愛、アムール

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劇場公開日:

愛、アムール

解説

ミヒャエル・ハネケ監督が、前作「白いリボン」(2009)に続き2作品連続でカンヌ国際映画祭で最高賞のパルムドールを受賞し、第85回アカデミー賞では外国語映画賞も受賞したドラマ。妻が病に倒れたことで穏やかだった日常が変化していく老夫婦の姿を描く。音楽家夫婦のジョルジュとアンヌは、パリの高級アパルトマンで悠々自適な老後生活を送っていた。しかし、ある日突然、妻のアンヌが病に倒れ、手術も失敗して体が不自由になってしまう。ジョルジュは病院嫌いな妻の願いを聞き、車椅子生活になったアンヌを支えながら自宅で暮らすことを決意。2人はこれまでどおりの生活を続けようとするが、アンヌの病状は悪化していき……。

2012年製作/127分/G/フランス・ドイツ・オーストリア合作
原題:Amour
配給:ロングライド
劇場公開日:2013年3月9日

スタッフ・キャスト

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受賞歴

第85回 アカデミー賞(2013年)

受賞

外国語映画賞  

ノミネート

作品賞  
監督賞 ミヒャエル・ハネケ
主演女優賞 エマニュエル・リバ
脚本賞 ミヒャエル・ハネケ

第70回 ゴールデングローブ賞(2013年)

受賞

最優秀外国語映画賞  

第65回 カンヌ国際映画祭(2012年)

受賞

コンペティション部門
パルムドール ミヒャエル・ハネケ

出品

コンペティション部門
出品作品 ミヒャエル・ハネケ
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(C)2012 Les Films du Losange - X Filme Creative Pool - Wega Film - France 3 Cinema - Ard Degeto - Bayerisher Rundfunk - Westdeutscher Rundfunk

映画レビュー

4.0辛いけど愛の形

2023年7月25日
PCから投稿
鑑賞方法:VOD

泣ける

悲しい

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こまめぞう

2.0高齢化社会ニッポンから見れば表面的で不出来な介護映画

2023年4月15日
PCから投稿
鑑賞方法:CS/BS/ケーブル

作品を観た後、ハネケ監督のインタビューを読み、次の点が印象に残った。

「病気であるとか、死であるとか、そういうものを描いた作品ではなく、これは愛について語られた映画なのです。すでに見た多くの人たちから、観た後は何か慰められた気持ちになって映画館を出ることができた、という言葉を多く聞きました」

ここに言う「愛」は、非キリスト教圏の日本では「夫婦関係」と理解するほうがいいだろう。
本作では、妻が疾病と手術の失敗により、急速に衰弱して人間としての機能を喪失していく。これに伴い夫婦関係が相互交流と互恵から、依存と介護に移行する過程を丹念に追いかけるのが映画の中心である。その意味では本作を「介護映画」と呼んでもいいはずだ。

高齢化社会の日本は世界に冠たる介護先進国であり、すでに半世紀前に『恍惚の人』が社会に衝撃を与えて以来、介護と家族をめぐる映画には事欠かない。もちろんニュースにも介護で離職した人の話や、施設に預けようにも施設がない、施設に入所させる費用がない、自宅介護の挙句離婚した、糞尿に塗れながら介護した、最近では老々介護で共倒れになった…等々という悲惨な話は枚挙に暇がないのである。

そうした先進国ニッポンの視点からは、ハネケの作品は「愛」の名の下に、介護の身体的、精神的、経済的、衛生的にいちばんきつい部分を見ないふりした、表面的で不出来な介護映画にしか見えない。

「観た後は何か慰められた気持ちになって映画館を出ることができた」だって? そりゃあ、痴呆状態の奥さんを縛り付けたり、奥さんが身体や廊下や壁にべったり塗り付けた糞やまき散らしたオシッコを拭き取ったり…という「愛」の最終的な姿を、この作品が描いていないからでしょうよ。

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徒然草枕

2.5認知症の妻の介護をする夫。 いわゆる老々介護を扱っている。 「感動...

2023年4月11日
PCから投稿
鑑賞方法:CS/BS/ケーブル
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省二

5.0「典型」ではなく「人間」の提示

2023年3月24日
iPhoneアプリから投稿

202303 555
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書籍『ミヒャエル・ハネケの映画術』より、一部

デビュー以来、幸せな瞬間を映すことを拒んできたわけではありません。ですが、私の印象ではメインストリームの映画があまりにそれを濫用してきたために、駄作に堕することなくそれらを撮影することが難しいように思われたのです。駄作にならずにポジティブな物事を映す力は、人が手にしている芸術的な力に比例して増大するのだと思います。今日、私がかつてよりも少しばかり軽率に振舞っているのはそのせいかもしれません。私の初期作品であるオーストリア三部作は典型の提示でした。『愛、アムール』の登場人物たちは、典型というよりは人間なのです。それは、『コード・アンノウン』以降の私の映画の変化であるように思われます。この映画にも、『隠された記憶』と同様に、すでに優しさの瞬間があったのではないでしょうか。

連続した固定ショットのモンタージュからなる二つのシークエンス―無人のアパルトマンと絵画―は、それぞれ、脚本執筆の段階から、音楽でフェルマータ(中断、ないしは、ある音や和音、休止の延長を指示する音楽用語)と呼ばれるものが欲しいと感じた時に入れています。辛いシークエンスの後で、画面に少しばかり息抜きを入れるためです。
無人のアパルトマンの連続ショットは、リヴァの入院の直後です。それは、ある瞬間からある瞬間へと、いかにしてすべてが消えてしまうことが起こり得るのかということを示しています。夜の場面なので、不安感が増しています。
絵画の連続ショットは、トランティニャンがリヴァに平手打ちするシークエンスの直後です。彼がリヴァに水を飲ませようとするのに、彼女は死にたいのでコップの中身を吐き出してしまいます。私にとっては、ここが作品中で最も暴力的なシークエンスであり、作品の大きなテーマを問うています。愛する人の苦しみにどう対処するのか。密室から出ることなくそれを表現するのに、無人か、もしくは、世界から遠く離れた二人の人物が書き込まれている広大な風景画のアイデアを思いつきました。私はどんな風景画にしたいかの完全なイメージを持っていて、最初、美術監督のジャン=ヴァンサン・ピュゾが見せてくれたスカンジナヴィア地方の絵画の写真は完璧にイメージ通りでした。しかしそれらの絵画は別々の美術館に所蔵されており、撮影のために持ち出すのは不可能だったので、最終的には別の絵画を選びましたが、スカンジナヴィア地方のものの方が良かったと今でも思っています。

妻を殺す前に彼女に語るサマーキャンプの思い出は、私が体験したことがらです。台所で彼が彼女に語る映画の話も同様です。しかし、それはものを書くとき、人がいつもすることです。私たちは個人的に起きた出来事やいつかどこかで考えたことを再び取り上げます。さもないと、月並みな決まり文句に堕してしまいます。しかし、私個人の人生に由来することを、自分の映画で明らかにする必要は一切感じません。本作で物語った話は私の両親の話ではありません。たとえ、私の母親が何度も自殺を試みたのが事実であったとしてもです。

若きピアニストのアレクサンドルの態度は、今日、若さの盛りにある人々が老いを見せられた時に感じる気詰まりを表しています。彼らは老人たちとどうやって暮らせばいいのかわからないのです。習慣がないのです。かつての若者たちは老人たちの隣にいて、彼らの抱える問題を理解していました。今日、老人の数は増えていますが、彼らは片隅で暮らしています。

ジョルジュは必ずしも死んでいません。彼は単に出ていっただけかもしれない。なぜなら、冒頭のシーンで、玄関の扉は目張りされていませんでした。
私が好むのは、日々の生活の非常に具体的な細部が人間存在の真実に近づかせてくれることです。例えば、作品の冒頭では、映画の観客がコンサートホールの聴衆たちの中にいるアンヌとジョルジュを発見するようにしました。彼らは群集の中にいる二人の人物なのです。なぜなら、彼らの物語は誰にでも訪れることがあるからです。

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Score収録曲

1 即興曲 変ト長調 作品90-3 D899-3 (映画より) / アレクサンドル・タロー
2 即興曲 ハ短調 作品90-1 D899-1 (映画より) / アレクサンドル・タロー
3 バガテル ト短調 作品126-2 (映画より) / アレクサンドル・タロー
4 コラール前奏曲:主イエス・キリストよ、われ汝に呼ばわる BWV639 (映画より) / アレクサンドル・タロー
5 楽興の時 第3番 ヘ短調 作品94-3 D780-3 (追加曲) / アレクサンドル・タロー
6 バガテル イ長調 作品33-4 (追加曲) / アレクサンドル・タロー
7 バガテル ハ長調 作品 33-2 (追加曲) / アレクサンドル・タロー
8 映画からのダイアログ抜粋 シーン1 (アレクサンドル・タロー、エマニュエル・リヴァ、ジャン=ルイ・トランティニャンの対話) (ボーナス)
9 映画からのダイアログ抜粋 シーン2 (ジャン=ルイ・トランティニャン、エマニュエル・リヴァの対話) (ボーナス)

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