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POV方式(主観撮影:Point of View)という言葉があるらしい。『ブレアウィッチ・プロジェクト』に始まり、ハンディカメラでカメラ目線が主役となる映画だ。そういや21世紀に入り、毎年数本公開されてるなぁ・・・と、ロメロもついにこの流行の撮影方法を使ってきたのか!と、まだまだゾンビ映画の可能性を追い求めているとは若い、若い。
いわゆる手ブレ映像とは違い、主人公たちが大学の映画科みたいなものだから、酔ってしまうような見にくい映像ではなかった。さらに、ジェイソンの彼女、デブラが編集してドキュメント映画らしく仕上げたものだから、普通の映画とさほど違いはないような。そして、ネットでダウンロードできる映像も織り交ぜ、主観だけではない、ネット世界の世相をも見事に表現している。
ドキュメンタリータッチにすることで恐怖心が増すのか?と疑問を抱きながら観たけど、むしろ作り物であることがわかるほうがよかったかな~などと思いつつ、ロメロの飽くなき探求心に感激するほうが先だった。
主人公たちのセリフが多い分、わかりやすい社会批判などが目立っていた。それもドキュメンタリー風なので、自然に訴えてくるのだ。今回は報道における倫理、例えば撮影中に人を助けることができるのか?といったことや、カメラマンも傍観者であるといった主張、そして編集による情報操作の批判、真実の映像を撮り続けることの意味などが中心だった。さらに、州兵などの武器を扱う者たちが混乱に乗じて権力を持っていくこと。見事なまでの風刺だった。
生き残った者たちを救うために真実の映像を残す!というジェイソンの理想が、最後にはハンターたちが死人を銃で撃ちまくるという映像を見せることによって、本当に救う価値があるのかと問うセリフで締めくくられる。木に髪を縛りつけ吊るされた女性を撃ち、顔半分から下が砕け散るシーンはグロだけど、印象的・・・げげげ
ストーリーそのものは従来のゾンビものなのだけれど、学生たちの内面を抉り出しているし、仲間の一人が教授だという設定もいい。老人の嘆きにも似たコトバはそのままロメロの老いを象徴しているのかもしれない。
2度目を見て思ったこと。ミイラ役をやってたリドリーが監督であるクリードから「死人はノロいもんだ!」と注意されているところが、最近の走るゾンビをけなしているかのようで笑える。