映画.comでできることを探す
作品を探す
映画館・スケジュールを探す
最新のニュースを見る
ランキングを見る
映画の知識を深める
映画レビューを見る
プレゼントに応募する
最新のアニメ情報をチェック
その他情報をチェック

フォローして最新情報を受け取ろう

検索

【「アステロイド・シティ」インタビュー】ウェス・アンダーソン監督が語る、盟友ジェイソン・シュワルツマンとの間に生まれた“奇妙な偶然”

2023年8月30日 10:00

リンクをコピーしました。
盟友ジェイソン・シュワルツマンとの出会いから、本作で生まれたある“奇妙な偶然”までを振り返る
盟友ジェイソン・シュワルツマンとの出会いから、本作で生まれたある“奇妙な偶然”までを振り返る
(C)2023 Pop. 87 Productions LLC & Focus Features LLC. All Rights Reserved

グランド・ブダペスト・ホテル」「フレンチ・ディスパッチ ザ・リバティ、カンザス・イヴニング・サン別冊」など、唯一無二の世界観と美学で、映画ファンの心を掴むウェス・アンダーソン監督。1950年代アメリカの舞台や映画への愛に溢れた最新作「アステロイド・シティ」がいよいよ、9月1日に公開される。映画.comのインタビューで、アンダーソン監督は、盟友ジェイソン・シュワルツマンとの出会いから、本作で生まれたある“奇妙な偶然”までを振り返り、映画・脚本づくりのこだわりを語った。(取材・文/編集部)

※本記事には、ネタバレとなりうる箇所があります。未見の方は、十分ご注意ください。
画像2(C)2023 Pop. 87 Productions LLC & Focus Features LLC. All Rights Reserved

舞台は1955年、アメリカ南西部の砂漠の街アステロイド・シティ。隕石が落下してできた巨大なクレーターが観光名所となっているこの街に、科学賞を受賞した5人の少年少女とその家族が招待される。子どもたちに母親が亡くなったことを言い出せない父親、映画スターのシングルマザーら、参加者たちがそれぞれの思いを抱えるなかで授賞式が始まるが、突如として宇宙人が現れ、人々は大混乱に陥る。街は封鎖され、軍が宇宙人到来の事実を隠蔽するなか、子どもたちは外部へ情報を伝えようとする。

キャストには、シュワルツマンをはじめ、エドワード・ノートンティルダ・スウィントンエイドリアン・ブロディウィレム・デフォーら、アンダーソン監督作品の常連俳優陣が集結。さらに、スカーレット・ヨハンソントム・ハンクスマーゴット・ロビースティーブ・カレルら、豪華キャストが顔をそろえた。

画像3(C)2023 Pop. 87 Productions LLC & Focus Features LLC. All Rights Reserved
――アンダーソン監督は、シュワルツマンさんとは、本作で9度目のタッグを組んでいます。今回は久々に主演を務めていますが、シュワルツマンさんの魅力を教えてください。

そもそも本作は、(一緒に原案を担当した)ロマン・コッポラと話して、「ジェイソンのために何か書き下ろしたいね」という思いから始まっているんです。ジェイソンとは、彼が17歳だった頃からの知り合い。僕の第2作で、彼のデビュー作でもある「天才マックスの世界」以来ずっと、親密なお付き合いをしています。非常に興味深く、面白く、多彩で、そして作品に全身全霊で力を注ぎ込むタイプです。

画像4(C)2023 Pop. 87 Productions LLC & Focus Features LLC. All Rights Reserved

今回は、彼が主役とはいえ、アンサンブルキャストで組んでいる作品。彼は自分の撮影がない日でも、ちゃんと役になりきって、衣装を着て現場にやってきて、役の通りに振る舞うんです。周囲は全然気付かなくて、「今日出番があるのかな」と思っているようですが、僕だけは「彼は今日、本当はオフなんだよ」と知っているんです(笑)。それでも現場にやってきて、オフ日を一切とらず、「自分がやりたいからやる」という人なんです。

ミュージシャンとしても非常に才能豊かで、型にはまらないオリジナルな考え方ができる人なので、それが役者としての才能にも生かされていると思います。俳優は演技をする上で、いろいろな取捨選択をしますが、その選択がとても面白くて。僕だけではなく、彼自身も我ながら驚いてしまう、「目から鱗」という瞬間があるんです。また僕と彼の間に緊密な信頼関係があって、親友であることが、うまく映画にも生かされていると思います。

画像55写真:Everett Collection/アフロ
――おふたりは、「天才マックスの世界」のオーディションで初対面を果たしました。そのときシュワルツマンさんが、劇中の(主人公マックスが通う)ラシュモア学園のお手製の校章をつけていた……というエピソードを、思い出しました。

当時は主役を見つけるために、8カ月くらいオーディションが続いていたんです。なかなか、ぴったりのキャストが見つからなくて。ただ、ジェイソンが部屋に入ってきたときに、2分で「あぁ、この人だ」と(笑)。主役に起用しようというだけではなく、「この人とは長年の友だちになれそうだな」と思いました。

画像6(C)2023 Pop. 87 Productions LLC & Focus Features LLC. All Rights Reserved
――シュワルツマンさん自身の性格や能力を生かしながら、戦場カメラマンのオーギーという役を作っていったそうですね。

このキャラクター造形には、実は奇妙な偶然がありました。オーギーは妻と死別して、悲しみを携えたキャラクター。最初にロマンと物語を練っているときは、彼をアーサー・ミラー的な劇作家に仕立てようとしたんです。彼がこのストーリーを物語って、かつ自ら出演するという設定。ですが、そのうち「ロバート・キャパ的な戦場カメラマンにしよう」と変更しました。

ジェイソンには、「君のために書き下ろしている話があるから」とあらかじめ知らせて、きちんとスケジュールをおさえましたが、内容は一切伝えませんでした。いざ脚本が書き上がって、彼に渡したとき、びっくりしていました。なぜかというと、「妻と死別して、子どもにその事実を隠している」という設定が、彼自身の家族のストーリーと重なっていたんです。

画像7(C)2023 Pop. 87 Productions LLC & Focus Features LLC. All Rights Reserved

彼の父と伯父は、40年代か50年代の頃、ニュージャージーから西海岸に引っ越しました。ふたりはその道中、母が亡くなっている事実を知らされなかったそうなんです。ジェイソン曰く、彼の父は後に、「お母さんのお葬式は、いつだったんだろう?」と、いろいろ考えたそうです。ジェイソンの家族にそんな過去があると知って、何という奇遇だと、僕はびっくりしました。ロマンはジェイソンの従弟なので、家族の歴史を知っていたのかなと思ったんですが、確認してみたら、ロマンも一切その事実を知らなかったようなんです。だから、とてもおかしな偶然なんです。

当時は多くの人が、東側の都会からカリフォルニアへ移住して、カリフォルニアが栄えていった時代。さらに、悲しみやトラウマについて、家族同士で語り合うという世代でもなかった。目を向けたくないものには蓋をする時代だったと思うので、偶然とはいえ、「あの時代では、こんなこともありうるのかな。結果的に、時代背景が表れた物語になっているのかな」とも思いました。

画像8(C)2023 Pop. 87 Productions LLC & Focus Features LLC. All Rights Reserved
画像9(C)2023 Pop. 87 Productions LLC & Focus Features LLC. All Rights Reserved
――アンダーソン監督の作品には、喪失感を抱えた人物や、半ば崩壊した家族というモチーフがよく登場します。さらに本作では、「大切な人を失った後の日常や宇宙人など、“未知の世界”とどう向き合うか」という奮闘が描かれています。さまざまな作品を通して、こうしたモチーフやテーマを描き続けている理由を教えてください。

死別や喪失ではなく、「家族イベント」というモチーフが、脚本の起点になっています。私たちにはそれぞれ仕事や、友だちとの付き合いがありますが、自分の生活や人生のなかで、家族が集まるイベントは、かなり大きな部分を占めると思うんです。「こういうテーマを探求しよう」と意識するというよりも、ストーリーを書き始めると、自ずとそうしたテーマが出てきて、自分の人生や経験が投影されるんです。

画像10(C)2023 Pop. 87 Productions LLC & Focus Features LLC. All Rights Reserved

いつも「これまでの作品とは全然違うものを作ろう」と考えていますが、キャラクターを創造していくうちに、脚本を書き進めていくうちに、自分のなかの何かが反映されている特定の方向に引っ張られるんです。書いている間は自覚がなくても、完成した映画を振り返ってみると、「また自分の人生が反映されているな」と気付くこともあります。だからといって、無理やり方向を変えることもしません。書いていくうちに、「こういう方向に進みたいんだな」という物語の意志が出てくる。流れに身を任せて、物語が自ら生まれ出ずるというのが、僕のプロセスです。

画像11(C)2023 Pop. 87 Productions LLC & Focus Features LLC. All Rights Reserved
――本作は、舞台「アステロイド・シティ」という劇中劇と、その舞台を作り上げようとする俳優たちの物語が描かれる、複雑な構造になっています。その構造を通して、「演じること」「物語ること」を見つめた作品になっていて、「現実はどこにあるのか」と考えながら、鑑賞していました。このような構造を採用された理由と、そこから生まれた効果について、教えてください。

例えばホラー映画だったら、あるいはアクション映画だったら、観客を怖がらせる、手に汗握らせるという明確な目的があると思います。僕が何かを作る場合、観客から特定のリアクションを誘発したいという思いは、あまりないんです。時には笑わせ、時にはほんのり悲しい思いをさせることもありますが、「こういう反応を狙おう」という意図はなく、より広く、観客の皆さんに共通体験をしてもらいたいと思っています。リアクションは人それぞれだと思いますし、映画づくりを、より抽象的な観点から見ています。そういう作り方をしているので、あまり固定のジャンルにはまらないんだろうと思います。

「こういった構造で描くから、観客はこう思うだろう」ではなく、「僕はこういうことに興味があって、もっと掘り下げたくて、皆に考えてほしくて、経験してもらいたくて……」という思いなんです。僕は、あの時代の舞台や演劇にすごく神秘性を感じていて、惹かれるんです。また、50年代の西部の砂漠を舞台にした、西部劇ではないアメリカンシネマも大好きなんです。そういう世界で自分も生きてみたいし、自分のキャラクターも据えたいという欲望があって、この物語を作りました。観客に、より豊かな体験を提供したいという気持ちで、映画を作っています。

画像12(C)2023 Pop. 87 Productions LLC & Focus Features LLC. All Rights Reserved

ウェス・アンダーソン の関連作を観る


Amazonで関連商品を見る

関連ニュース

映画.com注目特集をチェック

関連コンテンツをチェック

シネマ映画.comで今すぐ見る

それでも夜は明ける

それでも夜は明ける NEW

第86回アカデミー作品賞受賞作。南部の農園に売られた黒人ソロモン・ノーサップが12年間の壮絶な奴隷生活をつづった伝記を、「SHAME シェイム」で注目を集めたスティーブ・マックイーン監督が映画化した人間ドラマ。1841年、奴隷制度が廃止される前のニューヨーク州サラトガ。自由証明書で認められた自由黒人で、白人の友人も多くいた黒人バイオリニストのソロモンは、愛する家族とともに幸せな生活を送っていたが、ある白人の裏切りによって拉致され、奴隷としてニューオーリンズの地へ売られてしまう。狂信的な選民主義者のエップスら白人たちの容赦ない差別と暴力に苦しめられながらも、ソロモンは決して尊厳を失うことはなかった。やがて12年の歳月が流れたある日、ソロモンは奴隷制度撤廃を唱えるカナダ人労働者バスと出会う。アカデミー賞では作品、監督ほか計9部門にノミネート。作品賞、助演女優賞、脚色賞の3部門を受賞した。

aftersun アフターサン

aftersun アフターサン NEW

父親と2人で過ごした夏休みを、20年後、その時の父親と同じ年齢になった娘の視点からつづり、当時は知らなかった父親の新たな一面を見いだしていく姿を描いたヒューマンドラマ。 11歳の夏休み、思春期のソフィは、離れて暮らす31歳の父親カラムとともにトルコのひなびたリゾート地にやってきた。まぶしい太陽の下、カラムが入手したビデオカメラを互いに向け合い、2人は親密な時間を過ごす。20年後、当時のカラムと同じ年齢になったソフィは、その時に撮影した懐かしい映像を振り返り、大好きだった父との記憶をよみがえらてゆく。 テレビドラマ「ノーマル・ピープル」でブレイクしたポール・メスカルが愛情深くも繊細な父親カラムを演じ、第95回アカデミー主演男優賞にノミネート。ソフィ役はオーディションで選ばれた新人フランキー・コリオ。監督・脚本はこれが長編デビューとなる、スコットランド出身の新星シャーロット・ウェルズ。

HOW TO HAVE SEX

HOW TO HAVE SEX NEW

ギリシャ・クレタ島のリゾート地を舞台に、10代の少女たちの友情や恋愛やセックスが絡み合う夏休みをいきいきと描いた青春ドラマ。 タラ、スカイ、エムの親友3人組は卒業旅行の締めくくりとして、パーティが盛んなクレタ島のリゾート地マリアへやって来る。3人の中で自分だけがバージンのタラはこの地で初体験を果たすべく焦りを募らせるが、スカイとエムはお節介な混乱を招いてばかり。バーやナイトクラブが立ち並ぶ雑踏を、酒に酔ってひとりさまようタラ。やがて彼女はホテルの隣室の青年たちと出会い、思い出に残る夏の日々への期待を抱くが……。 主人公タラ役に、ドラマ「ヴァンパイア・アカデミー」のミア・マッケンナ=ブルース。「SCRAPPER スクラッパー」などの作品で撮影監督として活躍してきたモリー・マニング・ウォーカーが長編初監督・脚本を手がけ、2023年・第76回カンヌ国際映画祭「ある視点」部門グランプリをはじめ世界各地の映画祭で高く評価された。

愛のぬくもり

愛のぬくもり NEW

「苦役列車」「まなみ100%」の脚本や「れいこいるか」などの監督作で知られるいまおかしんじ監督が、突然体が入れ替わってしまった男女を主人公に、セックスもジェンダーも超えた恋の形をユーモラスにつづった奇想天外なラブストーリー。 39歳の小説家・辺見たかしと24歳の美容師・横澤サトミは、街で衝突して一緒に階段から転げ落ちたことをきっかけに、体が入れ替わってしまう。お互いになりきってそれぞれの生活を送り始める2人だったが、たかしの妻・由莉奈には別の男の影があり、レズビアンのサトミは同棲中の真紀から男の恋人ができたことを理由に別れを告げられる。たかしとサトミはお互いの人生を好転させるため、周囲の人々を巻き込みながら奮闘を続けるが……。 小説家たかしを小出恵介、たかしと体が入れ替わってしまう美容師サトミをグラビアアイドルの風吹ケイ、たかしの妻・由莉奈を新藤まなみ、たかしとサトミを見守るゲイのバー店主を田中幸太朗が演じた。

卍 リバース

卍 リバース NEW

文豪・谷崎潤一郎が同性愛や不倫に溺れる男女の破滅的な情愛を赤裸々につづった長編小説「卍」を、現代に舞台を置き換えて登場人物の性別を逆にするなど大胆なアレンジを加えて映画化。 画家になる夢を諦めきれず、サラリーマンを辞めて美術学校に通う園田。家庭では弁護士の妻・弥生が生計を支えていた。そんな中、園田は学校で見かけた美しい青年・光を目で追うようになり、デッサンのモデルとして自宅に招く。園田と光は自然に体を重ね、その後も逢瀬を繰り返していく。弥生からの誘いを断って光との情事に溺れる園田だったが、光には香織という婚約者がいることが発覚し……。 「クロガラス0」の中﨑絵梨奈が弥生役を体当たりで演じ、「ヘタな二人の恋の話」の鈴木志遠、「モダンかアナーキー」の門間航が共演。監督・脚本は「家政夫のミタゾノ」「孤独のグルメ」などテレビドラマの演出を中心に手がけてきた宝来忠昭。

痴人の愛 リバース

痴人の愛 リバース NEW

奔放な美少女に翻弄される男の姿をつづった谷崎潤一郎の長編小説「痴人の愛」を、現代に舞台を置き換えて主人公ふたりの性別を逆転させるなど大胆なアレンジを加えて映画化。 教師のなおみは、捨て猫のように道端に座り込んでいた青年ゆずるを放っておくことができず、広い家に引っ越して一緒に暮らし始める。ゆずるとの間に体の関係はなく、なおみは彼の成長を見守るだけのはずだった。しかし、ゆずるの自由奔放な行動に振り回されるうちに、その蠱惑的な魅力の虜になっていき……。 2022年の映画「鍵」でも谷崎作品のヒロインを務めた桝田幸希が主人公なおみ、「ロストサマー」「ブルーイマジン」の林裕太がゆずるを演じ、「青春ジャック 止められるか、俺たちを2」の碧木愛莉、「きのう生まれたわけじゃない」の守屋文雄が共演。「家政夫のミタゾノ」などテレビドラマの演出を中心に手がけてきた宝来忠昭が監督・脚本を担当。

おすすめ情報

映画ニュースアクセスランキング

映画ニュースアクセスランキングをもっと見る

シネマ映画.comで今すぐ見る

他配信中作品を見る