ワンス・アポン・ア・タイム・イン・ザ・ウェスト

ALLTIME BEST

劇場公開日:2019年9月27日

解説・あらすじ

マカロニ・ウエスタンで知られるイタリアの巨匠セルジオ・レオーネが1968年に手がけた作品で、日本では当時「ウエスタン」の邦題で短縮版が公開された一作。「荒野の用心棒」(64)、「夕陽のガンマン」(65)、「続・夕陽のガンマン 地獄の決斗」(66)で3年連続イタリア年間興行収入ナンバーワンを記録したレオーネが、方向性を大きく変え、自らの作家性を強く打ち出した野心作。大陸横断鉄道の敷設により新たな文明の波が押し寄せていた西部開拓期を舞台に、女性主人公の目を通して、移り変わる時代とともに滅びゆくガンマンたちの落日を描いた。ニューオーリンズから西部に嫁いできた元高級娼婦のジルは、何者かに家族全員を殺され、広大な荒地の相続人となる。そして、莫大な価値を秘めたその土地の利権をめぐり、殺し屋や強盗団、謎のガンマンらが繰り広げる争いに巻き込まれていく。初公開当時、ヨーロッパでは高い評価を得たが、アメリカでは理解されずにオリジナル版から20分短縮されて興行的にも惨敗。日本ではアメリカ版からさらにカットされた2時間21分の短縮版が「ウエスタン」の邦題で公開された。初公開から50年を経た、レオーネ生誕90年・没後30年にもあたる2019年、原題の英訳「Once Upon a Time in the West」をそのまま訳した「ワンス・アポン・ア・タイム・イン・ザ・ウェスト」に邦題をあらため、2時間45分のオリジナル版が劇場初公開される。

1968年製作/165分/イタリア・アメリカ合作
原題または英題:C'era una volta il West
配給:アーク・フィルムズ、boid、インターフィルム
劇場公開日:2019年9月27日

その他の公開日:1969年10月31日(日本初公開)

原則として東京で一週間以上の上映が行われた場合に掲載しています。
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映画レビュー

5.0 一度はスクリーンで体感したい傑作。その鑑賞体験がきっと財産となるはずだから

2019年9月30日
PCから投稿
鑑賞方法:映画館

巨匠レオーネがハリウッドで撮った本作は、当時すでに斜陽となっていた西部劇そのものへの想いを綴った映画とも言われる。アルジェントやベルトルッチが原案に加わっているだけあり、そこには過ぎ去りし時代、そこに遺された多くの名作への感謝の念すら刻まれているかのようだ。

冒頭、列車到着を待つ数分間からすでに圧倒的だ。静かに、コミカルに、そして詩情たっぷりに描き尽くすこのシークエンスに、これまでレオーネ作品を、いや西部劇そのものを観たことのない人であっても、瞬時に魅了されてやまないはず。ブロンソンがハーモニカの音色とともに存在感を見せつけ、フォンダが絶妙な悪役ぶりを刻み、またカルディナーレが荒野に立つ女性の生き様を見事に体現。壮大なクライマックスには心のパノラマがぐっと開けていく感動を覚える。映画史に残る傑作であると同時に、できれば人生で何度もスクリーンで体感しておきたい、そうするにふさわしい一作だ。

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牛津厚信

4.5 西部劇の終焉

2025年11月2日
PCから投稿
鑑賞方法:DVD/BD

セルジオ・レオーネ監督の『ウエスタン』は、西部劇というジャンルの終焉を描いた“神話の葬送曲”のような映画でした。
冒頭の駅のシーンから圧倒的で、3人のガンマンがチャールズ・ブロンソンを待ち構える静寂の時間。風車の軋みや水滴の音が緊張を生み、黒澤明の『用心棒』のように「静」によってドラマを作り出しているのが印象的です。駅舎や服の汚れ、道具の錆びまで計算されたリアリズムがあり、砂塵にまみれた世界が一枚の絵のように完成されています。

映像は濃密で、テクニスコープ撮影による粒子の荒さが独特の深みを与えています。ディープフォーカスではなく、ディープスペースによる構図が多用され、手前と奥に人物を配置することで空間に圧力を生み出していました。色彩は乾いた大地の記憶のように“濃く”、4Kで観るとその質感がより鮮明に感じられます。

物語の核心は復讐ですが、その理由は最後まで明かされません。チャールズ・ブロンソンが吹くハーモニカが過去を示唆し、ラストでヘンリー・フォンダにそれを咥えさせる瞬間、すべての時間が収束します。ブロンソンの目が超クローズアップされるカットは特に象徴的で、彼の復讐を超えた“運命そのものの意志”を映しているようでした。

登場人物たちは誰一人として純粋な善でも悪でもなく、それぞれが時代の狭間を生きています。フォンダは秩序の残滓、ブロンソンは過去の亡霊、ロバーズは人間的な中間領域、カルディナーレは大地と再生の象徴。ラストで彼女が鉄道労働者に水を配る場面は、暴力の時代が終わり、文明の時代が始まることを静かに告げています。

1968年という時代を考えると、この映画は古典的ハリウッドとニューシネマの間に立つ“橋”のような作品です。アメリカ資本で作られながらも、イタリア人監督が外部の視点からアメリカ神話の崩壊を描いた。
それは同時に、西部劇そのものへのレクイエムであり、映画という夢が自分自身の終わりを見つめた瞬間でもあります。

鑑賞方法: 4K UHD Blu-ray

評価: 93点

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neonrg

5.0 すごい映画があったもんだ

2025年5月15日
PCから投稿
鑑賞方法:映画館

全然予備知識もなく、タイトルやポスターからマカロニ・ウエスタンかな?程度でしたが、さにあらず。思いもよらずにすごい映画に出会えました。
・登場人物がやたらにかっこいい。総じてかっこいい。
・構図が素晴らしい、例えば、アップや普通のやりとりからの全体パースの観せ方や組み合わせ方が絶妙でシーン展開で大凡が理解できるし、先の展開が予想できるし前の展開が「あーーー!」という感じで理解できる。多分、テレビだと良さが伝わらないだろう。
・シナリオが素晴らしい。随時、伏線がはられ、適宜適切に回収されていくすっきり感とか
・かと思えばお約束的なwww
・セリフが少ない。映画に集中できる。
・音楽がいい。適度に緊張を解してくれる。

この作品を観て、映画の基本線、特に名作の、は進化してないんじゃないか?と思いました。
なお、チャールズ・ブロンソンの射撃シーンは映りません。なんでなのか調べてみたらびっくりして笑いました。

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zem_movie_review

4.5 西部劇の終焉はイタリア人が作った

2025年3月31日
PCから投稿
鑑賞方法:CS/BS/ケーブル

悲しい

楽しい

 ジョンウエインとジョンフォードらの作った西部劇が陰りを見せたとき、イタリアが西部劇(マカロニウエスタン)を作った。それはアウトローが金と復讐のために、ほこりだらけ汗だらけの髭ずらのむさい悪党を倒す物だった。このようなリアルで残酷な感覚は、実はヒットした荒野の用心棒のように黒澤明の用心棒から来ている。黒澤明はジョンフォードの西部劇を愛して、日本映画にウエスタンの味付けをした。しかし、黒澤明の非凡なところは単なる西部劇の焼き直しではなく、人の描写や戦い方にリアリズムを取り入れた。それが再びウエスタンとしてよみがえった。アメリカの西部劇にイタリア製西部劇がリアリズムと外連味(けれん味)の新風を吹き込んだ。
 この映画は荒野の七人で現れ、様々なアクションで角頭を表したチャールズブロンソンがアメリカの西部劇のスターヘンリーフォンダやジェイソンロバーツと対峙し、最後はヘンリーフォンダを倒すというそれまでにない最後だった。この三人は機関車が走る最早時代遅れのガンマンで、開発の進む地主の未亡人に出会う。基本はイタリア西部劇に多い復讐話だ。しかし、最後の対決は銃を落とした後倒れるヘンリーフォンダの悲しげな青い目が、まぶしい青い空の下でなんとももの悲しく、現在ほとんどの出演者がこの世を去っていることもあって寂しさが募る。未亡人も悲しみから自立しようとしている。心に響くエンリォモリコーネの音楽が美しい。ヘンリーフォンダが悪役で寂しげに終るこのアメリカの西部劇にない感覚は、アメリカではヒットせず、ヨーロッパや日本でヒットした理由だろう。アメリカの西部劇の時代が終ったのである。それ以来西部劇はリアルと厳しさを中心に時々作られている。映画は結局全てリアリズムに向かっていくのだろう。

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こめちゃん