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考古学者兼冒険家、インディアナ・ジョーンズの活躍を描いたアクション・アドベンチャー『インディ・ジョーンズ』シリーズの第4作。
1957年、老境に入ったインディの下を、マットという青年が助けを求め訪れる。南米の秘宝「クリスタル・スカル」の捜索中に消息を絶ったインディの旧友オックスとマットの母親を探すため、インディとマットはペルーへと向かうのだが、その宝をソ連のKGBもまた狙っていた…。
監督はスティーヴン・スピルバーグ。
○キャスト
インディアナ・ジョーンズ…ハリソン・フォード。
クリスタル・スカルを狙うKGBのエージェント、イリーナ・スパルコを演じるのは『ロード・オブ・ザ・リング』シリーズや『ホットファズ 俺たちスーパーポリスメン!』の、レジェンド女優ケイト・ブランシェット,AC。
インディと行動を共にするバイカーの青年、マット・ウィリアムズを演じるのは『コンスタンティン』『トランスフォーマー』のシャイア・ラブーフ。
製作総指揮/原案はジョージ・ルーカス。
第29回 ゴールデンラズベリー賞において、最低前日譚・リメイク・盗作・続編賞を受賞🌀
前作『最後の聖戦』(1989)から実に19年。あのインディが帰ってきた!
興行収入はシリーズ最高となる7億8,600万ドルという大ヒットを記録。世界中が彼のカムバックを待ち望んでいたんですね。
ちなみに、劇場作品としては19年ぶりの新作という事になるのだが、その間に若きインディの冒険を描いた『The Young Indiana Jones Chronicles』(1993-1996)というテレビシリーズが作られており、長編テレビ映画も4本制作されている(ハリソン・フォードは1エピソードにのみ出演)。本作中、インディが「ケチュア語は昔パンチョ・ビリャに教えてもらった」云々と発言していたが、これはこのドラマからの引用である。
さらにこのドラマは1999年に『The Adventures of Young Indiana Jones』と改題。22本の長編映画として再編集され、ビデオ販売やテレビ放送などでアメリカのお茶の間に届けられた。
なお、人気を博した『ヤング・インディ』だが日本では何故かDVD化はおろか配信もされておらず、半ば幻の作品と化してしまっている。『スター・ウォーズ』オリジナル・トリロジー(1977-1983)の劇場公開版や『ホリデー・スペシャル』(1978)など、ルーカスが絡んだ作品はとかく鑑賞が困難になりがち。一大フランチャイズなんだから簡単に観られるようにして欲しいものである😠
さて、約20年の時を経て、新たに描かれたインディの冒険がどうだったのかというと…。
スピルバーグ&ルーカス、どうしちゃったの?具合悪かった?と心配したくなるほどの凡作…というはっきり言って駄作。胸が躍るシーンがなかった訳ではないし、コメディ要素にクスリとさせられるところもあったのだが、全体としては驚くほどに引っ掛かりがない。シリーズ恒例のドタバタアクションは完全に上滑りしており、なんのフェティッシュもパッションも感じられず、まるで出来の悪いパスティーシュを観ているようだった。
脚本もとっ散らかっていて、お話の都合でキャラクターが動いているのが見え見え。敵役の女将校も書き割りのようでまるで面白みがなく、ケイト・ブランシェットの頑張りが虚しくから回っていた。
そもそも、こんなことを言うとファンの人たちからお叱りを受けそうだが、ジジイの冒険活劇なんて見たくないっ!
公開当時、ハリソン・フォードは65歳。そりゃ一般的な65歳のお爺さんと比べれば全然若々しいんだけど、それでもやっぱり65歳な訳です。超絶ワイルド&セクシーだった30、40代の頃知っているだけに、どれだけハリソンがアクションを頑張っていても「おじいちゃんが頑張ってるな〜…」という思いが頭をよぎってしまう。
何もハリソンがジジイだからダメだと言っている訳ではない。60代に30代とおんなじことをやらせているからダメだと言っているんです。せっかくマットという意気軒昂な若者を登場させインディとコンビを組ませたんだから、アクションはマット、謎解きはインディというように役割分担をしっかりさせるべきだった。この2人の役割が曖昧だったのでインディは老骨に鞭打つジジイにしか見えないし、マットに至ってはなんのために出てきたのか最後までよくわからん。
60代の老冒険家というのは面白い属性なのだから、そこを活かしたキャラにインディを据え直せば良かったのにねぇ。
ハリソンが歳を取ったという事は、当然スピルバーグとルーカスも同じだけ歳を取ったという事である。この2人に、もはや『レイダース/失われたアーク』(1981)を撮影したイケイケ若手映画監督時代の面影は一切ない。ハリウッド最大のヒットメーカーとなった彼らに、三文小説的なバカバカしい冒険活劇はもう似合わない。特にスピルバーグは、前作から本作までの19年間で『シンドラーのリスト』(1993)、『プライベート・ライアン』(1998)、『ミュンヘン』(2005)など、重厚でシリアスな作品を手がける事が多くなった。映画作家として成熟した彼に、もうパルプ・マガジン映画への興味は残っていないのではないだろうか。本作から伝わってくる情熱の薄さに、そんな事を考えてしまった。…嫌なら作らなきゃ良いのにねぇ。
リアルな戦争ドラマ映画に活躍の場を移したスピルバーグ。それなら今までとおんなじ事を繰り返すのではなく、冷戦と核の時代を本格的なテーマに据え、どっしりとした本格アクション映画として『インディ・ジョーンズ』を描き直すという方向性もアリだったんじゃないだろうか。
オールドファンからは嫌われるだろうが、こんなセルフオマージュみたいな映画よりはそっちの方がずっと観てみたいし、スピルバーグ本人もやる気が出たんじゃない?
※『魔宮の伝説』(1984)を観ていた時にも思ったのだが、やっぱこのシリーズって『ルパン三世』の影響をめちゃくちゃ受けてますよね。冷蔵庫に入って大爆発から逃れるというのは高畑勲/宮崎駿が手掛けた1stシリーズ(1971-1972)の最終回「黄金の大勝負!」とおんなじだし、ラストで遺跡に水が押し寄せるというのは『カリオストロの城』(1979)のクライマックスを彷彿とさせる。伝説の黄金郷が宇宙人由来のものだったというのは鈴木清順監督作品『バビロンの黄金伝説』(1985)で観たし…。
『魔宮』の時はたまたまかとも思ったのだが、ここまで色々と似ていると、やっぱり『インディ』シリーズは『ルパン』の影響下にあると見て間違い無いんじゃないか。どっかのインタビューで白状したりしていないのかしらん?