心が通じ合った二人の愛は永遠、というのがメインテーマかな。深く心が通じ合った二人だからこそのセンシングの効果なのだろう。
最新技術により他人の意識の中に入り込むことができるという設定は人間の意識を可視化するというまさに映像クリエイターにとってそのイマジネーションを最大限に発揮できる設定であり、同様の設定ではターセム監督の「ザ・セル」が忘れられない。
かの作品はサイコパスの犯罪者の意識に入り込むという一種お化け屋敷要素の強いサイコスリラーだが、監督の独創的な映像センスと美術、衣装の格調の高さが相俟って一種のアート作品としても評価が高い。
そしてこの設定は観ている観客も同じくイマジネーションが搔き立てられて、鑑賞中これは実はこうではないか、ああではないかといろいろと落ちを想像してしまう。中盤のどんでん返しも誰もが考えた落ちの一つではなかっただろうか。
正直、あの中盤のどんでん返しが作品通して必要だったかは疑問。ただ、やはり人間の心に潜む不安やおそれを映像化するのに長けている黒沢監督だけに前半の恐怖描写は楽しませてもらった。結局主人公は自分の描いた絵におびえてたことになるけどね。
映像的には邦画独特の安っぽさもなく、センシングの機械の描写もSF好きの満足のゆくものだし、終盤の首長竜のCGもよくできてた。それだけに少々残念なのが主人公が車を運転するシーン。今どき景色のスクリーンを背後に映して撮る手法をやるんだと驚いた。あれはいまだに疑問。
原作未読だったので鑑賞中色々と自分なりの結末を想像しながら見れて楽しかった。ちなみに私が考えた結末はセンシングの時間が回数を重ねるごとに長くなってゆき、被験者にとってセンシングが現実になってしまい、戻ってこられなくなる。そして昏睡状態の恋人と同じ意識の中で永遠に二人は暮らしてゆくなんて、「トータルリコール」や「ミッション8ミニッツ」みたいな結末もありかなと思った。