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日本では誘拐事件はあまり聞かないが、アメリカでは当たり前のように起きている。子どもを一人にしておくことはなく、通学もスクールバスが普通。親が子どもから少し目を話した隙に、男が誘拐を実行しようとして失敗した映像をみたことがある。『チェンジリング』は、そういった事件が日常的に起こるアメリカならではの映画だと感じた。
序盤で牧師がLA市警の腐敗について話していたが、想像以上に腐敗していた。クリスティンが強制入院させられた精神病院の患者が言うように、警察に刃向かう人間は強制的に精神病院に送られる。精神病院の環境も劣悪。クリスティンが入院当日に強烈な放水を浴びさせられるシーンは、人を人と思っていない残酷で野蛮な行為で、強烈な印象を残した。当時のアメリカは文明が発達しているように見えて、人権に関わる部分はまだまだ未開なのだと感じた。
クリスティンの息子と間違えられたアーサーが、自分が息子だと嘘をついた理由は、LAのスターに会えると思ったからだと述べている。この映画がフィクションならその設定は違和感があると言いたくなるが、実話なので驚く。事実は小説より奇なりとはまさにこの映画のことだ。
クリスティンと犯人のゴードンを演じた2人の熱演は特に素晴らしい。
クリスティンを演じたアンジェリーナ・ジョリーが、息子ではないアーサーに「おやすみママ」と言われて「それを言わないで」と激怒して皿を壁に投げつけ泣き崩れるシーンは、息子を失った母親の苦しみを十分に表現できていた。
犯人のゴードンを演じたジェイソン・バトラー・ハーナーは、法廷に表れたときのヘラヘラした態度や、死刑台に向かう際に喚き散らすところなど、人間の屑を全力で演じられていた。