明日の記憶

ALLTIME BEST

劇場公開日:2006年5月13日

解説・あらすじ

若年性アルツハイマーを題材にした荻原浩の同名ベストセラー小説を、「トリック」シリーズの堤幸彦監督が映画化した感動作。今年で50歳を迎えるサラリーマンの佐伯雅行は、自分が若年性アルツハイマーに冒されていることを知りがく然とする。徐々に記憶が失われていく厳しい現実に焦りを感じながらも、妻・枝実子に支えられて病気と闘う決意をするが……。「バットマン・ビギンズ」など世界的に活躍する渡辺謙が自らエグゼクティブプロデューサーを務め、主演した。

2006年製作/122分/日本
配給:東映
劇場公開日:2006年5月13日

スタッフ・キャスト

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受賞歴

第30回 日本アカデミー賞(2007年)

受賞

主演男優賞 渡辺謙

ノミネート

作品賞  
脚本賞 砂本量 三浦有為子
主演女優賞 樋口可南子
音楽賞 大島ミチル
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映画レビュー

5.0ボケるのは怖い。 「死」の次に人類が恐れるのが「認知症」ですから。

2025年6月14日
Androidアプリから投稿
鑑賞方法:DVD/BD

ボケるのは怖い。
「死」の次に人類が恐れるのが「認知症」ですから。

高齢化社会です。
映画の世界も洋邦問わずに、このジャンルでの製作と封切りはずいぶんと増えました。

ご両親さまのこと、そしていずれは自分自身のこととして、スクリーンを観ながら、さまざまな想いが胸中に巡るのは当然です。

吾輩、
遺伝子解析のシステム会社に登録をしてあります。
「唾液」を郵送して、さまざま、微に入り細に入り、結果が判明するごとに解析データや論文の出典が、メールで逐次送られてくる あれです。

体格の特徴や毛髪のハゲ具合(笑)他、
花粉症の強弱の傾向や、老眼の進行などは興味津々の診断なのだが、
今後、体内の臓器に起こるであろう重大な疾病についても、発病の予想値が送られてくる。
(ゆえに「申し込みフォーム」には自身の最期について知りたくない人間は申し込みをしてはならない旨、警告がある)。

先日はついに
「あなたは○歳まで生きる可能性が高い○○のグループに属します」との診断とグラフが届いた。
うーむ。そうかー。
点点点・・である。

・・・・・・・・・・・・・

まさかここまで我々の平均寿命が延びるとは、予想できなかったことだ。
前回の東京五輪時 → 67歳
前回の大阪万博時 → 68歳

「死にたくない」との願いは、藁をも掴む思い。
長寿や医療の発達で相当に叶ったこの願望だけれど、そこにはちゃんと“オマケ”が付いてきた。
そしてその“オマケ”は、前もって僕たちにプレゼントされる場合もあるのだ。

この映画「明日の記憶」はそこをドラマにしたものだ。

カミングアウトする患者さんも増えてきて、社会的にも知られるようになってきたこの「若年性認知症」。
自身患者でありながら講演活動や家族へのサポート団体を立ち上げている方もいる。
本作品は、たくさんの取材を経て、ここまでのリアルなストーリーになったのだと思う。

・・・・・・・・・・・・・

《悪あがき対策》のいろいろ。
医薬品とか、サプリメントとか。

◆【レカネバブ】
あれを
“健康補助食品サプリメント”として売り出せばどうなのでしょう?
国から保険診療が認可されたばかりのアルツハイマー型認知症の進行抑制治療薬「レカネバブ」。
脳内に蓄積したアミロイドβを除去してくれます。
これは人類が待ちに待った夢のおクスリではあるのですが
しかし「認知症が始まったことを医者が認めて」「診断書を書かなければ」処方箋は出ない。保険も効かない。
つまり、“一旦は患者にならなければ投薬が受けられない”のです。
なぜ?なんか変な感じがする。ちょっと割り切れませんよね。

実費で年間300万円かかるらしいが、患者さんには健保と高額医療費免除がある。患者とその家族の経済的負担は軽い。

そして単純な私きりんとしては、この夢の新薬「レカネバブ」が、
徐々に溜まっていくアミロイドβの蓄積を阻害し、排出し、その結果、アルツハイマーを“事前に治療”出来るのであれば、《予め》、《予兆が出る前から》、《予防のために》、《早めにスタートして》摂取し始めておいても良いように感じるのだが・・
これは素人考えなのだろうか?

300万ならば、これに飛び付いて自腹で購入する人はいくらでもいるはずなのだ。
こういう①病院の処方と、②個人の自由診療。この二本立てでの販売方法は、新薬の開発費の回収のためにも良策と思えるのだが
どうなのだろう?
実際今のところは「静脈注射の点滴製剤」であるがゆえ、個人販売は難しいのだろうか?

◆【中鎖脂肪酸 MCT特化の食用油】
これ、我が両親のために使っています。
老人ホームでの実験⇒「認知症のお年寄りに摂取してもらって、その前後で記憶力テストに差異が出るかどうかの実験」をNHKで視聴したからです。
番組の中では、ご家族が仰天して笑ってしまうほどの好転が見られたお年寄りもおられました。

中鎖脂肪酸は、元々脳に存在する必須脂肪酸。それが枯渇すると脳が飢餓状態になるのだとドクター。
3時間しか効果が認められないことから毎日3食、日常的に使用する料理油をこれに切り替えるのが良いかと。
スーパーの棚には必ず置いてあります。僕も使っています。
動物たちは経験上でしょうね、それを知っていて、霊長類のチンパンジーは共喰いをする時には相手の脳を食します。

◆「ヤマブシタケ」のサプリメント
我が長野県はキノコ産業の一大産地。
β-グルカンの効用とともに、加齢で損なわれる脳のシナプスへの保全の効果が有るのだと。

ずっと飲んでますが、
この「サプリメント」や「油」の不安は
・効いているのかどうかが分からない事と、
・始めたら最後、これを止めたらどうなるのヨ!って怖気づく事です(笑)

・・・・・・・・・・・・・

犬やネコは、実にじょうずに年を取っていく。
泣いたり騒いだりしないで、自分の老いや死をあんなにも静かに受け入れている。
羨望だ。

渡辺謙と、樋口可南子の、切切たる夫婦の演技。
人の顔は覚えていてもだんだんと名前が出ない。
忘れ物がないかを自分で意識して確かめるようになった。
この身に覚えのある悔しさと恐怖に太刀打ちが出来るか・・。

ラストの あのやり取りと、妻の眼差しに、こちらも言葉を一瞬失ってから、
ゆっくりと、再び歩き始める夫妻の後ろ姿を見送ります。

「若年性認知症」の存在を、ひと事ではなく自分事として知るきっかけの、
大切な映画であったと思います。

・・
・・

特別養護老人ホームの介護職員であった僕からすれば、
かつては喋ったり、 覚えたり、 歩いたりも出来ずに、 トイレにも行けなかった赤ん坊に対して
ただただ、柔らかい笑顔と、穏やかな語りかけと、抱っこと、褒めに褒めちぎったオムツ交換の時の、頰ずりしながらの楽しい話しかけ・・
ああやって僕たちは赤ちゃんに接していた、
あのころに戻れば良いのだと知っているのは幸せなことです。

父は失禁と暴力が始まりました。
一緒にゆっくり歩くこと。
手をつなぎ、抱っこすること。頰ずりすること。
「それが僕たちには出来るよ」
「愛しているよ」と、お互い知っていて、感じるって事って、
幸せなことです。

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きりん

3.5働き盛りでの大病、仕方なくやるせない

2025年4月13日
スマートフォンから投稿
鑑賞方法:TV地上波

悲しい

怖い

難しい

徐々に記憶が曖昧になり、出来てたことが出来なくなっていく恐怖をよく表している。
今2025年では亡くなった俳優や若かりし頃の大御所が出演してるので刮目してみないと見逃す。

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four7777

5.0弱っているときこそ周囲からの見られ方が分かる

2024年8月25日
PCから投稿
鑑賞方法:VOD

 冒頭、アルツハイマー病が進行した佐伯と、その妻の枝実子が、美しい夕焼けの中で思い出の写真を眺めるシーンから、既に名作の雰囲気が漂っていた。辛いだけではない、温かく切ない話なのが、このワンシーンから予見させる。そして期待通り、最後まで惹きつける展開が続く。

 まだ働き盛りで、しかも大プロジェクトのリーダーを務める人間が、自分がアルツハイマーと分かったときの衝撃は想像を絶するものだっただろう。アルツハイマーが進行していく恐怖、そしてそれを決して認めなくない気持ち、患者の尊厳などを、佐伯の視点から描けていたのが秀逸だった。

 佐伯本人が周囲から愛されている人間だということも、今作が魅力的な理由の一つだろう。結婚式の祝辞を任されたり、退職時に部下から花束と自分達の写真(名前入りなのが良い)を渡されたり、妻が献身的にサポートしてくれたりするのは、全て彼が周囲から愛されているがゆえの出来事だ。周囲の思いやりが泣けるシーンだった。弱っているときや権力を持っていないときにこそ、周囲がその人を本当はどう見ているかが分かるのだ。

 今作はキャストも豪華なのが見どころだ。渡辺謙とその妻役の樋口可南子はもちろんのこと、要所要所で香川照之や遠藤憲一などがその存在感を放っていた。

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共感した! 4件)
根岸 圭一

4.5メッセージに嘘がない作品

2024年6月26日
PCから投稿
鑑賞方法:VOD

2006年
当時社会問題となったアルツハイマー病を題材としている作品。
この誰にでも起きる可能性のある病気は、病気を知った自分自身の苦悩よりも当人の家族に大きな影響を与える。
当人にとって知らないということは「無」なので何も感じることはないが、あるはずの記憶が失われてゆくのを実感するのは家族で、その家族の苦悩は耐え難いものと思われる。
このような病気を題材にした作品は非常にたくさん送り出された。
この病気と様々なケースを掛け合わせることが様々な作品ができることが理由だ。
治療できないのでハッピーエンドにはなりにくく、病気をオチにすればミステリーにも成り得るし、若いカップルに仕掛ければ恋愛の最大の敵を作ることができるし、最近では殺し屋に仕掛ける作品まで登場した。
さて、
この作品はそのなかでもオーソドックスの部類 仕事と家族と娘の結婚 幸せの絶頂期の中で主人公に起きた病気
これだけを基本形にすることでこの病気が周囲に与える影響を人々に知って欲しいという思いが見られる。
タイトル「明日の記憶」とは、明日になれば今日の記憶は残っていないかもしれないという意味があるように思われる。
主人公に最初起きた人の名前や映画の名前が思い出せないという誰にでもよくあることに、この病気の恐ろしさと共感と「検査に行こう」という気持ちを誘因させている。おそらくこれが最大のメッセージだろう。実際にこの病気になった家族は、このような先品は見ないと思うからだ。
若年性であれば進行が速いというのを主人公の仕事上の些細なミスによって表現している。
この作品には余計な伏線を極力少なくして、病気になったこととその家族の献身、そして必ず起きる葛藤と感情の爆発を入れながら、家族の選択肢を示している。
冒頭のシーン 斜陽 西日 主人公の最後の記憶を暗示しているようだ。
孫の誕生と成長をコルクボードに張り付ける妻。すでに妻さえわからない主人公 その場所は妻が友人からもらったパンフレットの中の「ホーム」だ。
家族は、当人が何をどこまで覚えているのかを注視しながら探ることが日課になるのだろう。成長した孫娘の写真や娘の結婚式、そして家族写真などとコルクボードを買ってきた妻。日常生活は介護士たちに任せるしかなくなっている。
コルクボードを見ても反応を示さない主人公。そして「えみこ」と彫られたカップにも、もう関心を示すことがなくなっている。
作品の最後に、勝手に外に出掛けて幻想の先生と一緒に焼いたカップ。そのために出掛けたのに、帰り道で妻に合うが、それが誰だかわからない。ただ「想い出のカップ」だけを握りしめていた。そのカップさえも記憶から削除されてしまう悲しさ。
妻は気丈にも夫と一緒に西日を見続けている。できることはもうないようだ。ただ静かに夫と一緒にいることだけだ。
多くの家族がこのようなことになる。それを知った上で検査に行ってくださいと言うのがこの作品のメッセージだと思った。
社会問題化しているこの病気を現実の視点でまっすぐに描いた作品。
作中主人公が部下に対して熱く語っていることこそ、この作品を世の中の人に知って欲しいという思いだと思った。

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