コラム:映画.comシネマStyle - 第7回

2021年9月10日更新

映画.comシネマStyle

先生、私の隣に座っていただけませんか?」公開記念 不倫を描いた映画5選

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毎週テーマにそったおすすめ映画をご紹介する【映画.comシネマStyle】。

黒木華柄本佑共演で、漫画家夫婦の虚実が交錯する心理戦を描いたドラマ「先生、私の隣に座っていただけませんか?」が公開中です。不倫をしている夫と、それを漫画に描く妻。妻は一体どこまで知っていて、この漫画に描かれていることはすべて真実なのか、それとも虚構か。新感覚の不倫ドラマです。

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そこで、今回は「不倫を描いた映画」5作品をセレクト。古今東西で描かれ続ける様々な“不倫”の形。映画のなかで禁断の果実を味わってみるのはいかが。


ケイト・ウィンスレットが、狂おしさと破滅の予感が漂うヒロインを熱演
 「女と男の観覧車」(2018年/101分/ウッディ・アレン監督)

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アニー・ホール」「ミッドナイト・イン・パリ」のウッディ・アレン監督が、ケイト・ウィンスレットを主役に迎え、1950年代のニューヨーク・コニーアイランドを舞台に、ひと夏の恋に溺れていくひとりの女性を描いたドラマ。

【あらすじ】
 コニーアイランドの遊園地にあるレストランで働く元女優のジニー(ウィンスレット)は、再婚同士で結ばれた夫ハンプティ(ジム・ベルーシ)、自身の連れ子リッチー(ジャック・ゴア)と、観覧車の見える安い部屋で暮らしている。しかし、夫との平凡な毎日に失望しているジニーは、劇作家志望のミッキー(ジャスティン・ティンバーレイク)と不倫していた。ミッキーとの未来に希望を抱くジニーだったが、ギャングと駆け落ちして音信不通になっていたハンプティの娘キャロライナ(ジュノー・テンプル)の出現で、全てが大きく狂い出していく。

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【ここに注目!】
ケイト・ウィンスレットが現実逃避し、不倫に溺れる悲劇のヒロインを熱演
・シニカルな視点で描かれた、ままならない人生を生きる人々の人間模様
・3度オスカーを受賞した“光の魔術師”ビットリオ・ストラーロが撮影 観覧車に見守られた部屋で、登場人物たちの感情を鮮やかに照らし出す光と色

本作の見どころは何といっても、アレン作品に初参加した名女優ウィンスレットの圧倒的な演技。女優の夢は破れ、自らの過ちで幸せな家庭を失い、新たな夫ハンプティとの結婚生活に愛はない。そんな諦めを繰り返してきたからこそ、ジニーは「退屈な(本来は自分がいるべきではない)世界から救い出してくれる存在」であるミッキーとの不倫にのめりこんでいきます。

「これでもか!」というほど容赦のないアレン監督の演出で、現実を受け入れられず、夢にしがみつくジニーが内に秘める狂おしさ、破滅の予感が見事に表現されています。同じく破滅へと向かうヒロインを演じ、オスカーを手にした「ブルージャスミン」のケイト・ブランシェットに劣らぬ、ウィンスレットの熱演を目に焼きつけてください。

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▽“熱”に浮かされた人々の運命の行方は――アリシア・ビカンダーの官能的なラブシーンにも注目
 「チューリップ・フィーバー 肖像画に秘めた愛」(2018年/105分/R15+/ジャスティン・チャドウィック監督)

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球根ひとつの値段が邸宅1軒分の価値になったという、“世界最古の経済バブル”といわれる17世紀オランダの「チューリップバブル」を背景に、豪商の若き妻と無名の青年画家の許されざる愛の行方を描くラブストーリー。フェルメールの絵画の世界に着想を得た、デボラ・モガーのベストセラー小説「チューリップ熱」を、ジャスティン・チャドウィックが監督(「ブーリン家の姉妹」)、トム・ストッパード脚本(「恋におちたシェイクスピア」)で映画化しました。

【あらすじ】
 育ちのソフィア(アリシア・ビカンダー)は、親子のように年の離れた豪商コルネリス(クリストフ・ワルツ)と結婚し、豊かで安定した暮らしを送っていたが、子どもを授からないことに悩んでいた。ある日、コルネリスが夫婦の肖像画を無名の画家ヤン(デイン・デハーン)に依頼。若く情熱的なヤンとソフィアはすぐに恋に落ちるが、ヤンがふたりの未来のため希少なチューリップの球根に全財産を投資したことから、彼らの運命は思わぬ方向へと転がっていく。

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【ここに注目!】
・チューリップバブル、フェルメールの絵画、禁断の恋……さまざまな要素が絡み合う独創的なストーリー
・フェルメールの絵画から飛び出してきたような、優美な衣装や街並み
アリシア・ビカンダーデイン・デハーンが恋に落ちる瞬間、官能的なラブシーン

ウルトラマリンという顔料で作られる青色、通称“フェルメール・ブルー”の鮮やかなドレスをまとい、薄暗い室内に差し込む光のもとでチューリップを片手にたたずむソフィア。そんな彼女の姿が脳裏から離れなくなるヤン。ふたりが恋に落ちる瞬間がえもいわれぬ美しさを湛えており、まさにひとつの絵画のように見る者の心をとらえます。

本作で描かれるのは、チューリップバブルの熱狂、燃えるような恋心など、“熱”(fever)に浮かされた人々の運命。時代の渦に飲みこまれながらも、ヤンへの押さえられない恋心と、夫への罪悪感に揺れるヒロイン・ソフィアの心情が繊細に描写されています。また、清楚なイメージのあるビカンダーが挑んだ刺激的なラブシーンにも注目してください。

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▽尾行の先に待ち受けていた幸せな家族の真実
 「二重生活」(2015年/126分/R15+/岸善幸監督)

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直木賞作家・小池真理子氏の同名小説を「あゝ、荒野」の岸善幸監督が、劇場デビュー作として映画化。論文のための「哲学的尾行」として近所の既婚男性を監視する大学院生が、他人の秘密を知る興奮へと目覚めていく。

【あらすじ】
 大学院の哲学科に通う珠(門脇麦)の論文のテーマは、「どうして人間は存在するのか、何のために生きるのか」。担当教授・篠原(リリー・フランキー)のすすめで、ひとりの対象を追いかけて生活や行動を記録する「哲学的尾行」を実践することとなる。最初は尾行という行為に戸惑いを感じる珠だったが、たまたま近所に住む石坂(長谷川博己)を目にし、彼のあとを追う。すると、愛人と道端で激しく求めあう姿を目撃してしまう。一軒家に美しい妻と娘と暮らす石坂を、珠が尾行する日々が始まった。

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【ここに注目!】
・映画単独初主演作で門脇麦が魅せる。隠し切れない興奮が現れるその目に注目
・他人の秘密を覗き見るというスリリングな興奮を疑似体験
・徐々に対象に感情が融合していく珠、そして見ている者も融合されていく

ただただ対象の生活を記録するだけの理由なき尾行。秘密を暴きたいわけでも、その人を好きなわけでもない。純粋な知的好奇心にとりつかれて尾行を続け、少しずつその興奮を瞳に宿していく珠に、見ているこちらもどんどん前のめりになって、気持ちが溶け込んでいくという不思議な感覚に陥ります。誰もがどこか取り繕い、秘密を抱えながら生きている。他人の秘密を覗くことができた瞬間の興奮と背徳感のようなものを疑似体験することができる作品です。

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▽嘘をつくのはもういや!? 不倫でこんなに笑ってもいいですか?
 「アリバイ・ドット・コム カンヌの不倫旅行がヒャッハー!な大騒動になった件」(2017年/90分/フィリップ・ラショー監督)

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シティーハンター THE MOVIE 史上最香のミッション」のフィリップ・ラショーが監督・脚本・主演を務め、不倫や秘密を隠したい依頼人に完璧なアリバイを提供する会社「アリバイ・ドット・コム」をめぐるドタバタ騒動を描いたコメディ。

【あらすじ】
 依頼人の完璧なアリバイを作る会社「アリバイ・ドット・コム」を経営するグレッグ(ラショー)。依頼は次から次へと舞い込み、業績は順調に伸び続けていた。そんなある日、グレッグは恋人フロー(エロディ・フォンタン)の両親に挨拶するため彼女の実家を訪れるが、フローの父親ジェラール(ディディエ・ブルドン)は「アリバイ・ドット・コム」の顧客だった。しかもその内容は、不倫旅行のためのアリバイ作り。ジェラールに脅されて渋々依頼を引き受けたグレッグは、綿密な計画を立てて不倫旅行先のカンヌへ向かう。ところが、同じホテルにフローが母親を連れてバカンスに来てしまい……。

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【ここに注目!】
・1度は頼んでみたくなる!? 「アリバイ・ドット・コム」の見事な仕事ぶり
・次から次に襲いかかってくる、想像を超えるトラブルの数々に笑いが止まらない
フィリップ・ラショー×エロディ・フォンタンナタリー・バイ×ディディエ・ブルドンの最強カップリング

不倫映画というと、結末が重くのしかかってくるような作品が多いなか、最初から最後まで笑いで包み込んでくれる本作。不倫をしていてもばれて家族がバラバラになるくらいなら、バレずに家庭を守った方がいいという信念(?)のもと、「アリバイ・ドット・コム」を立ち上げたグレッグ。ありとあらゆる方法でアリバイ工作をする姿に、笑いを通り越して感嘆するほど。しかし見終わった後は、隠し通せる秘密なんてないのか、と思わずにはいられなくなるかも……。秘密を抱える皆さん、ご用心ください。

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▽男女の背徳感や愛への渇望は、50年以上たった今でもリアル
 「フェイシズ」(1968年/130分/ジョン・カサベテス監督)
※「シネマ映画.com」で配信中!

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“インディペンデント映画の父”と呼ばれるジョン・カサベテス監督が、関係の破綻した中流アメリカ人夫婦の36時間を、登場人物の顔のクローズアップを多用した斬新な手法で描いた傑作。第41回アカデミー賞3部門にノミネートされ、第29回ベネチア国際映画祭では主演のジョン・マーレイが男優賞を受賞し、監督ジョン・カサベテスの名をハリウッドに知らしめた作品。(執筆:和田隆

【あらすじ】
 ある日、妻のマリア(リン・カーリン)に離婚を切り出したリチャード(マーレイ)は、高級娼婦ジェニー(ジーナ・ローランズ)と一夜を共にする。一方、友人とディスコに出かけたマリアは、そこで出会った青年と関係を持つ。翌朝、マリアは衝動的に睡眠薬で自殺を図ってしまう……。

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【ここに注目!】
・登場人物の顔のクローズアップで物語を描くような斬新な手法
・即興演出によるドキュメンタリーのようなリアルなドラマ
・デジタルにはないざらついたモノクロのフィルム映像
ジーナ・ローランズら主要キャストの迫真の演技
・アメリカ映画の見方が変わるインディ映画の原点

1968年製作、半世紀以上前の映画ですが、今見ても色あせることはなく、何度見ても新たな発見がある映画です。愛すること、生きることの意味を見出すことを描き続けた孤高の映画作家ジョン・カサベテスの存在を、未見の映画ファンには知ってほしい。まるで劇中の世界に入り込んだかのような錯覚に陥るほどの緊張感と、男女の背徳感や愛への渇望がリアルに伝わってきて、胸を締め付けられることでしょう。映画表現の新たな可能性を開拓し、後の多くの映画監督たちに多大な影響を与えた作品であり、監督です。

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様々なジャンルの不倫映画をご紹介しましたがいかがだったでしょうか? 世界中に数多ある「不倫映画」。映画のなかだからこそ体感しても許される背徳感があるために描かれ続けるのでしょうか。あなたの心に残る「不倫映画」も是非教えてください。

筆者紹介

映画.com編集部のコラム

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