サバービコン 仮面を被った街
劇場公開日:2018年5月4日
解説
ジョージ・クルーニーの監督作で、1950年代に実際に起きた人種差別暴動をモチーフに、アメリカンドリームを絵に描いたような町サバービコンで巻き起こる奇妙な事件をサスペンスタッチに描いたドラマ。脚本をクルーニーとジョエル&イーサン・コーエン兄弟が共同で手がけ、クルーニーと親交の深いマット・デイモンが主演を務めた。笑顔があふれる町サバービコンに暮らすロッジ家の生活は、ある時、強盗に入られたことで一変。一家の幼い息子ニッキーの運命は思いがけない方向へと転じていく。一方、時を同じくして町に引っ越してきた黒人一家の存在が、町の住人たちのどす黒い本性をあぶりだしていく。
2017年製作/104分/G/アメリカ
原題:Suburbicon
配給:東北新社、STAR CHANNEL MOVIES
スタッフ・キャスト
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2018年5月31日
PCから投稿
鑑賞方法:映画館
タイトルは郊外を意味するsuburbiaと騙すなどの意味のconをくっつけた造語だろうか。それをそのまま街の名前としている。内容もまさにそのふたつの単語がイメージさせるようなものになっている。
この映画は2つの大きな物語がある。1つはマット・デイモン一家の偽装殺人事件だが、これがコーエン兄弟の書いた脚本から生まれたもの。もう1つは、デイモン一家の隣に越してくる黒人一家のマイヤーズ家が巻き込まれる暴動だが、こちらは実話から取られている。50年代、「郊外の父」ウィリアム・レヴィットが作ったレヴィットタウンに越してきた黒人のマイヤーズ家が、周囲の白人から迫害された事件を基にしている。
この2つの物語が上手く融合していない点は本作の弱点だ。だが、映画の精神性というかテーマという点では共通しているものがあるだろう。どちらも、郊外の一軒家というアメリカンドリームの欺瞞的側面を暴き出すという点で。娯楽映画としてやや物足りなさは感じるが、アメリカの近代史についての学びは大きい作品だ。
コーエン兄弟の脚本をジョージ・クルーニーが監督し、マット・デイモン&ジュリアン・ムーア主演で映画化。なんとも豪華な布陣だが、一番前面に押し出されているのは、脚本を書いたコーエン兄弟の持ち味ではないか。
コーエン兄弟は、愚かな人間どもの所業を突き放したブラックユーモアで描くパターンが多く、本作も完全にその系譜のひとつ。それも共感を拒絶して、とにかく人間を自分勝手なバカとして描いている。兄弟の作品では『バーン・アフター・リーディング』辺りが近いブラックコメディであり、どことなく『ブラッド・シンプル』の匂いも漂っている。
なので監督としてのクルーニーの真摯な持ち味やマット・デイモンが醸す善良オーラみたいなものはまったく機能していない。とにかくコーエン兄弟らしい脚本を、クルーニーが兄弟に成り代わって撮った、という印象。人にはイジワルな映画を楽しみたい気分の時にピッタリだよとおススメしたい。
2018年4月29日
PCから投稿
鑑賞方法:DVD/BD
郊外の町で起きる不穏な出来事という点で、1975年の『ステップフォードの妻たち』(と2004年のリメイク)や、『ウルトラセブン』の「あなたはだぁれ?」(団地の全住民が宇宙人に入れ替わるエピソード)などに通じる物語だ。
米国で40年代末から60年代にかけ、ウィリアム・レヴィットが格安の郊外住宅を大量供給し、「レヴィットタウン」と称する住宅街を各地に建設した。白人中流層が移り住み、その画一的な住居と同様、おそらく住民たちにも同質性を求め、“異物”を排除する傾向が醸成されたのだろう。本作は1950年代に米国で起きた人種差別暴動をモチーフにしている。
マット・デイモンの役は保険金殺人を画策する小悪党だが、非人間的な郊外から抜け出すことを切望した末の破滅的な選択だったのかもしれない。オスカー・アイザック扮する保険屋も、切れ者のようで案外そうでもないキャラがいかにもコーエン兄弟的で絶妙だ。