【2023年の映画界を振り返るVol.2】ハリウッドで長期のストライキ 24年以降の興行にも影響
2023年12月29日 12:00
2023年の映画界は、実にさまざまなニュースが駆け巡りました。異例の興行を展開して大ヒットした作品の話題から、長年にわたり活躍してきた映画人たちの訃報、海外の映画祭における日本勢の大健闘など、挙げ出したらきりがありません。映画.comでは、23年の映画界を象徴するニュースを10本ピックアップし、本日から3日連続で読者の皆様とともに振り返ってみようと思います。Vol.2では、4本のトピックスをご紹介します。
ハリウッドでは、脚本家組合が5月、俳優組合が7月にストライキに突入しました。このダブルストライキにより、実に多くの作品が撮影中断、中止を余儀なくされました。今回のストライキで最大の焦点となったのは、動画配信サービスの再使用料と、人工知能の使用に関する規制の2点。これらについて両者の歩み寄りがみられたことから、脚本家組合は148日間、俳優組合は118日間におよぶ労働闘争が終結しました。ただ、多くの新作映画、ドラマの製作がストップしたことにより、各社がラインナップの公開日を24~25年にずらしたことで、今後数年間は世界中でハリウッド映画の興行に大きな影響が出ることが予想されます。
イルミネーション・スタジオと任天堂が共同でアニメーション映画化した今作は、実に多くの観客から愛されました。日本では4月28日に封切られ、公開から31日間(5月28日)で興行収入100億円に到達。これは、日本での洋画アニメーション作品史上最速での突破となり、最終興収は140億円を上回りました。世界でもエポックメイキングな興行を展開。北米では公開3日間で興収1億4640万ドルを稼ぎ、アニメ映画では「ライオン・キング」「インクレディブル・ファミリー」に次ぐ歴代3位のオープニング成績をおさめました。その後も順調に数字を伸ばし、「バービー」に抜かれるまでは今年の北米興収No.1映画のポジションにありました。
映画鑑賞料金の値上げも、大きな話題を呼びました。シネコン大手・TOHOシネマズが5月1日、「6月1日から一般の鑑賞料金を1900円から2000円に改定する」と発表。その後は、東映およびティ・ジョイは6月16日上映分から、松竹マルチプレックスシアターズは6月30日上映分から、東急レクリエーションは7月7日から、ユナイテッド・シネマは7月14日から2000円への値上げを発表。2019年に1800円から1900円に改定されて以来、4年ぶりの値上げでついに2000円の大台に達してしまいました。
5月に開催された第76回カンヌ国際映画祭からは、大きなニュースが飛び込んできました。是枝裕和監督が新作「怪物」をコンペティション部門に出品。「万引き家族」がパルムドールに輝いてから5年、昨年は「ベイビー・ブローカー」に主演したソン・ガンホが男優賞を受賞したことに続いて、坂元裕二が「怪物」で脚本賞に輝きました。さらにクイアー・パルム賞も受賞し、2冠となりました。
一方、ヴィム・ヴェンダースが日本で撮影した「PERFECT DAYS」に主演した役所広司が、男優賞を受賞。「誰も知らない」(04)で同賞に輝いた柳楽優弥以来、日本人男優として2人目の栄冠です。そして同作はエキュメニカル(キリスト教徒によって選ばれる)賞も戴冠。それぞれがダブル受賞を果たしたことになります。
執筆者紹介
大塚史貴 (おおつか・ふみたか)
映画.com副編集長。1976年生まれ、神奈川県出身。出版社やハリウッドのエンタメ業界紙の日本版「Variety Japan」を経て、2009年から映画.com編集部に所属。規模の大小を問わず、数多くの邦画作品の撮影現場を取材し、日本映画プロフェッショナル大賞選考委員を務める。
Twitter:@com56362672
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トニー・レオンとアンディ・ラウが「インファナル・アフェア」シリーズ以来、およそ20年ぶりに共演した作品で、1980年代の香港バブル経済時代を舞台に巨額の金融詐欺事件を描いた。 イギリスによる植民地支配の終焉が近づいた1980年代の香港。海外でビジネスに失敗し、身ひとつで香港にやってきた野心家のチン・ヤッインは、悪質な違法取引を通じて香港に足場を築く。チンは80年代株式市場ブームの波に乗り、無一文から資産100億ドルの嘉文世紀グループを立ち上げ、一躍時代の寵児となる。そんなチンの陰謀に狙いを定めた汚職対策独立委員会(ICAC)のエリート捜査官ラウ・カイユンは、15年間の時間をかけ、粘り強くチンの捜査を進めていた。 凄腕詐欺師チン・ヤッイン役をトニー・レオンが、執念の捜査官ラウ・カイユン役をアンディ・ラウがそれぞれ演じる。監督、脚本を「インファナル・アフェア」3部作の脚本を手がけたフェリックス・チョンが務めた。香港で興行ランキング5週連続1位となるなど大ヒットを記録し、香港のアカデミー賞と言われる第42回香港電影金像奨で12部門にノミネートされ、トニー・レオンの主演男優賞など6部門を受賞した。
ギリシャ・クレタ島のリゾート地を舞台に、10代の少女たちの友情や恋愛やセックスが絡み合う夏休みをいきいきと描いた青春ドラマ。 タラ、スカイ、エムの親友3人組は卒業旅行の締めくくりとして、パーティが盛んなクレタ島のリゾート地マリアへやって来る。3人の中で自分だけがバージンのタラはこの地で初体験を果たすべく焦りを募らせるが、スカイとエムはお節介な混乱を招いてばかり。バーやナイトクラブが立ち並ぶ雑踏を、酒に酔ってひとりさまようタラ。やがて彼女はホテルの隣室の青年たちと出会い、思い出に残る夏の日々への期待を抱くが……。 主人公タラ役に、ドラマ「ヴァンパイア・アカデミー」のミア・マッケンナ=ブルース。「SCRAPPER スクラッパー」などの作品で撮影監督として活躍してきたモリー・マニング・ウォーカーが長編初監督・脚本を手がけ、2023年・第76回カンヌ国際映画祭「ある視点」部門グランプリをはじめ世界各地の映画祭で高く評価された。
内容のあまりの過激さに世界各国で上映の際に多くのシーンがカット、ないしは上映そのものが禁止されるなど物議をかもしたセルビア製ゴアスリラー。元ポルノ男優のミロシュは、怪しげな大作ポルノ映画への出演を依頼され、高額なギャラにひかれて話を引き受ける。ある豪邸につれていかれ、そこに現れたビクミルと名乗る謎の男から「大金持ちのクライアントの嗜好を満たす芸術的なポルノ映画が撮りたい」と諭されたミロシュは、具体的な内容の説明も聞かぬうちに契約書にサインしてしまうが……。日本では2012年にノーカット版で劇場公開。2022年には4Kデジタルリマスター化&無修正の「4Kリマスター完全版」で公開。※本作品はHD画質での配信となります。予め、ご了承くださいませ。
父親と2人で過ごした夏休みを、20年後、その時の父親と同じ年齢になった娘の視点からつづり、当時は知らなかった父親の新たな一面を見いだしていく姿を描いたヒューマンドラマ。 11歳の夏休み、思春期のソフィは、離れて暮らす31歳の父親カラムとともにトルコのひなびたリゾート地にやってきた。まぶしい太陽の下、カラムが入手したビデオカメラを互いに向け合い、2人は親密な時間を過ごす。20年後、当時のカラムと同じ年齢になったソフィは、その時に撮影した懐かしい映像を振り返り、大好きだった父との記憶をよみがえらてゆく。 テレビドラマ「ノーマル・ピープル」でブレイクしたポール・メスカルが愛情深くも繊細な父親カラムを演じ、第95回アカデミー主演男優賞にノミネート。ソフィ役はオーディションで選ばれた新人フランキー・コリオ。監督・脚本はこれが長編デビューとなる、スコットランド出身の新星シャーロット・ウェルズ。
奔放な美少女に翻弄される男の姿をつづった谷崎潤一郎の長編小説「痴人の愛」を、現代に舞台を置き換えて主人公ふたりの性別を逆転させるなど大胆なアレンジを加えて映画化。 教師のなおみは、捨て猫のように道端に座り込んでいた青年ゆずるを放っておくことができず、広い家に引っ越して一緒に暮らし始める。ゆずるとの間に体の関係はなく、なおみは彼の成長を見守るだけのはずだった。しかし、ゆずるの自由奔放な行動に振り回されるうちに、その蠱惑的な魅力の虜になっていき……。 2022年の映画「鍵」でも谷崎作品のヒロインを務めた桝田幸希が主人公なおみ、「ロストサマー」「ブルーイマジン」の林裕太がゆずるを演じ、「青春ジャック 止められるか、俺たちを2」の碧木愛莉、「きのう生まれたわけじゃない」の守屋文雄が共演。「家政夫のミタゾノ」などテレビドラマの演出を中心に手がけてきた宝来忠昭が監督・脚本を担当。
文豪・谷崎潤一郎が同性愛や不倫に溺れる男女の破滅的な情愛を赤裸々につづった長編小説「卍」を、現代に舞台を置き換えて登場人物の性別を逆にするなど大胆なアレンジを加えて映画化。 画家になる夢を諦めきれず、サラリーマンを辞めて美術学校に通う園田。家庭では弁護士の妻・弥生が生計を支えていた。そんな中、園田は学校で見かけた美しい青年・光を目で追うようになり、デッサンのモデルとして自宅に招く。園田と光は自然に体を重ね、その後も逢瀬を繰り返していく。弥生からの誘いを断って光との情事に溺れる園田だったが、光には香織という婚約者がいることが発覚し……。 「クロガラス0」の中﨑絵梨奈が弥生役を体当たりで演じ、「ヘタな二人の恋の話」の鈴木志遠、「モダンかアナーキー」の門間航が共演。監督・脚本は「家政夫のミタゾノ」「孤独のグルメ」などテレビドラマの演出を中心に手がけてきた宝来忠昭。