大滝秀治
中学卒業後、陸軍に入り、国外で終戦を迎える。復員してGHQの電話部で働いていたころ、演劇に魅了され、48年に民衆芸術劇場(第1次民芸)付属養成所に入所。「風の吹く一幕」(49)で初舞台を踏んだ翌年、劇団民芸の創立に研究生として参加した。当初は演出部に配属されたが、52年の「冒した者」で代役に駆り出され、俳優に転向する。東京裁判を描いた舞台「審判」(70)で注目を浴び、看板役者として劇団を牽引していく。75年、NHK連続テレビ小説「水色の時」で好演をみせ、以降「うちのホンカン」(75)や「特捜最前線」(77~87)といったドラマでも活躍する。映画の代表作には「不毛地帯」「あにいもうと」(ともに76)、「居酒屋兆治」(83)、「お葬式」(84)、「たんぽぽ」(85)、「マルサの女」(87)などがあり、深みのある語り口と演技で作品を盛り立てた。88年紫綬褒章を受章し、11年文化功労者に選出された。12年6月体調不良のために主演舞台を降板したが、10月2日肺扁平上皮がんのため87歳で逝去。約1カ月前に公開された「あなたへ」が遺作となった。