私はヨット乗りなので、珍しい国産ヨット映画ということで見に行きました。
美しい北海道の大自然を背景にした中年男女の恋を手堅く描いています。さらに、東京から北海道まで追いかけてくる、若くて美しい元部下の女性も登場して、ストーリー的にも工夫がされています。
ただ、北海道の大自然を描く際、ヨットを舞台とした映画なら、普段普通の人は見ることができない海からの光景を多用した方が、北海道の新たな魅力を描き出せたのに、と思います。
さらに、ヨットのシーンは目も当てられず、著しくリアリティを損なっています。ストーリーとは直接関係がないので、以下、具体的に指摘します。
1 強風の荒れた海で、微風用のセット(帆を全部上げる)で走っています。強風時は帆を小さくするものです。
2 ヨットは帆で走っているとき、片方に傾いた状態になります。ヨットの写真でよく見る姿です。しかし映画ではそれがありません。モーターボートと同じく、水平を中心に左右に揺れているだけです。
3 海が大荒れで、船室内で耐えるシーンで、艇が波をかぶると、バケツをひっくり返したような勢いで天井から海水が入ってきます。船室の屋根に大穴が開いてない限りあんなには浸水しないはずです。また、もしあんな勢いで浸水していたら沈没を心配しなければなりません。
4 凪いだ海で、舵をひっきりなしに動かしています。舵は車のハンドルと同じで方向を決めるためのものです。あんなに動かすものではありません。
5 帆をコントロールするロープをちゃんと留めていない。
サトウトシキ監督は、ヨットのことを全く調べずにこの映画を撮ったのでしょうか?
なお、ヨットを知らない人にとっては十分楽しめる映画でしょう。