「APPLESEED」荒牧伸志&「青の6号」前田真宏が語るCGとのかかわりとキャリア 時代性や庵野秀明作品など共通点も
2025年3月16日 14:00

新潟市で開催中の第3回新潟国際アニメーション映画祭で、「日本のアニメCGの転換点」と題したオールナイト上映が、3月15日新潟市のシネ・ウインドであり、上映作品「APPLESEED アップルシード」(04)の荒牧伸志監督、「青の6号」(98)の前田真宏監督によるトークが行われた。
1980年代から現在までおよそ40年、様々な挑戦的な試みと積み重ねにより実現した、アニメーション映像の魅力を際立たせるCG技術に着目。先端的な映像に取り組んできた両監督。CG技術でアニメの映像を変えたエポックメイキングな作品群を振り返る。

まず初めにキャリアを語ったのは前田。「青の6号」は、1967年に「週刊少年サンデー」に連載された小澤さとる氏の漫画を原作とし、1998年から2000年にかけて発売されたOVAでGONZOがアニメーション制作を担った。前田は当時隆盛したゲーム機PlayStationの映像制作にかかわりCG技術を用いるなかで、「長編が作れるのでは? 面白そうだからやってみた。という世代」とまずはそのきっかけを明かす。
メカデザイナー出身の荒牧は「80年代、変形するロボットメカ全盛の頃にアニメの仕事にデビューしました。しかし、手で複雑なメカをアニメーターさんに描いてもらうのは申し訳なかった」と、自身はメカを描くものの、現場での効率を考え、90年代からCGを取り入れていったそう。「今は、どうすれば働きやすいかのワークフロー、良い作品ができるかを考えるのが楽しい。デザインだけやってても、自分でコンテも描きたくなるし、やむに已まれぬ事情で監督もやるようになった」と振り返る。

幼いころから絵を描くことが好きで、学生時代からアニメーション業界を目指し、演出面でも活躍する両者の共通点は「時代性」だと前田。また、前田が原画、設定、演出を担当した庵野秀明のOVA作品「トップをねらえ!」で、ロボット、ガンバスターのコックピットのデザインに携わったのが荒牧だ。「あの方にガイナックスに呼ばれて……」とその経緯と、「エンドロールには確か、友情メカデザインとかいう謎のクレジットだった」と話す。
前田は、宮崎駿監督の「風の谷のナウシカ」に共に参加した庵野らと立ち上げたガイナックスでの思い出を語りながら、「高田馬場でガイナックスを立ち上げて、『ふしぎの海のナディア』とか庵野さんの仕事に携わり、楽しかったのですが、ずっと庵野さんとテイストが同じものを作り続けるのは……と会社を離れました。樋口真嗣らが同時期に辞めたので、みんな勝手に活動していましたが、個人ではやれることに限りがある。その時に集まったのがGONZOの始まり。最初は寄合状態でした」とスタジオGONZO設立の経緯も明かした。
そして、前田の監督作「青の6号」は、「すごくまじめに取り組んでいたので、気持ちが入っている作品。30分4本でつくるので、劇場1本分のような感じで、構成や感情の流れは映画っぽくやりたいと思った」「開発に時間がかかりましたが、初めてフルデジタルで音響も5.1チャンネルで……と大きく宣伝してもらって。出資者も現れてGONZOの名刺代わりになった」と語る。

前田は先月「雑画集」というタイトルの作品集を出版した。荒牧は「絵がうまくてうらやましい、そこに尽きる。アニメーターが描けることは万能。カッティングエッジな絵を描き続けてるのがうれしい」と前田の仕事を称える。
荒牧の監督作「APPLESEED アップルシード」は、「GHOST IN THE SHELL 攻殻機動隊」の士郎正宗によるSFコミックを、モーションキャプチャーと3DCGを駆使してアニメーション映画化。西暦2131年、女兵士のデュナンが人類の未来の鍵を握る「アップルシード」をめぐり戦いに身を投じていく物語だ。
荒牧は本作の見どころの一つでもあるシーンについて「主人公が飛び降りながら合体するシーンは『アイアンマン3』でカット割りまでパクられたんです(笑)」という逸話を披露。前田は「『アップルシード』を改めて見たら、既にスタイルが完成していて、最初から完成度が高い。荒牧さんは客観的に自分の好きなものを評価できる監督をする人の資質、そしてプレイヤーの資質もあり、ディレクターとして企画も動かされていてすごい」と称える。

そのほか、CGと作画のハイブリッドやモーションキャプチャーの利用、AIとのかかわり方など、ふたりは過去から近況まで現場でのさまざまな話題でのエピソードを繰り広げていた。第3回新潟国際アニメーション映画祭は3月20日まで開催、チケットは好評発売中。最新情報は随時公式サイト(https://niaff.net)で告知している。
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