幸福(しあわせ)の黄色いハンカチ
劇場公開日 2010年4月10日
解説
山田洋次監督が高倉健を主演に描く人間ドラマ。共演に倍賞千恵子、武田鉄矢、桃井かおり。失恋して自暴自棄になった鉄也は、新車を買って北海道へ傷心の旅に出る。そこで鉄也は一人旅をしていた朱美のナンパに成功し、さらに2人は海岸で勇作という男と知り合う。旅をともにすることになった3人だが、刑務所から出所したばかりだと話す勇作が、愛妻へ出した葉書のことを語り始め……。2010年、英語リメイク版「イエロー・ハンカチーフ」(08)の日本公開にあわせ、デジタルリマスター版がリバイバル公開された。
1977年製作/108分/G/日本
配給:松竹
日本初公開:1977年10月1日
スタッフ・キャスト
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昔の漢は「不器用」=「男らしい」の印象。
平成生まれの俺が、30歳でこの映画を観るまでは、そんなのが「男らしい」とは「時代が違うわ」と思っていた。
昔の人の男らしさって、とことん男目線で見ての男らしさなんやろうなー
口下手で、人には厳しく、自分は逃げて、キレたら歯止めが効かんくなって‥それでも女が待ってる。
女に気を効かせんでも、自分勝手やっても女が離れん。
細かいことは抜きにして、男として凄い。
これこそまさに、"男らしい"
2021年10月20日
PCから投稿
鑑賞方法:VOD
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後半、目頭が異常を起こしてずっと頭が痛くなるくらい泣けてくる映画。
やっぱり何度観てもこの映画は好きです。
序盤から一本気の男くささの権化のような勇作(高倉健)と、情けない恥ずかしい、そしてみっともないの3拍子が揃った欽也(武田鉄矢)のはまり様。
もう欽也のダメ加減と言ったら見ているだけでこちらが居た堪れない気持ちになってくるくらい。
ミーハーで、かっこつけで、プライドが高くて、威勢は良いのに喧嘩が弱くて、思い込みが激しくて、女のケツばかり追いかけて、おまけに調子乗りでガサツな上に見た目も悪い。
いたよな、こんな奴。
でも、こんな距離を置きたい奴にも拘らず、実は純粋で涙もろく情に厚かったりする。
そして根っこは優しくて、誰かを助ける事にまっすぐに向き合えたりする。
そんな欽也の成長物語でありつつ、完璧としか思えない勇作の「実は。。。」という謎めいた過去が3つくらい出てくる一人の男の強さも弱さも丸裸にして行くような悲哀に満ちた話でもあり、もう一人、朱美(桃井かおり)に関しても色々とドラマはあるのだけれど、もうそこはすっ飛ばして欽也と朱美が純愛に落ちていくラブストーリーでもあり。
それを偶然北海道で出会った3人の3日間の旅で描いてしまうっていうのがまた、良く出来たシナリオだと思います。
序盤は本当に、キラキラした目で見てしまう勇作と、冷めた目で見てしまう欽也という解り易い二人の関係でしかないのですが、後半に入って勇作がひより始めてグズグズしてくるのにつれ、欽也の方は一直線に前だけを向き、調子に乗って勇作を叱ったりする。
思わず欽也に「おい!」と言いたくなるが、どう考えても欽也が正しくて勇作が悪いのだから仕方がない。
ただ、ここで朱美が正反対の二人を取り持つ役どころとして、本当にいい仲裁をしていく。
いや、ほんとこの辺りの3人のバランスがラストにかけて絶妙になっていく一体感も堪らない。
ロードムービーって、ほんとこれだよな。という醍醐味も最高に味わえます。
でも勇作も完璧だと思ったのに、過去を振り返ると酷すぎる。これが。
光枝(倍賞千恵子)じゃなくても「あんたって勝手な人だねぇ。」と泣きたくなるくらい。
「不器用だから。」で許されるのも夕張に向かい始めるまで、向かってからのグズグズ具合はウジウジに近い。
『草野球のキャッチャー』っていうのは本当にこういう人の事を言うんだと思うくらい。
けれど、そんな今にも身投げするんじゃないか?と心配になる様なボロボロの勇作だからこそ、ラストの破壊力がとんでもなく凄い。
何が凄いってハンカチの枚数が凄い!
過去のやり取りでハンカチ1枚を想像していたのに、一面にはためく黄色いハンカチ。
もう見た瞬間に涙、涙、涙。。。
そして、この後の展開も良すぎる。
道端に車を止めて、優しく抱き合いながらキスする欽也と朱美。
もう、欽ちゃん大好きって、あっさり言わせてしまうこのラストシーンがまた最高過ぎる。
そんな感じで、最高に泣けて幸せになれて、男としてのかっこよさも感じられるいい映画なんですが、このどれだけ時代が経っても色褪せない感っていうのは凄いですよね。
特に欽也なんて、僕が産まれた頃の若者、勇作の世代からは異星人と思われるような新人類。
けれど、その世代に育てられ、とうに40も超えた自分が見ても、いつの時代も若さ故の見苦しさ、みっともなさ、情けなさってこんな男だよな。と思いつつ、とは言え、自分の過去を振り返っても、身に覚えがないとも言えず、少し同情した気持ちも感じてしまう。
そんな男の気恥ずかしさを何十年経っても思い起こさせる武田鉄矢の熱演ぶりは、普遍的で時代を超越した存在感のように感じます。
多分、この辺りは女性が朱美を見て気恥ずかしく感じたりする部分もあるんじゃないか?と思いながら。
きっと男が勇作には憧れるけれど欽也には同情してしまうように、女性には光江には 憧れる けれど朱美には同情してしまうという気持ちがあるんじゃないだろうか?
それから、演出もひたすら感心するのが夕張に近付くにつれ道端にある黄色が目立つようになるところ。
標識やら、看板やら、歩く人々の洋服やら、ラストへの暗示の様に黄色を意識させていく展開が納得と言うか面白いと言うか。
こう、3人の感情が一体感を増して進んでいく様が黄色を求める目線に乗り移っていくかのような。
果たしてこれにそういった効果まであるのか?はともかく、今黄色を見付けないといけないという切迫した思いが受け手に乗り移って来そうな熱意は凄く伝わったような気がして、個人的にこの演出も絶妙だと感じました。
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2021年7月29日
PCから投稿
鑑賞方法:CS/BS/ケーブル
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福岡飯塚の直情型暴れん坊が夕張に出てきて
喋るまで半年
流産きっかけでまたキレてしょうもない殺人
あんたって、あんたって勝手な人だねぇ
一緒になる時も
別れる時も(泣
九州男児が吐いた唾のむなやー!
意気地がないって武田鉄矢に言われるし
桃井かおりに説得される
2021年7月17日
PCから投稿
鑑賞方法:DVD/BD
寡黙で背中で語る印象が強い健さん。
でも、この映画の役では、食べる・説教する・グジグジする。
相手の立場に立って考えることをしない男。妻のことをどう思っているんだ!
欣也に説教するけれど、じゃあ、自分は?
初めての子が流産したショックが大きいのはわかるけれど、それで傷害致死って。死んでしまった男がかわいそう。刑期終えればチャラになるもんではないだろう。
挙句に、「待っててくれるなら~」と手紙を出しているのに、その結果を見るのを怖がって逃げることばかり考えている。朱美に諭されて、恐る恐る勇気を出す。
しかも、最後、お礼も言わずに立ち去るとは。
気持ちはわかるけれど、格好のいい男とは程遠い。
それでも、
「こいつと一緒になれんかったら~」と思い詰めるときのあの表情。
光枝が独身だと知った時のあの表情。
光枝とデートしている時のあの表情。
家族に恵まれなかったからこそ、最愛の妻との間に子が授かった、家族ができると知った時のあの表情。
最後、お礼も言わずに、否、感あり余り過ぎて”言えずに”立ち去るときのあの表情。
かわいいんだなあ。
不器用な恋。
もっと、理性をはたらせて、自分を大切にしてくれる人に恋することができたらいいのに、と思う。
でも、現実は、そんな要領よくはできない。
身勝手な男。でも、誠実に愛してくれることは伝わってくる。なのに、やることなすこと、思いと行動が裏腹。そんな行動に振り回される。
傍目から見たら、損なくじを引いたかのよう。
でも、でも、でも…。なんだ。
そんな女の思いが、哀れで、でも羨ましくもあり。
「この女と一緒になれなければ…」そんな出会いがうらやましい。
二度目の恋。バツイチだからこその戸惑い。そんな女が、宝石のように美しすぎる。
そんな女の思いも察することができずに空回っている男。その逡巡が愛おしい。
こんなに無様なのに、なぜかとてつもなく愛おしい。
喜怒哀楽。一つ一つの表情がとっても新鮮。
そんな二人に対して、軽すぎるだろと思いたくなるような若い二人。でも、この二人も不器用。
イタすぎるけれど、どこか愛おしくなる女を演じさせたら桃井さんの右に出る人はいないな。
そのアンサンブルが見事。
物語の筋・結末は有名(って、タイトルやBOXでネタバレ)。
結果はわかっている。だのに役者の演技に引きずり込まれる。
賭けの結果を知るためのドライブでは、いつも胸が締め付けられる。
欣也と朱美に同化して、辺りを探してしまう。島に同化して祈るように目をつぶり手を組み祈りを捧げてしまう。道路のセンターラインにさえ、ぐいぐい引っ張られる。
光枝には、離婚したんだから、もっといい男探しなよと言いたくなるが、光枝の島に対する思い溢れた表情を見ていると、「島と幸せに」と祝福したくなる。
役者によって不朽の名作となった映画。
最後の欣也と朱美の場面はいらなかったかな。余韻がなくなっちゃう。
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