加藤武
早稲田大学在学中は、演劇研究会に所属。卒業後、中学教師になったが俳優の道を諦められず、1952年に文学座研究所へ入所。59年からは座員として舞台「美しきものの伝説」や「怪談 牡丹燈篭」などに出演し、演出も手がけるようになる。74年、小沢昭一主宰の「芸能座」に移籍したが、80年文学座に復座した。演劇界で活躍する一方で、53年に今井正監督の「にごりえ」で映画に初出演して以来、黒澤明監督の「蜘蛛巣城」(57)や「隠し砦の三悪人」(58)などに出演し、深作欣二監督の「仁義なき戦い」シリーズ(73~74)などにも顔を出す。市川崑監督がメガホンをとった「犬神家の一族」(76、06)、「八つ墓村」(96)といった金田一耕助シリーズでは警察官役を演じ、「釣りバカ日誌」シリーズでは秋山専務役で3作目(90)から完結編「釣りバカ日誌20 ファイナル」(09)まで出演した。その他、NHK大河ドラマ「風林火山」(07)などで名バイプレイヤーとして活躍。14年の文学座公演「夏の盛りの蝉のように」の葛飾北斎役で紀伊国屋演劇賞の個人賞を受賞、読売演劇大賞では優秀男優とあわせ、演劇界での長年の貢献をたたえる芸術栄誉賞を受けた。文学座では劇団代表も務めた。15年7月31日、スポーツジムのサウナで倒れ急死した。享年86歳だった。