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マイケル・ファスベンダー主演、ということからも「プロメテウス」の続編というのが分かる。「エイリアン」シリーズを知らなくてもいいが、「あの」「プロメテウス」は事前に予習必須、というファン以外はハードな作品。(詳しくはオレの「プロメテウス」評で)しかしおばちゃんノオミ・ラパスの名前はない。あれほど勇んで旅立ったのに。
「エイリアン・コヴェナント」
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「covenant」とは「契約」とか「聖約」といった、宗教的な意味合いが強いモノのようでこのことを知ってると、今回の話はとても分かりやすく、また登場人物、特にアンドロイド・デヴィッドがずいぶん語ってくれるので、前作の、カットしまくりの本編の反省か、今作はずいぶんわかりやすい。
「オジマンディアス」の引用やワーグナーの曲を使ったりして、今作のやりたいことはアンドロイド・デヴィッドにとっての神である人間を滅ぼし、完全なる生命体の「エイリアン」を創造するアンドロイド・デヴィッド(ダビデ)が神になろうとする話だ。
ただこの創造主がゲテモノ好きで性的不能者の女好きだったという。
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興味深いところはたくさんある。
1.これまでのシリーズへのオマージュ
リドリースコットは過去シリーズについて、なかったようにしている、という評論をみたが、そんなはずがない。
そんな了見の狭い人間であれば、これまで彼の作品群に観るようなバラエティ豊かなジャンルの作品を作ることが出来なかっただろう。
1)エイリアン
もちろん、タイトルフォントや、ゴールドスミスの音楽。高身長のややスコットの趣味を疑うルックスの主人公。そしてのそのタンクトップ姿、そしてエイリアン撃退方法。ただこればっかりはもうちょっと何とかしてほしいが。
2)エイリアン2
あまり本筋とは必要がない、惑星からの脱出における、ゼノモーフ成体とのアクションシーンに「2」のリプリーとクイーンがバトルしたパワーローダー風のクレーンで対抗する。
3)エイリアン3
前作「プロメテウス」の主人公ショウ博士がさっさと死んでしまった(という説明)やエイリアン視点でのカメラワーク。
4)エイリアン4
胞子から母体の遺伝子操作で生まれる白い生体が人型まで大きくなったその姿はリプリーから生まれた新種のエイリアンを少し彷彿させるし、今回のデヴィッドが行った遺伝子操作の研究の描写はグロさ含め「4」を思い出させる。
5)その他ゲームやAVPもあるのか
コヴェナント号内での、エイリアンの動きとか、「エンジニア」の星でのデヴィッドの所業など。
2.「2001年宇宙の旅」と「ブレードランナー」
冒頭、白い部屋で人間とアンドロイドとの会話でも想起される「2001年宇宙の旅」では、人間とコンピュータとの対決に人間が勝ち、次への進化に進む話だったが、本作ではアンドロイドが勝ってしまうという。
しかし「ブレードランナー」の新作も同じようなテーマのようなので、案外「ブレードランナー2049」はもう見なくてもいいのか?と思わせるのは果たしていかがなものか。
3.ちゃんとお約束事として、エッチをしているカップルがヤラれる。
リプリーのあのやらしい下着姿を前作ではほんのちょっとだけオマージュしていたが、本作ではなんとシャワーシーンとエッチシーンがホラー映画としてちゃんとある。
そもそもエイリアンの頭部や口は男性器、フェイスハガーの口は女性器をを思わせるものとして有名なので、ようやくここでエッチをしているカップルはヤラれるという王道をしっかり見せてくれている。
リドリーはちゃんと「エイリアンはエロい」ということを分かっている。
「1」はリプリーだけでなく、ランバートへの「しっぽ」が妙にやらしく、ちょっとだけしかその再現がなかったのは残念だが。
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総じて、正直、前作と本作、単体としてはあっまり面白くはないんだけど、2本続けてみると面白い。
だが、すこし、技巧や暗喩にこだわり過ぎて、映画そのものの謎解きではなくって、YOUTUBEに挙がった「最後の晩餐」や、アンドロイド・ウォルターの映像など、映画の解説に面白味を見いだせる人向けになってしまっているのが、惜しい。
そういう意味では、こだわりのない、日本版のポスターのダサさにガッカリ。海外の、ロダンの「地獄の門」風のぐっちょぐちょのポスターが素敵だ。日本版をリドリーが許可したというが、いっそ「そのあたり」の客層を狙う方が、興行的に良い方向に行くのではないかと思うのだが。
また、胞子の病原体の描写も描きすぎ。さらに相変わらずアホな登場人物が数多くいて、緊張感を少々削がれたり、しらけたりもする。
ただし、着陸機の炎上に至るまでの過程や、船長の功を焦る動き、待ってましたのフェイスハガーに至るまでの心理は十分描かれてはいる。
追記
つい最近公開した映画「ライフ」。その思考の浅いどんでん返し風のラストなんかよりもはるかに王道のSFホラーのつくりで、かつ衝撃的なラスト。
その根底には、「エイリアン」シリーズとしての集大成的な表現とリドリー自身作品の集大成的なところもあり、それを老齢ならではの、テーマをも盛り込む。ちょっぴりつまらないアクション表現はあるものの、十分意欲的だ。
さすがである。