色々なところで繰り返し試写会やっていたのに、レビュー数伸びなかったですねぇ。前売り券も、いろいろなチケットショップでかなり値引きされていました。
そういう映画です。(笑)
完成試写会で鑑賞。『東京家族』未鑑賞。
登壇された橋爪さんが日常を描いた映画だと例えをだして説明されていたように、ある家族の日常を切り取った映画です。
家族会議の密室劇ではなく、周りの人々も絡んできます。
ただ、今時家族会議で”あの”店屋物をとるか?というようなちょっと時代錯誤かハイソサエティなおうちの様子が見え隠れして、今の日常というより、”昭和世代”の雰囲気が醸し出されます。(私の周りだったら宅配ピザですね)
画面に登場されるだけで笑ってしまう出演者の方々。この役にこの方?と吹きつつもいつもの定番の安心感という感じ。そういう方々をこういう役に使えるのって、やはり山田監督の偉大さなんだろうと笑いながらも感嘆します。
橋爪さんや吉行さんの、手堅く、老人特有の堅い表情の中に含蓄のある眼差しとか、なんと言ったらよいのか絶妙です。
風吹さんもこんなにきれいだったけ?皺さえ美しい。
他にも、笹野さん・小林さん・鶴瓶さんと登場するだけで笑いを取ります。
監督ご自身の作品を含む色々な作品へのオマージュ?が散りばめられていて、ある意味山田監督の集大成?といった感じです。
でも全体的には悪ノリしすぎたかなぁと思います。
展開される事態はかなり深刻。熟年離婚がテーマ。特に新規な展開もありません。家族のドタバタで見せようとします。
この題材を喜劇にするには料理の仕方が雑すぎるのではないでしょうか?離婚した、もしくは離婚危機の渦中にあるような当事者にはこれをこのように(笑)にされてもといった感じをうけるのではないでしょうか?
また、最近の監督の映画でも感じることですが、監督の言いたいメッセージがストレートで強すぎて…。道徳の教科書?
そんな中で妻夫木さんの雰囲気が一種の清涼剤でした。改めて佇まいの綺麗な役者さんだなと思います。試写会で吉行さんをさりげなく気遣っていらしたのも印象的でした。
そう、私的には妻夫木さんがいつもと違うv
妻夫木さんのカメレオンぶりに驚愕!!それまで妻夫木さんが演じたのはへらへらした大学生(『小さいおうち』)や軽い調子の役柄(『ザマジックアワー』『クワイエットルームにようこそ』)しか私には印象に残っていませんでした。それが、今回は吉岡秀隆さんが演じられても良いような、否、もっと繊細で、思慮深くって、品がいい、それでいて末っ子特有の甘さを醸し出しています。この映画の後は『怒り』『ある男』等、身震いするような演技を披露(若い頃の『ジョゼと虎と魚たち』や『パコと魔法の絵本』もすごい)。改めてすごい役者だなあと思います。
相手役の蒼井さんも黒木さんでもいいかなと一瞬思う役なんだけど、やっぱり蒼井さんじゃなきゃいけない甘さ、それでいて、この登場人物の中で一番ズバッと縺れた糸を切ることができる強さがかかせない。その微妙な匙加減演技が凄いなあと思いました。
けれど。
監督が「マナー無視して笑って」と仰っていらしたけど、本当に吹き出しちゃう映画って、マナー守ろうと思っても吹き出しちゃうよと経験上思います。
日本を代表する役者さん達の共演という意味では、日本を代表する映画の一つなのかもしれません。昭和から繰り返し作られていた映画のあるパターンの映画という意味でもです。
観るんじゃなかったと後悔するほどではないし、そこそこ面白いから観たいと言う方には「いいんじゃない」とお答えするけど、観るべき映画と人に勧めるほどでもない。
飛行場の待合室とか、町内会の催しとかでの上映にはぴったりだと思います。
「『男はつらいよ』から20年」というのがキャッチコピーだけど、誰もが安心して観ていられる、毒にも薬にもならない映画が帰ってきましたって、感じです。