに僕がお父さんのことを大きくなったら妹に話すよって言ったシーン泣けたな。だってどんな良いお父さんか僕がわかっているからって。そうだ。
人生ってなんでしょうか。長さだけでは無いことは確かというメッセージもある。人はなぜ、不幸になるのだ。しかし幸せになりたいと誰もが懸命に生きる、素晴らしいメッセージ性の強い映画だった。
在日、差別、犯罪と偏見。暗い映画で、何回も見たいとは思わないが、ズシリと刺さる映画で、感動しました。
ただ、最終シーンは必要だったかなあ。妻の不倫(そもそも妻が妻夫木聡とうまくいってる感が最初から無さそう)と、妻夫木聡のなりすます?!謎シーン。
『私は差別しないわよ』という差別。。。
ぜひ、学校の道徳の授業にでも活用してほしい映画。
もっとミステリー調に仕上げることも可能だったはずだが、敢えて硬派な作りにこだわった制作陣の強い想いが随所に散りばめられている。
コンプライアンス重視、多様性尊重…
日本もずいぶん立派な国になったもんだなぁ、なんて思っているお気楽なみなさん、まだまだ、日本は、もとい、世の中には「差別」や「蔑視」がはびこってますよ。と作者は訴えている。
謎解き映画の姿を借りて、人間の悲しい実像を見せられてしまう。
不覚にも涙腺が決壊寸前だったのだが、どうしてだったのかは振り返りたくない。
もう一度観るか、もうやめておくか、悩む。
妻夫木の演技に震える
邦画ならではの陰鬱な空気が全体を支配しており、
個人的にはかなり好みでした。
幸いにして私は別人になりたいと思うような人生ではなかったので、
この映画の根幹となる問題提起には共感しづらい部分もありましたが、
それでもいろいろ考えさせられながら楽しみながら見ました。
この映画、いろいろ賞をもらったようですが、
そらそうだろうなって納得できるくらい、2022年の映画の中では良い出来でした。
妻夫木聡が、仕事なのでニコニコ振舞いながらも怒りを募らせていく演技が圧巻でした。
1点、
カエルの子はカエル、殺人犯の息子は殺人犯みたいなものが根底にあって
それに苦しんでいる・・・ってのは必ずしもそうかなぁと少し気になりました。
人生のスタートからしてハードモードなのは間違いないと思いますが
なんとかやっていけるんじゃないのかなぁ・・と
戸籍を変えたところで自分は自分じゃないのかなぁ・・
でもそれは自分が恵まれてるからそういう立場になってみないとわからないことなのかなぁ
・・・とか
色々考えさせられました。
映る顔
窪田正孝の演技が秀逸。親父似の顔に戦慄する表情がこの男の行動に説得力を与える。説得力といえば真木よう子。艶かしいラインに目移りしていたら、そういう話になるものか。
避けようのない出自と言われなきヘイトがテーマであるが、名を捨てようが捨てまいが、今をただ生きるしかないようである。
X
榎本明の怪演ぶりが物語に緊張感をもたらしてるように感じ、ふと「羊たちの沈黙」(91)のレクターを思い出しました。主人公X(窪田正孝)は、子供の頃の不幸な事件によって自分のアイデンティティを壊されてしまったのでしょう。意外な真相が明らかになってからの谷口里枝(安藤サクラ)の台詞に涙が出ました。なぜか不幸は連鎖する、重苦しい印象が残りました。
この作品を評価する映画業界はまだ終わってないと思った
ストーリーは、正直そこまで広がりがあるものでもなく、過去がわかったところでどうなんだという点に物語が収束してく感じが後半からする。
この物語を普通に演出したら本当につまらない映画になると思う。
勿論、色々な映画の語り方があると思うし、もっと適切な語り方もあるかもしれない。
でも、この危うい物語を映画ならでは表現(しかも派手さのない地味な表現)を使って、そして物語に奥行きと深みを持たせたことはとても凄いと感じた。
物語というより、映画の語り方がとても良い。
正直、この作品が映画業界で評価されるとは思ってもいなかった。
まぁ、アカデミー賞や映画祭ってのは、色々な力のバランスがあるとは思うけど、でもその中でもこの派手さのない作品が結局選ばれたってのはね。いいよね。
小説と同じ位かそれ以上
平野啓一郎の小説は大抵読んでいる。
だいたい映画化すると、残念になる事も多いと言われているが、この映画は小説と同じ位良かった。
安藤サクラは淡々と夫を亡くした妻を演じている。妻夫木聡もいい。
それに柄本明は怪優。あの人が静かに流れる映画の中に不穏な雰囲気を作っている。
亡くなった夫がどう生きてきたのか。
丁寧に描かれている。世の中にはいろんな人が溢れてるけど、こんな風に生きてる人いるかもしれないよね。生き直そうとしてたんだな。
あらすじはやりきれないものだけど、最後は辛く悲しくなんかない。それがいい。
自分とはなにか?
自分が誰であるかの証拠が
自分の人生にいかほどの影響を
与えているのか?
刹那の今からこの先の未来だけをみて
相手と向き合うことの大切さ。
自分が平和沼に陥ってると忘れがちな現実。
期待を裏切らない作品だった。
冒頭の絵画が全てを語っている。
これは映画の世界の話だったか、と
見終わった後に現実と混乱しちゃうくらい
名演な俳優陣でした。
他人の人生
離婚して子連れで故郷に帰った里枝は、林業に従事する大祐と再婚。二人に子供も生まれ幸せにしていたが、事故で大祐は亡くなってしまう。その後、大祐の兄が遺影を見るなり弟ではないと告げる。里枝は城戸弁護士に、死んだ夫の身元調査を依頼し。
真相は想定を大きく超えたものではありませんでした。でも、二人の大祐だけではなく城戸の人物像も掘り下げていて、物語に奥行きがあって良いです。
自分が結婚していた相手は誰なのか? その謎を解くミステリーかと思い...
自分が結婚していた相手は誰なのか?
その謎を解くミステリーかと思いきや現代社会の問題や人間の業などを突きつけられてハラハラではなくゾクゾクした。
安藤サクラが主演なのでは?と思って観ていたのが最後まで観た時にだから妻夫木聡が主演だったんだと理解した。
ちょっとスッキリしない部分もあるから原作も読んでみたい。
ちょうどいいバランス
エンターテイメント的に謎解きしつつ、終始一貫してアイデンティティ、名前について多角的に丁寧に描いてくれていて面白かった。
ポジティブとネガティブそれぞれにちゃんと振りながらバランスも取れており良い
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