劇場公開日 2022年11月18日

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「濃密な衝撃作」ある男 ニンフィア好きさんの映画レビュー(感想・評価)

4.0濃密な衝撃作

2024年2月24日
PCから投稿
鑑賞方法:CS/BS/ケーブル

悲しい

知的

難しい

2022年~2023年にかけて最も話題になった邦画の一つ。愛する夫を亡くした女性が、夫の死後に彼が別人に成りすましていたことを知り、弁護士に依頼して夫の本当の正体を突き止めようとするという、なんとも複雑なストーリーで、多くの場面で多くの登場人物の感情が混ざり合うコントラストが見事でした。夫は一体何者だったのか、なぜ他人を装っていたのか、それは開けてはいけないパンドラの箱だったのかもしれません。

まず、弁護士を演じる妻夫木聡、離婚後に結婚した夫を亡くした2児の母親役の安藤サクラ、そして素性を隠し別人を名乗っていた謎の男役の窪田正孝、この3人の演技が作り出すシリアスな世界観が素晴らしかったです。過去の回想シーンも多く、ストーリーそのものは複雑ですが、一見和やかな場面でもどことなく緊張感が走っており、終始目を離すことができませんでした。メインの3人を取り巻く人たちも、一人一人が濃いキャラクターを持っていて、一体どんなことをしている場面なのか混乱してしまうこともありました。妻夫木さん演じる弁護士も、途中で本当の目的を見失ってしまうような葛藤が描かれていて、少々感情移入しすぎてしまいましたね。窪田さん演じる謎の男の過去や真相も相まって、どうしても自分と重ねてしまいます。窪田さんのセリフ一つ一つに、一言二言では言い表せないほどの重みを感じました。自分の本当の気持ちと向き合うのってすごく難しいことですが、それがいかに大切なことなのかを教えてもらった気がします。

最後の場面からスタッフロールに画面が切り替わる瞬間に感じた、心に残る衝撃はいまだに忘れていません。よくぞこんな映画に出会えたなとしみじみ思っています。

ニンフィア好き